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1998年3月 (21日〜31日)

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3 INET GATE INR00103 98/03/21 04:33
題名:[lex] prevent from

Date: Sat, 21 Mar 1998 04:21:57 +0900
From: IIZUKA Toshiaki <>
Reply-To:
To:

 大修館書店の飯塚です。ご指名もいただき(^^:),いろいろ書かなければいけ
ないことがたまっておりますが,とりあえず prevent from の件――
 『ジーニアス英和<改訂>』のこの記述については,実は今年の始めごろに読
者の方の質問がありましたので,編者の先生方に検討していただきましたとこ
ろ,以下のような趣旨の回答を得ました。

(1) 直接の典拠は R.M.W.Dixon.1991. A New Approach to English Grammar on
Semantic Principles で,その後いろいろなケースについて native speakers
に尋ねて原稿を作成した。
(2) しかし,調査・記述に十分でない点があった。現時点では,だいたい次のよ
うな意味分化があると判断している:
・from を省略した形は,「彼」がすでに行為を行いつつあるのを直接的に妨害
した意。
・from のついた形は「彼」がこれから行為を行うことについて間接的に妨害し
た意。
・したがって,単に「病気で休んだ」といった文では from は省略しない方が普
通。

 学習辞典として,どこまで「割り切った」記述をするかについてはいつも悩ま
されますが,具体的な記述方法は,stop 他 3 との整合性も含め,次の増刷まで
に検討したいと思います。また,この問題は,『英語教育』の Question Box
で,編集主幹の小西友七先生が取り上げる意向です。ご迷惑をおかけして申しわ
けありませんでした。

 なお,新刊の『英語コーパス言語学』(研究社出版)p.132以下に,能動態で
は from は省略される傾向が強まっているという報告がありました。

=================================================================
飯塚利昭 IIZUKA Toshiaki


9 INET GATE INS00102 98/03/21 19:35
題名:[lex] 重要度ランクの基準 『ジ』では

Date: Sat, 21 Mar 1998 19:16:33 +0900
From: IIZUKA Toshiaki <>
Reply-To:
To:

 見出し語のランク表示の件,『ジーニアス英和』の場合,簡単にいえば,「頻
度を基礎にしつつ,日本の事情を勘案して調整した」ということになります。
 初版でランク表示の検討をしたのはもう20年近く前のことになります。頻度に
ついては,いちばん大規模な頻度調査だった Kucera & Francis と,当時すでに
古くなりつつあった Thorndike & Bahnhart(綴りうろ覚え)などを元にしまし
た。
 「日本の事情」というのは,例えば (1)指導要領に示されている中学必修単
語,(2) 高校の主な教科書にある語,(3) 大学入試での重要度(『デル単』など
も調べました),(4)高校生にとって身近な事物を表す語,(5) 日本人にとって
必要な固有名詞など,などです。全英連編の『全英連 高校基本単語集』(すい
ません,これもうろ覚えモード)は,高校の教育での必要性という観点から編集
されたものですので,重要視しました。

 あとは,DにするかEにするか迷ったときは,英米の比較的小規模な辞典に載っ
ていなければEランク候補にする,というようなこともしました。
 さらに,日本の事情とは限らず,新しい事物・現象に関係する語は調整が必要
でした。例えば,cassette という語は新しい語ではありませんが,録音用カセ
ットテープの意味で70年代半ばに急速におなじみの語となりましたので,頻度に
よるランクから2段階ぐらい上昇させた覚えがあります。
 このように,頻度だけというわけにはいきませんので,最終的には,編者の主
観的な判断がどうしても入ります。
(なお,改訂のときに少し手直しをしました。)

 以上,ご参考になれば幸いです。
=================================================================
飯塚利昭 IIZUKA Toshiaki @大修館書店


8 INET GATE INP00103 98/03/21 20:12
題名:[lex] 辞書の基本語とその数

Date: Sat, 21 Mar 1998 20:10:31 +0900
From: Minoru MURATA <>
Reply-To:
To:

馬 本  勉 様

村田 年です.
いつもろくなことは書き込めませんが,参考になりますれば幸いです.

(馬本 勉) さんは書きました:
> はじめまして。馬本@比治山大in広島と申します。
>
> 私は語の選択の問題に興味を持っていますが,いつも知りたいと思っている
> ことに,辞書の重要語表示の基準があります。
>
> たとえば『ジーニアス』では中学基本語約1,100語,高校基本語約4,800語・
> ・・というように,重要

> (たとえば『フェイバリット』は最重要語約2,000語と重要語約5,000語,
> 『ヴィスタ』は最重要基本語として機能語150語・内容語550語,重要基本
> 語として機能語70語・内容語1,950語,『トリム』では最重要語1,072語,
> 重要語2,115語といったように),それぞれの編集段階で,独自の方法が取
> んだろうな,とられている推測しています。

 これは各辞書の編集方針で決めることですから,端から何も言え
ないのですが,現在高校生が教科書だけを使って勉強した場合,3
年間で1度でも接する語数は「2400+α」です.この認識が足
りなすぎると私は思っています.高校初級用の辞書は基本語として
は,『ヴィスタ英和』で十分でしょう.別の区分けにすれば中学基
本語700,高校基本語2020で,合計2720です.

>
> 旧版『プログレッシブ』にある「キーワード5000」の詳しい解説のように,
> なぜ「重要」なのかが分かれば,学習のあり方もひと味違ったものになる
> のでは?と考えます。(古くは『岩波英和』で選ばれた2,900語は「基本語
> の選定に当たっては,従来行われた頻度数の統計的研究を参考にしたが,
> 最終決定は著者の判断によった」という説明があり,このくらいの記述でも
> 使用者として納得できます。)

この岩波の説明が現在の段階では『プロシード』以外のほとんどす
べての英和に当てはまると思っています.コーパスと経験のどちら
に依っているかは基本2千語を対照にした表を作ってみるとよくわ
かります.主としてコーパスを基準にしたものはかなりの手直しが
あっても相関が非常に高いです.すなわち,「キーワード5000」,
COBUILD2,LDOCE3のWritten 2000, Spoken 2000, Brown
Corpus, Carroll は一見して重なる率が高いことがわかります.
『ライトハウス英和』その他の英和は『ニュープロシード英和』と
ちがって大きなずれがあります.ご自分でもやってみて下さい.

>
> 実際に選定作業に携わった方々も多いと思いますので,いろいろとお教え
> くだされば幸いです。(ついでに文部省中学校指導要領のいわゆる「必修
> 語」507語の選定基準もどなたかご存じでしたら教えてくださいませんで
> しょうか)

指導要領の中学507語,高校2400語程度を決めた人たちの
何人かは私の知り合いですが,聞いてみても得るところはあまり
ないと思っております.と申しますのは,ある発表で私は「高校
語彙は指導要領では最高で2400+α」だと言いました.発表
が終わってから,作られた方々が寄ってこられて,「訂正するの
は悪いと思って黙っていたのですが,2400ではなくて,2900
のはずです.」と言われました. 作った人たちがこんな状態で
はだめだと思った次第です.(指導要領を読めばすぐにわかるこ
とです.)

中学必修語507語についてですが,過去すべての改訂の出入りを
書き出して比べてみますと,いかに同じ語が出たり,入ったりして
いるかがわかります.その時,その時の作成委員のメンバー構成に
よって違ってくるわけです.一貫性がないことはすぐにわかります.
また,作成委員に語彙の専門家はいないことが普通です.

語彙選定は極めて難しいものだと思います.中学必修語は複合語は
出さないという基準がありそうです.例えば newspaper はありませ
ん.news とpaper があればいいとの判断かも知れません.議論の
あるべきところです.

参考書(辞書の基本語とは違いますが)
石田雅近.1990. 「語彙」『英語の指導法と関連科学』第7章(英語
   科教育実践講座第16巻)株式会社ニチブン.
村田 年.1997. 「英語教育における語彙制限」『言語文化論叢』
   千葉大学外国語センター.


7 INET GATE INR00102 98/03/21 20:16
題名:[lex] ヴィスタ英和を読む(2)ー自他の区

Date: Sat, 21 Mar 1998 20:15:37 +0900
From: Minoru MURATA <>
Reply-To:
To:

村田 年<> さんのメッセージを転送します:
       『ヴィスタ英和』を読む(2)
   自他の区別――mix [動] を実例として――
                      村  田   年

 『ヴィスタ英和』について好意的な反応が多く,以外でした.
このような辞書の専門家集団の中ではこの辞書は叩かれるのでは
ないかと思っていましたので.

 自他の区別について
 引き手に自他を区別する能力がある場合は,辞書が自他を別々に
記述していた方が引きやすいかも知れません.1つの語義項目の語
義の数が多く,文型も複数のものが提示され,さらに他の説明など
もなされている場合には,1項目に自他の両方の語義・用例を出し
たのでは1項目の記述がながくなって,捜しにくく,読むのがしん
どくなると思われます.

 例えば,『ジーニアス英和』の mix 1 を見ると,[他]の方で[自]
への参照(→)があり,[自]の方にも[他]への参照(→)がありま
す.これを見て,自他をいっしょに記述した方がいいようにも思え
るが,かえって,このように自他を別に記述して参照させた方がわ
かりがいいとも言えます.私の感想を言えば『ジーニアス英和』ぐ
らいの記述の分量があれば,別々に記述した方がわかりがいいと思
う.また使う側にも自他の一般的な区別はできていてほしいと思い
ます.

 次に自他の表示はするものの項目としては分けないやり方があり
ます.項目を分けずに文型を示すものは程度の差はあるもののここ
に入ると考えていいでしょう.LDOCEを始め,nonnative 用の英英は
ここに入るでしょう.この利点としては語義によって項目をまとめ
ることができます.しかし動詞型にこだわるといちいち記述を分け
なければなりません.
OALD mix 1 (a) to combine one thing with another, to BLEND
       things together:
(b) to be able to be combined: (文型略)
RHWD mix 1 to (cause to) become combined into one mass:
RHWDは自他をいっしょにできるところは上のように書き,一方し
か語義がないところは動詞型を示すやり方です.(LDOCEも初版は
この語義の書き方を主に取っていましたが,3版にいたってCOBUILD
よりに変わりました.)

LDOCE mix 1[I,T] if you mix two or more substances or if they
     mix, they combine to become a single substance, and
they cannot be easily separated:
 LDOCEの場合は自他を明示するが,記述はいっしょになっている.

 英和辞典はほとんど判を押したように,自他をはっきりわけて記述
しています.次のような自他をいっしょにしたやり方は極めて少数派です.
『プロシード英和』 mix 1 [他][自](...戸)混ぜる,混ざる; 混合する

 これらに対して『ヴィスタ英和』はまったく自他の区別をせずに語義
と用例と訳文とその訳文の説明で使い方を読み取らせる方法を取っています.
『ヴィスタ英和』 mix [動] 1 混ぜる,混ざる,混合する 2 混ぜて作る,
調合する

 『ヴィスタ英和』は原則としてセミコロンを使いませんので「混ぜる,
混ざる;」とはしません.  自動詞と他動詞が対になっていることが
わかればよし,わからなければそれでもよいわけです.1の用例が10
あり,自他の別を順番に示すと,
  1[他][他][自][自][他][他][自](続いて mix up[他]が3例)

 特に自他の用例を分けることはなく,よく使われる順,あるいは基
本的な順(中心的な意味のものから)になっているようです.

 自他を分けるかどうかは,編集方針,ターゲットの引き手をどの位
置とするかによると思う.従って,筑波大学の学生でさえ自他の区別
のあやしい者が相当いる現状では,平均的な高校生は自他の区別はで
きるとは言い難い状況のようです.とすれば,もっと自他の区別をし
ない英和が刊行されてもいいと思われます.

 次には「文型・動詞型」についてもう少し実りの多い議論をしてみ
たいと思っています.


6 INET GATE INS00102 98/03/21 20:20
題名:[lex] RE> prevent from の語法

Date: Sat, 21 Mar 1998 20:18:29 +0900
From: "NISHIMURA Tadamasa" <>
Reply-To:
To: "lexicographer" <>

飯塚さん、prevent の『ジーニアス』の語法について
ご報告をありがとうございました。

今までは個人が質問の手紙を出せば、ご返答をいただい
ておりましたが、この ML のおかげで、今回のように公開
の場でご回答がいただけるのであれば、大変ありがたい
ことです。
今後ともよろしくお願いいたします。
(西村 公正)


3 INET GATE INP00100 98/03/21 21:18
題名:[lex] 『ジーニアス英和』の基本語について

Date: Sat, 21 Mar 1998 21:13:51 +0900
From: Minoru MURATA <>
Reply-To:
To:

飯 塚 利 昭 様

辞書の基本語について

村田です.
このように日本の出版社の編集部が率直に答えられたのは私にとって
初めての経験です.
きっと投野由紀夫先生が言われたオックスフォードのように,教員の,
生徒の信頼を得られることと確信致します.投野先生はロングマン社は
抱え込む方だと言われましたが,日本の出版社に比べればはるかに,は
るかに開放的です.今度のJACET英語辞書研の例会でロングマン・ア
クテイヴェイターの編集会議の模様を発表してよいと言ってくれたので
すから.

IIZUKA Toshiaki <> さんは書きました:
>  見出し語のランク表示の件,『ジーニアス英和』の場合,簡単にいえば,「頻
> 度を基礎にしつつ,日本の事情を勘案して調整した」ということになります。
>  初版でランク表示の検討をしたのはもう20年近く前のことになります。頻度に
> ついては,いちばん大規模な頻度調査だった Kucera & Francis と,当時すでに
> 古くなりつつあった Thorndike & Bahnhart(綴りうろ覚え)などを元にしまし
> た。

この当時でも Thorndike は古すぎますね.
Thorndike, E.L., and Lorge, I., The Teacher's Word Book of
30,000 Words, New York City, Bureau of Publications, Teachers
College, Columbia University, 1944.

>  「日本の事情」というのは,例えば (1)指導要領に示されている中学必修単
> 語,(2) 高校の主な教科書にある語,(3) 大学入試での重要度(『デル単』など
> も調べました),(4)高校生にとって身近な事物を表す語,(5) 日本人にとって
> 必要な固有名詞など,などです。全英連編の『全英連 高校基本単語集』(すい
> ません,これもうろ覚えモード)は,高校の教育での必要性という観点から編集
> されたものですので,重要視しました。

『全英連高校基本英単語活用集』も大幅に語数を減らしております.
『ジーニアス英和』はたいへんにありがたく愛用させていただいているのですが,
基本語に関してだけは「無頓着だなー」と思っております.

例えば,Aランク 中学基本語約1100語
  中学生が1度でも触れることのある語が1100語です.
Bランク 高校基本語 約3500語
中学と合わせると4600語になります.高校の実体とは離れすぎています.
  まず中学でやるべき1100語を習得するまでが大変です.現状では.
  そこから3500語が始まるわけですから,これは数を減らし,小分けにすべ
  きものと思っています.
B’ランク 大学入試必須語 約1300語
  ここは問いません.
Cランク 大学教養・一般に必要な語 約7200語
  大学教養の実体から離れすぎている.一般的な大学生は1000語がせいぜい
  です.小分けにしていただかないと使い道があまりありません.

中身はここでは問いませんが,外枠について次の改訂ではもう少し
小分けをする方向でご検討をお願いしたいものです.

 ありがとうございました.


1 INET GATE INS00102 98/03/22 06:33
題名:[lex] RE: 英文法チェックソフトに関して

Date: Sun, 22 Mar 1998 06:30:17 +0900
From: "谷橋浩昭" <>
Reply-To:
To: "Lexis" <>

谷橋です。
数人の方からのレスポンスをいただき
ありがとうございました。
Word 97 は私がメインに用いているワープロソフトなので、
英文構成機能がついていることは承知しております。
ただ、The are というような英語を打ってしまっても
何のチェックも入れてくれません。
チェック機能の設定がどこかおかしいのでしょうか。

井上さんは Grammatik の存在をご指摘くださり、
SEKIYAMAさんkですが,

私はWindows 3.1用のものを使っています。
当時(約5年前)はord Perfectの日本語版にGrammatikのフルバージョンが
バンドルされていました。
しかし,最近はWord Perfectも日本では影が薄いようで,どうか分かりません。

という情報を下さいました。
一度自分で調べてみようと思います。
ありがとうございました。

谷橋浩昭


1 INET GATE INR00101 98/03/22 17:58
題名:[lex] 言語学の論文探しのホームページ案内

Date: Sun, 22 Mar 1998 17:50:00 +0900
From: 井上 永幸 <>
Reply-To:
To:

徳島大の田中廣明氏より,以下のようなお知らせをいただきました。転載の許
可をいただきましたので,辞書学MLの方でも流させていただきます。転載のご
許可をいただきました田中氏に改めてお礼申し上げます。

===================================
>先生各位、田中@徳島大です。
> 英語学をやってらっしゃるかたなら、どなたでも、論文探しでご苦労
>されたことがあると思います。そんなあなたにぴったり(?)のホーム
>ページを見つけました。以下のホームページへaccessしてみて下さ
>い。これは、T.LangendoenがBlackwell社のホームページ上に開設し
>てある、有料(ただしお試し期間あり)の論文検索のホームページで
>す。50以上の、1980年からの言語学の雑誌のタイトルとabstract
>をもらさず収録してあります。僕自身、negationで検索をかけたとこ
>ろ、190もの論文にヒットしました。登録すると、お試し期間中は無料
>で利用できるようになっています。登録した後、Blackwell
>Publishers Linguistics Abstracts Onlineというページがでますので、
>noviceというところをクリックしてみて下さい。検索の画面へいけま
>す。
> URLは以下の通りです。どちらでも入っていけると思います。
>
>http://www.blackwellpublishers.co.uk
>http://www.blackwellpublishers.co.uk/labs
>
>僕は、偶然linguist listのホームぺじを見ていて見つけました。Linguist
>listのホームページは以下の通り。
>
>http://www.linguistlist.org
>
> 以上、ご参考になれば幸いです。
>
>1998/3/10(火)
>
>田中廣明
>
>〒770-0815
>徳島市助任橋4-8-1-1203
>TEL/FAX 0886-54-9214
>
> (home)
> (office)
=====================================
17:46 (日) 03/22/98 井上永幸 <>
[辞書学MLログを公開中: http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html]


1 INET GATE INP00103 98/03/22 22:45
題名:[lex] 『ヴィスタ英和』を読む(3)

Date: Sun, 22 Mar 1998 22:30:00 +0900
From: 村田 年 <>
Reply-To:
To: ,

    『ヴィスタ英和』を読む(3)―文型・動詞型―
       ― mix と exchange を実例として―

 『ヴィスタ英和』の本文には文型・動詞型はいっさい出てきません.
それにしては「はしがき」などに「自動詞」「他動詞」「特別動詞」な
どが説明ぬきに出てくるのはどうかと思います.(p.193 に特別動詞の
いくつかが示されていますが,全部ではありませんし,なぜ特別動詞な
のかの説明はひとこともありません.)また,囲み記事には本文にない
形や用語が出てきます.「句動詞」「分詞構文」「句読法」「使役動詞」
「ing形と to+<動詞の原形>」「知覚動詞+O+動詞原形または ing形」
「something+形容詞」「There is 構文」「too...to〜」
「分綴(ぶんてつ)」など.

 また(  )の中とは言え,かなり難しい用語が示されています.
(例:abbreviation, apostrophe, clause, conjugation, contractions,
exclamation, inversion, phrasal verb, onomatopoeia, passive voice,
phrase, plural, prefix, punctuation, syllabication, tag question
など.)

 多過ぎる記号をでき得る限りカットし,文法用語を廃するのは一理
ありますが,その程度によっては説明上不便になって結局は説明しな
いで,引き手に読み取ってもらうことになります.この辺の兼ね合い
は難しく,どの初級辞書もそれなりの工夫をしているわけでしょう.
『ヴィスタ英和』ほどの踏ん切りをつけた辞書は高校生用としては初
めてでしょう.(『旺文社 高校基本英和辞典』(1982)というまさ
に初級用辞書でさえ動詞型は出していますので.)

 はたして文型を出さない方がわかりやすいのでしょうか.
『ヴィスタ英和』には文型は示されていませんが,ときどき使う構文
を示しています.例えば,examination の成句に,
  give 〜 an examination 〜を検査する,〜を試験する(→[用例])
があり,用例を見ると,
  Miss Ito gave us an examination.
が示されています.すなわち,「〜」は間接目的語を示しているのです
が,上の用例を見るまでは私は「〜」の意味がわかりませんでした.こ
の場合動詞型を与えてもらった方がわかる生徒もいると思います.どこ
に焦点を合せるかは難しい点です.mix [動]を見てみましょう.

『ヴィスタ英和』 1混ぜる,混ざる,混合する 2混ぜて作る,
  調合する(用例12例)
『プロシード英和』1[他][自](...と)混ぜる,混ざる;混合する
         <<mix+名+(with 名)>> (用例3例)
<<mix+(with 名) >>   (用例1例)
         2[他](混ぜて)...を作る,調合する
         <<mix+名>>  (用例1例)
         <<mix+名(人)+名>>←→<<mix+名+for名(人)>>
          (用例2例)

 単に理解するためだけを想定しても,目的語と前置詞 with 〜 との
関係を把握するのに用例から推察させるのと文型を頼りに推察させるの
とではどちらがよりよいかはわからないでしょう.必ずしも文型のある
方が煩雑でわかりにくいとは言えないでしょう.

 発信のための英和との考えに立つと,これも引く生徒によるのであろ
うが,文型を示した方がいいのではないかと思われます.用例の前置詞
や不変化詞などがゴチかイタになっていない点も発信型の観点ではいか
がでしょうか.「イディオムも99%はもとの意味から理解できる」と
の立場のよさもわかりますが.

 A,Bを使って,(mix A with B)A(物)をB(物)に[と]混合する
といった方式で使い方をわかりやすく説明したのは『アンカー英和』の
先見の明でしょうか.

 文型を用いない辞書としてよく『クラウン英和』があげられますが,
『クラウン英和』は語義の次の短い句用例によって実にみごとに動詞
型をつかませてくれます.

 もうひとつ,exchange を見ると,
  『ヴィスタ英和』1交換する,取かえる (用例4例)
これだけでは使うことを考えると相当無理があるでしょう.

  『フェイバリット英和』1...を(...と)交換する.
          [+名+(for名)]
          [+名+(with名(人)]
          2...を(...と)両替する.
          [+名+(for名)]
文型を示した場合の煩雑さ,わかりにくさはありますが,利点の方が
多いのではないでしょうか.

 『フェイバリット英和』は(  )を多用していますが,基本的な型は
(  )なしで示した方がいいのではないでしょうか.

  『プロシード英和』1[他]...を交換する;(あいさつなど)を交わ
           す;...を取り替える
           <<exchange+名>>
           <<exchange+名+with名>>
           <<exchange+名+for名>> (以下略)
このようにできれば語義番号の1番は少なくても(  )のない型を示
したいですね.(自分の作った辞書をいい例にして気がひけますが)

 『ブライト英和』の場合はやや難しいかなと思います.
  [他][文型V][主動目(+副)]1(a)<人が><[目](物)>を交換する,
  取り換える((+for/...と))
これを理解するのは高校1年生にはかなりたいへんでしょう.

 文型がないと言われる『クラウン英和』を見ると,
  vt.1(別の物と)交換する,取り替える.―exchange A for B,...
このようにさりげなく型が示してある場合もあり,型に気をつけている
のがよくわかります.名人芸でしょうか.

 次に『ジーニアス英和』の文型・動詞型ですが,これは英語教師に
とってもかなり難しいと思います.< > と 〔  〕(亀甲)との
使い分けの関係,前置詞と語義との〔  〕の対応などを理解するこ
とだけでも私の頭ではしばらくかかりました.この理解はいまだでき
ていない人が私の周りにいます.かっこの使い方の説明が少し簡単す
ぎるようです.『ジーニアス英和』の文型を論ずるのは私のような文
法に弱い者には手に余りますので今回はやめておきます.

 結論として,『ヴィスタ英和』はなんらかの形で文型・動詞型ない
し,話し・書く場合のヒントのようなものを示した方がよかったので
はないかと思われます.

 (おしゃべり)
 『ヴィスタ英和』の編集主幹である若林先生にお目にかかる機会が
ありましたので,先生の辞書は用例によって語らせる点でクラウンや
カレッジクラウンなど三省堂の伝統を踏んでいますね,と申しました
ら,え!と驚かれて,何も言われませんでしたので,そういう意識は
まったくなかったようです.先生ご自身が執筆をたいへん楽しまれた
様子で,理科系のフォーラムなどは少し詳しすぎますね,と申した
ら,楽しくてついつい書いてしまいましたとのこと.
 先生は東京工業高専にいらっしゃったので理科系に強いようです.
(私も工業高専にいたのですが,理科系はだめですね.)

村 田  年


2 INET GATE INR00101 98/03/23 02:30
題名:[lex] RE: 英文法チェックソフトに関して

Date: Mon, 23 Mar 1998 01:55:20 +0900
From: "MAKINO Takehiko"
Reply-To:
To: <>

牧野です。

WordPerfectは買収がらみで2〜3年ほど混乱していた時期がありますが、
Corel社に移って落ち着き、4月下旬にバージョン8Jが出ます。但し単体販売
はなく、Suiteの形でしか買えませんが、乗り換え版で24,800円ですから、ま
あまあの値段でしょう。因みに、今では Grammatik は内部に完全に統合され
た感じになってます。

----
牧野武彦


1 INET GATE INR00102 98/03/23 08:10
題名:[lex] 『ジーニアス英和』の基本語について

Date: Mon, 23 Mar 1998 08:00:12 +0900
From: IIZUKA Toshiaki <>
Reply-To:
To:

 村田先生,有益なご指摘をいただき,ありがとうございます。

 Thorndike は,さすがに基本語の資料にしたわけではなくて,ランクの低い語
を選定するときに参考にしました。D,E ランクの語については,少し古い語でも
読むための需要があると考えたからだっとと思います。

 それから,ランク分け自体のことをちょっと別にしても,A 中学「基本」
語,B 高校「基本」語,という言い方がよくなかったですね。教科書に出てく
る語だけでも,(特に初版のときは)数種類の教科書を参照するとかなりの数に
なり,当然「基本」の線を越えたものになってきます。
 同様に,C 大学教養… というのも,説明として適切でないかもしれません。

 改訂に備えて十分検討いたします。ありがとうございました。

=================================================================
飯塚利昭 IIZUKA Toshiaki

(従来の も使えます)


1 INET GATE INS00102 98/03/23 09:19
題名:[lex] 辞書の重要語ランク

Date: Mon, 23 Mar 1998 09:07:08 +0900
From: (馬本 勉)
Reply-To:
To:

こんにちは,馬本@比治山大in広島です。
先日来,辞書の重要語ランク,ならびに語彙選定に関して皆様より
大変詳しいご説明を頂き,誠に有り難うございました。

今回も質問で恐縮ですが,成句やコロケーションの頻度を示した辞
書があれば便利だなあ,といつも思っています。何分勉強不足なも
ので,どのような辞書があるのか,ご存じの方がいらっしゃれば教
えてくだされば幸いです。

(コウビルドのEnglish Collocations on CD-ROM をときどき見て楽
しんでいますが,これは語と語の共起関係の頻度を示してくれます
ので,頻繁に用いられる成句のみならず,同じ文脈の中で用いられ
る語と語の概念的な連結を知ることができて面白いですね。)

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Umamoto Tsutomu (馬本 勉)


3 INET GATE INR00104 98/03/24 01:28
題名:[lex] 再度飯塚さんにお応えして

Date: Tue, 24 Mar 1998 01:16:00 +0900
From: 村田 年 <>
Reply-To:
To:

飯 塚 利 昭 様

村田です.ご返事ありがとうございます.
私,南出先生とかなり親しくお付き合いさせていただいているのですが,
『ジーニアス英和』についてお話ししたことは一度もありませんでした.ど
うしてだったのかなー,と思いますが,貴兄から話を聞けてたいへんうれし
いです.

(飯塚さん)
 Thorndike は,さすがに基本語の資料にしたわけではなくて,ランクの低い語
を選定するときに参考にしました。D,E ランクの語については,少し古い語でも
読むための需要があると考えたからだっとと思います。

(村)1万語を越すと頼れるものはありませんでしたから,読むためという
ことで,いいかも知れません.1000万語ぐらいのコーパスでも1万を越
すと信頼性はあまりない,2万となるともう人の経験とどちらが,となると
思います.
この場合の2万というのは head ではなくて,word-form ですから,辞書の
見出しになりにくい form を取り,ゴミを捨て,派生語,活用形を除くと,
1万より相当少なくなってしまいます.

  そこで,コーパスを大きくします.するとどうしても資料が古い英語に,
雑誌など難しい英語になります.一度 Bank of English の頻度上位5000語
をながめさせていただいたことがあります.(the の出現頻度数からみて
1億5000万ぐらいのコーパスでしょう.)感想は英和辞典には使えない,
ということでした.Written の中の相当 bookish な語が上位1000語,
2000語の中に相当数入ってきて,COBUILD2の星印の基本語とは違った順位
になっていました.基本語のランク分けも機械的にできそうでなかなか難しい
ですね.(COBUILD の星印も資料の選択の段階でなんらかの教育的配慮があっ
たのではと推察致します.)

(飯塚さん)
 それから,ランク分け自体のことをちょっと別にしても,A 中学「基本」
語,B 高校「基本」語,という言い方がよくなかったですね。教科書に出てく
る語だけでも,(特に初版のときは)数種類の教科書を参照するとかなりの数に
なり,当然「基本」の線を越えたものになってきます。
 同様に,C 大学教養… というのも,説明として適切でないかもしれません。

(村)ちょっと揚げ足をとるようで失礼なのですが,教科書の種類によるば
らつきについて,調査したことのない人たちが誤解をするといけませんので,
どのぐらいのばらつきがあるかについて,一例を挙げておきたいと思います.
都立教育研究所の淀縄光洋先生(当時)の研究によると,

 昭和57年度の高校「英語T」26種類
 昭和58年度の高校「英語U」28種類

に出てくる総異語数は 8147語です.この内固有名詞と1回しか出てこない語を
除くと,これは私の概算ですが(数えてありません),4000語ぐらいです.こ
れから辞書の見出し語になりにくい派生語・活用語を除くと,おそらくは
2000数百となるでしょう.
 2,3種類の教科書を較べると,いやにばらついて見えますが,多くのテク
ストを総計してみると,ばらつきはそれほどではないのです.
 54種類の教科書のうち,10種類以上に出てきた語は約 2000語です.
すなわち,高校の教科書を全部調べてもやっと2000語の基本語候補が選ぶ
のがせいいっぱいなのです.

 今では高校の語彙数が減りましたし,口語的になっていますから,さらに
ぐっと異語数は減っているでしょう.口語はばらつきが少ないことはすでに
わかっていますので.

飯塚さんにはこのようなことを申し上げる必要はないのですが,語彙に今
まで関心をもたなかった人もこの中にはいらっしゃると思いますので,つまら
ないことを書かせていただきました.

(参考資料)淀縄光洋『高校英語語彙の実態と学習語彙の在り方』東京都立
教育研究所.1983.


2 INET GATE INP00102 98/03/24 01:27
題名:[lex] 基本語とランク表示

Date: Tue, 24 Mar 1998 01:11:00 +0900
From: 南出 康世 <>
Reply-To:
To:

大阪女子大の南出です。

 辞書の重要度ランク表示について最も重要なことは、なにをもとに(要するに
どのようなコーパスをもとに)どのような基準でランクを設けたかということ
である。このプロセスを抜きにして結果だけをいじっても得るところは少ない
と思う。
 この際参考になるのは飯塚さんが言及したCarroll et al. (1971) と、
American Heritage School Dictionary(1978)との関係である。Carroll
et al. (1971)はご存じのように、米国の中学・高校のテキストからなる500
万語コーパスにもとづく頻度調査である。そしてAHSD はこの調査と同種の
資料に基づく70万枚の引用カードを元に編集された学習用辞書である。学習
者がもっとも慣れ親しんでいる教科書をコーパスに学習辞書を作る。もっとも
合理的な発想である(ちなみに、このAHSDはThe American Heritage
Student's Dictionary になり、井上先生が紹介されたThe American
Heritage English as a Second Language Dictionary はこのAmerican
Heritage Student's Dictionaryを母体として生まれたのである。いわば
AHSDの孫である)。

 さて英語教科書をコーパスに学習辞典を作るという発想はもちろん日本にも
ある。『ローレル英和辞典』(三省堂、1968)がそうである。「約一年間
高校用教科書を含めた数百冊のテキストから語彙・用例を集めた」「この辞典
の語彙は約38000語.....重要語約8800に星印(*)を付けて注意をうなが
した」とある。

 平成元年の学習指導要領改訂をきっかけに英語教科書出版に参入する出版社が
急増した。1960年代とは比較にならないくらい教科書の数が増えたのである。

数件出版の知人に調べてもらったところでは、英語1(49)、英語2(49)、

ライテイング(29)、リーデイング(23)、オーラルコミュニケーション(A
17, B20, C2)の合計189点におよぶ。これだけでコーパスを構成できる十分な
量である(ライテイング教科書の場合は練習問題の解答もコーパスの一部とする
必要があろう)。

 私の提案は、既成のコーパスよりかかってものを言うのはそろそろやめにして、

これら教科書をもとにコーパスを作成しCarroll et al. (1971) の日本版を作る
ことである。1社が作るか共同開発とするかはここでは論じないが、共同開発と
なれば、各社共通のデータとなる。データが共有になるとどの辞書も同じ結果に
到達しておもしろくなくなるのではという懸念が生じるかもしれない。しかしそ
れは杞憂である。「頻度が高いほどその語は重要」というのは過去の神話になり
つつある。重要語のランク付けには頻度に加えて、range, coverage, defining
power, core vocabulary, neuter vocabularyといった視点が必要である。
あるいはこれに外的要素「日本の事情」とか「英語力の現状」といったもを加味
する必要もでてこよう。
「個性」はいくらでも発揮できる。ともあれ何を元にどのような基準
で語のランク付けを行ったか明瞭になる。辞書採択に大きな影響力を持つことに
なろう。
そしてこのコーパスの根幹をなすであろう3000語程度を基本語とし(下記参
照)、あと準基本語、一般語というランクでよいと思う。準基本語、一般語をど
う設定するかはもっと大きなコーパスに関わってくる問題である。これについて
は、英語コーパス学会(4月18日)のシンポジウム「コーパスと辞書編集」が
指針を与えてくれるだろう。

 (参考)

ライテイングを除く教科書で使用できる語数は次の通りである。

英語1 中学約1000語+約500
英語2 英語1+約500
リーデイング 英語1+約900
オーラルコミュニケーション 英語1+約500
(中学約1000語の内訳は文部省指定語507語+各社自由裁量の約500語
である。従って507語以外の語は多少流動的である)。

この数値から高校における基本語とその数を割り出すには

(1)異種教科書間における使用語数の重複比率
(2)教科の必修・選択の区別と、選択の場合の履修状況
(3)使用語は制限語数内で各社自由裁量なのでかなりの幅が生じる。その幅の
度合い。

といったことを考慮する必要がある。これから推定したものが上記の3000語
である。

3月23日 南出康世


7 INET GATE INP00102 98/03/24 11:12
題名:[lex] 基本語とランク表示

Date: Tue, 24 Mar 1998 10:59:39 +0900
From: (小川俊 也)
Reply-To:
To:

おはようございます。南出先生・村田先生のメールが今日だけで各50以上いただいて
おります。他に送られるべきものではないかと心配しております。大変恐縮ではござい
ますが、確認をお願いいたします。

--
株式会社 三省堂 外国語辞書出版部
     小川俊也 ()


4 INET GATE INS00101 98/03/24 15:35
題名:[lex] 基本語とランク表示

Date: Tue, 24 Mar 1998 13:44:00 +0900
From: 村田 年 <>
Reply-To:
To: ,

小川俊也様  (井上永幸先生)

村田です.
1通だけならMLに加入していれば当然のことですが,50通も同じものが行っている
となると,どこかに故障があるのですね.ご迷惑をおかけいたします.
さっそく井上先生にお願いしてみてもらいますが,本当に南出先生と私のものが50通
入っているのですね.久しぶりに見たというのであれば,50通ぐらい溜まっている可
能性は正常な状態でもありますが.同じメールが25通も入るのかを申し訳ありません
が,お答えいただけないでしょうか.


2 INET GATE INP00103 98/03/24 15:35
題名:[lex] 南出先生

Date: Tue, 24 Mar 1998 13:29:00 +0900
From: 村田 年 <>
Reply-To:
To:

南 出 康 世 先生

村田です.
いろいろ教えていただきましてありがとうございます.
このままどこかの雑誌に出していただければたいへんな啓蒙になると思い
ます.

(南出先生)
 この際参考になるのは飯塚さんが言及したCarroll et al. (1971) と、
American Heritage School Dictionary(1978)との関係である。Carroll

(村)今飯塚さんのメールがなくて,ものを言うのは不正確になる心配
がありますが,確か飯塚さんは Carroll とは言ってなくて,Thorndike-
Barnhart と書いていて,私がそれを Thorndike の語彙表と誤解したよう
です.お詫び致します.次のメールでも飯塚さんは私の勘違いを訂正して
いませんので,厚かましくさらにものを言ったりしています.Carroll et
al.(1971) と The American Heritage School Dictionary(1972)(正しく
は1972でしょうか.)を参考にされたと聞けば,私の反応は相当違ってい
たはずです.

(南出先生)
 さて英語教科書をコーパスに学習辞典を作るという発想はもちろん日本にも
ある。『ローレル英和辞典』(三省堂、1968)がそうである。「約一年間
高校用教科書を含めた数百冊のテキストから語彙・用例を集めた」「この辞典
の語彙は約38000語.....重要語約8800に星印(*)を付けて注意をうなが
した」とある。

(村)『ローレル英和』は好きで一時使っていましたが,不思議なことに
この辞書はどこを見てもコーパスの影響は感じられません.コーパスを使
うと,それがどんなに小さなコーパスであっても,強い影響が出るようで
す.例えば,LDOCE1は100万語,『ロイヤル英和』は50万語ですが
,もろにその影響が用例に出ています.だいたい200冊で100万語近
くになりますので,数百冊と言うとかなりの言語資料ですね.三省堂の方
にお答えいただけるとありがたいですね.

(南出先生)
 私の提案は、既成のコーパスよりかかってものを言うのはそろそろやめにして、
これら教科書をもとにコーパスを作成しCarroll et al. (1971) の日本版を作る
ことである。1社が作るか共同開発とするかはここでは論じないが、共同開発と

(村)賛成です.しかし,一方竹蓋先生などの研究で明らかなように,日本
の教科書の語彙は偏っていることも確かですので,ネィテイブのみの言語資
料も必要であることは先生も含んでおられると思います.

(南出先生)
「個性」はいくらでも発揮できる。ともあれ何を元にどのような基準
で語のランク付けを行ったか明瞭になる。辞書採択に大きな影響力を持つことに
なろう。

(村)おっしゃる通りだと思います.

(南出先生)
そしてこのコーパスの根幹をなすであろう3000語程度を基本語とし(下記参
照)、あと準基本語、一般語というランクでよいと思う。準基本語、一般語をど
う設定するかはもっと大きなコーパスに関わってくる問題である。これについて
は、英語コーパス学会(4月18日)のシンポジウム「コーパスと辞書編集」が
指針を与えてくれるだろう。

(村)3000語はいい線だと思います.竹蓋先生は5000語が英語習得
の到達点として,ひとつの望ましい基本レベルだという趣旨のことを言われ
ていますが.
  英語コーパス学会のシンポジウム,聞きに行きたいですが,予定が詰ま
っていて.残念です.

(南出先生)
この数値から高校における基本語とその数を割り出すには

(1)異種教科書間における使用語数の重複比率
(2)教科の必修・選択の区別と、選択の場合の履修状況
(3)使用語は制限語数内で各社自由裁量なのでかなりの幅が生じる。その幅の
度合い。

といったことを考慮する必要がある。これから推定したものが上記の3000語
である。

(村)おっしゃる通りです.勉強になりました.


1 INET GATE INR00102 98/03/24 15:55
題名:[lex] 基本語とランク表示

Date: Tue, 24 Mar 1998 15:38:48 +0900
From: (小川俊 也)
Reply-To:
To:

村田 年<> さんは書きました:
>小川俊也様  (井上永幸先生)
>
>村田です.
>1通だけならMLに加入していれば当然のことですが,50通も同じものが行ってい

>となると,どこかに故障があるのですね.ご迷惑をおかけいたします.
>さっそく井上先生にお願いしてみてもらいますが,本当に南出先生と私のものが50

>入っているのですね.久しぶりに見たというのであれば,50通ぐらい溜まっている

>能性は正常な状態でもありますが.同じメールが25通も入るのかを申し訳ありませ

>が,お答えいただけないでしょうか.
>
>
>お手数かけます。同じメールが入ります。なおかつ、先ほどそちらに出したメールも
自分からのものとしてもう既に20通入っています。同じ社の寺本も同じ状態ですので
何らかの故障かと思われますが、宜しくお願いいたします。

--
株式会社 三省堂 外国語辞書出版部
     小川俊也 ()


1 INET GATE INR00101 98/03/24 16:47
題名:[lex] 50通メールの件

Date: Tue, 24 Mar 1998 16:40:00 +0900
From: 井上 永幸 <>
Reply-To:
To:

小川俊也様

寺本様とともに,MLのメールが25通〔あわせて50通〕配信されましたとのこと,
ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

実は今朝方,メールサーバーのアップデートを行ないましたので,それが原因か
もしれませんが,他の方で同じように多くのメールが届いたという方がありまし
たら,宛,お知らせいただければ幸いです。

なお,現在は再び旧バージョンのメールザーバーに戻しました。皆様には,ご迷
惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

16:36 (火) 03/24/98 井上永幸 <>
[辞書学MLログを公開中: http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html]


4 INET GATE INP00100 98/03/24 18:04
題名:[lex] "the building whose roof" 再訪

Date: Tue, 24 Mar 1998 18:00:07 +0900
From: kazuo kato <>
Reply-To:
To: lexicographer <>

加藤@岩手医大です.

いつか The building whose roof you see over there is our school.
という高校の文法の教科書の文が問題になり,これを数名の ALT がおか
しな文だと判断したということでした.実は私自身も妙だと思ったので
すが,その理由は無生物の先行詞が whose という関係代名詞と共起して
いるためではないと思うと主張しました.その時は,しかし,ではなぜ
この文がおかしいのかについてはふれませんでした.その時は,このよ
うな内容の情報であれば,You see a red roof over there? That's the
roof of our school.などと言えばいいので,情報の内容と表現の mis-
match が容認度の低さの原因ではないかと考えたのですが,その証明は
容易ではありません.米人の同僚に相談すると,かれも問題の文には首を
かしげ, The factory whose roof you see over there makes Volkswagens.
とか The school whose roof you see over there teaches dress-making.
ならいいのではないかと言っていました.
そこで今度は building whose roof そのものをキーワードにしてネット
を検索すると次のような例が見つかりました:

(1) ...a building whose roof served as suicide platform for those
down-on-their-luck prostitutes.
(2) Take the next right turn: there will be a planetarium sign
there. We're the building whose roof is shaped like a Pringle's
potato chip.
(3) Greenhouse: a building whose roof and sides are made largely of
glass or other transparent or translucent material....
(4) The result is s building whose roof and walls become one as
folded plates buckle to form peaks and troughs at their
junctions.

結論は,理由はよくわからないものの,問題の文法の教科書の文のおか
しさは無生物の先行詞が whose という関係代名詞と共起しているため
ではなさそうだということになります.

加藤 和男


2 INET GATE INS00104 98/03/24 18:09
題名:[lex] hill/mountain

Date: Tue, 24 Mar 1998 18:10:37 +0900
From: Atsuhiro Kato <>
Reply-To:
To:

hillとmountainの違いについての辞書の記述に疑問を感じました。
疑問は2つあります。

<1.数値の問題>

安藤貞雄・山田政美(編著)(1995)「現代英米語用法事典」研究社.
p.271の"hill, mountain"の項を見ていたら次のようにありました。

<英>では約300メートル以上の山をmountainと呼び、それより低い
山はhillと呼ばれる。

山=mountain、hill=丘、という誤った公式を信じていた私は、こ
れは初耳だと思ってニューセンチュリー和英(第2版)も引いてみま
した。すると、"やま"の項に次のようにありました。

hillはmountainより低く、(英)では通例約600メートル以下の山
をさす。

お分かりのように、二つの記述の間には300と600という数値の違
いがあります。
きっとOEDか何かが根拠になっていると思い、OED2を引いてみた
ところ、"hill"の項に次のようにありました。

In Great Britain heights under 2,000 feet are generally
called hills....

英和辞典を引いてみたところ、プロシード(初版)・初級クラウン
(第7版)は600メートル、小学館ランダムハウス(第2版)・リーダ
ーズ(初版)は"2000ft.=610m"としていました。数値が出ていない
ものもありました。

一方、300メートルの根拠は何だろうと探っていたら、Sinclair,
J.(ed)(1992), Collins COBUILD English Usage.London:Collins
のp.295に次のようにありました。

In Britain, the smallest mountains are about 1000 feet
(300 metres) higher than the land surrounding them.

しかし、300mでも600mでもない数値が現れました。大塚高信ほか
(編)(1969)「英語表現辞典 英語の語法/語彙篇」研究社.のp496に
は次のようにありました。

イギリスでは2000メートル以下の山は通例hillと呼ばれるから
mountainと呼ばれるものはまれである。

これは、もしかしたらメートルとフィートを間違えただけかもし
れませんが。

<2.相対/絶対の問題>

英和辞典やニューセンチュリー和英、そして安藤貞雄・山田政美
(編著)(1995)の記述から判断すると、その山が「海抜」何メートル
より高いか低いかでhillかmountainかを使い分けることになります。
つまり、絶対的な高度が問題とされるわけです。

しかし、次のような記述をみると、本当にそういえるのかどうか疑
問が生じます。

大塚高信ほか(編)(1969: 496)
Hill(丘・小山)はmountain(山)より小さいのは一般に事実だ
が、これはその周囲の地勢により呼び名が変わりうるもので、海抜
の多少によって決まるものではない。(中略)Mountainは周囲の風
景に著しい変化を与えるようなものについていい、平地にあってそ
う高くなくともmountainと呼び、山地にある山は高くてもhillと呼
ばれることになる。

Sinclair,J.(ed)(1992: 295)
In Britain, the smallest mountains are about 1000 feet
(3000 metres) higher than the land surrounding them.

これは先にあげたものと同じですが、最後の部分に注目してくださ
い。そして、多くの英和辞典が参考にしていると思われるOED2の記
述です。これも最後の部分に注目してください。

OED2(s.v. hill 1.a)
A natural elevation of the earth's surface rising more or
less steeply above the level of the surrounding land.

これらの記述によれば、hillとmountainの使い分けにおいて問題と
なるのは、海抜何メートルといった絶対的な高度ではなく、周囲の
土地と比べてどれだけでっぱっているかという相対的な高度です。

以上、一応調べてみましたが、本当のところはどうなのかよく分か
りません。どなたかご存知の方がいらっしゃらないでしょうか。

---------+---------+---------+---------+---------+---------+
加藤豊裕(Atsuhiro Kato) 島根大学 教育学部 英語教育専修
E-mail :


1 INET GATE INP00101 98/03/24 23:39
題名:[lex] hill/mountain

Date: Tue, 24 Mar 1998 23:23:00 +0900
From: 井上 永幸 <>
Reply-To:
To:

加藤君

『NC和英』の名前がでておりますので,一応,少しだけ(^_^;)。

>これは先にあげたものと同じですが、最後の部分に注目してくださ
>い。そして、多くの英和辞典が参考にしていると思われるOED2の記
>述です。これも最後の部分に注目してください。
>
>OED2(s.v. hill 1.a)
> A natural elevation of the earth's surface rising more or
> less steeply above the level of the surrounding land.
>
>これらの記述によれば、hillとmountainの使い分けにおいて問題と
>なるのは、海抜何メートルといった絶対的な高度ではなく、周囲の
>土地と比べてどれだけでっぱっているかという相対的な高度です。

おっしゃるように,詰まるところは相対的なものだと思います。OED2を引用され
ていますが,実は引用されている箇所の前の部分に,

>1. a. A natural elevation of the earth痴 surface rising more or less steeply
>above the level of the surrounding land. Formerly the general term, including
>what are now called mountains; after the introduction of the latter word,
>gradually restricted to heights of less elevation; but the discrimination is
>largely a matter of local usage, and of the more or less mountainous character of
>the district, heights which in one locality are called mountains being in
>another reckoned merely as hills. A more rounded and less rugged outline is also
>usually connoted by the name.

とあります。これはまさにその相対的評価の説明です。引用されている箇所は,
正確には次のように続いていますね。

>In Great Britain heights under 2,000 feet are generally called hills;
>'mountain' being confined to the greater elevations of the Lake District, of
>North Wales, and of the Scottish Highlands; but, in India, ranges of 5,000 and
>even 10,000 feet are commonly called 'hills' in contrast with the Himalaya
>Mountains, many peaks of which rise beyond 20,000 feet. The pl. hills is often
>applied to a region of hills or highland; esp. to the highlands of northern and
>interior India.

また,

>一方、300メートルの根拠は何だろうと探っていたら、Sinclair,
>J.(ed)(1992), Collins COBUILD English Usage.London:Collins
>のp.295に次のようにありました。
>
> In Britain, the smallest mountains are about 1000 feet
> (300 metres) higher than the land surrounding them.

ですが,above sea-levelとはいっていないわけで,結局まわりの土地と比較し
た相対的な評価なわけです。

ただ,学習辞典を引く方の立場になってみると,「mountainとhillの違いは?」
という問いに対して,「mountainはhillより高いもの」,「hillはmountainより
低いもの」といった説明では,納得できないでしょうね。そこで,限られた行数
の中でその目安となる数値を出しているというのが現状でしょう。ただ,誤解を
与えやすいことは確かですので,スペース的に可能であれば「どちらの語を使う
かは個人の相対的な評価にもよるが,周りの土地との差が概ね600mくらいのもの
をいう」程度の方がいいかもしれません。

編集主幹と相談してみます。ご指摘ありがとうございました。

追伸: ちょっと個人的な経験の話を。イギリスの'mountain'は日本人がイメージ
する「山」とは若干違います。「山」は緑の木で覆われたものを想像するのがほ
とんどでしょうが〔これも相対的なもので,個人的経験によって違うでしょう
が〕,'mountain'はごつごつした岩肌がさらされたものを想像するのがほとんど
だと思います。もちろんこれは,イギリスの地形が大いに関係しているわけです。
住宅地なども含めて,周りよりちょっと小高くなっているところはだいたい
'hill'と呼ばれているようです。

22:49 (火) 03/24/98 井上永幸 <>
[辞書学MLログを公開中: http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html]


3 INET GATE INR00104 98/03/25 00:18
題名:[lex] hill/mountain

Date: Wed, 25 Mar 1998 00:01:00 +0900
From: 井上 永幸 <>
Reply-To:
To:

>追伸: ちょっと個人的な経験の話を。イギリスの'mountain'は日本人がイメージ
>する「山」とは若干違います。「山」は緑の木で覆われたものを想像するのがほ
>とんどでしょうが〔これも相対的なもので,個人的経験によって違うでしょう
>が〕,'mountain'はごつごつした岩肌がさらされたものを想像するのがほとんど
>だと思います。もちろんこれは,イギリスの地形が大いに関係しているわけです。
>住宅地なども含めて,周りよりちょっと小高くなっているところはだいたい
>'hill'と呼ばれているようです。

ちなみに,Longman Dict. of English Language and Cultureには,

mountain ... n
>1 a very high hill, usu. of bare or snow-covered rock: He looked down
> from the top of the mountain to the valley far below. | a mountain
> chain/range (=line of mountains) | the mountain peaks
>Longman Interactive English Dictionary
>ゥ Longman Group UK Limited 1993

hill ... n
>1 a raised area of land, not as high as a mountain, and not usu. as
> bare or rocky: Sheep were grazing on the side of the hill. | The
> castle stands on a hill. | a hill farmer
>Longman Interactive English Dictionary
>ゥ Longman Group UK Limited 1993

とあります。

23:55 (火) 03/24/98 井上永幸 <>
[辞書学MLログを公開中: http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html]


3 INET GATE INP00103 98/03/25 10:12
題名:[lex] ジーニアス英和の基本語

Date: Wed, 25 Mar 1998 08:15:11 +0900
From: IIZUKA Toshiaki <>
Reply-To:
To:

 村田先生と南出先生のやりとりに出てきた語彙資料の件:

 手元に資料がなくて書いていたために,失礼しました。
 南出先生はより直接的な当事者ですからよくご存じで,見出し選定とランクづ
けの資料のうち,語彙資料としては,Kucera & Francis のほかに Carroll et
al.を使いました。(Kucera & Francis 「など」と書いてしまい,すみませ
ん。)
 Thorndike の語彙表は,村田先生が訂正されたとおり Thorndike & Lorge
で,これをランクが低い語の選定に使ったことは前便のとおりです。
 他に,辞典類も参考にしました。例えば,OALD,LDCE,AHD,AD(Thorndike &
Bahnhart Advanced Dic.:先の語彙表の名はこれと間違えました),Universal な
どです。(これらは,もちろん見出し選定にだけ使ったわけではありません。)

 個人的な印象ですが,ランクづけについては「日本の事情」による部分が大き
かったというのが実態でした。

=================================================================
飯塚利昭 IIZUKA Toshiaki

(従来の も使えます)


2 INET GATE INR00102 98/03/25 10:18
題名:[lex] MLのおやすみ

Date: Wed, 25 Mar 1998 09:31:35 +0900 (JST)
From: Nagayuki Inoue <>
Reply-To:
To:

本日,9:30-17:00まで,学内LANが停止するため,一時的にMLをお休みさせていた
だきます。皆様にはご不便をおかけしますが,よろしくご理解野ほどお願い申し
上げます。

Nagayuki Inoue <><>==
<> Shimane University, Japan==============


1 INET GATE INS00100 98/03/25 15:38
題名:[lex] MLの一時休止

Date: Wed, 25 Mar 1998 15:31:58 +0900 (JST)
From: Nagayuki Inoue <>
Reply-To:
To:

辞書学MLが再開しました。

さて,下記の日時に,また学内LANが一時停止するため,辞書学MLもその期間中,
一時停止します。皆様にはご不便をおかけしますが,よろしくご理解のほどお願
い申し上げます。

一時停止日時:

1998年3月26日(木)9:30〜17:00

Nagayuki Inoue <><>==
<> Shimane University, Japan==============


9 INET GATE INS00102 98/03/25 18:17
題名:[lex] "the building whose roof" 再訪

Date: Wed, 25 Mar 1998 18:11:00 +0900
From: 村田 年 <>
Reply-To:
To:

加藤先生,松本先生

村田年です.
不勉強で whose がこのように問題になるとは思いませんでした.
このMLはとにかく勉強になります.
ありがとうございました.


7 INET GATE INR00104 98/03/25 18:57
題名:[lex] hill/mountain

Date: Wed, 25 Mar 1998 18:55:52 +0900
From: kazuo kato <>
Reply-To:
To:

加藤@岩手医大です.

井上 永幸 wrote:
>
> >追伸: ちょっと個人的な経験の話を。イギリスの'mountain'は日本人がイメージ
> >する「山」とは若干違います。「山」は緑の木で覆われたものを想像するのがほ
> >とんどでしょうが〔これも相対的なもので,個人的経験によって違うでしょう
> >が〕,'mountain'はごつごつした岩肌がさらされたものを想像するのがほとんど
> >だと思います。もちろんこれは,イギリスの地形が大いに関係しているわけです。
> >住宅地なども含めて,周りよりちょっと小高くなっているところはだいたい
> >'hill'と呼ばれているようです。
>
> ちなみに,Longman Dict. of English Language and Cultureには,
>
> mountain ... n
> >1 a very high hill, usu. of bare or snow-covered rock: He looked down
> > from the top of the mountain to the valley far below. | a mountain
> > chain/range (=line of mountains) | the mountain peaks
> >Longman Interactive English Dictionary
> >ゥ Longman Group UK Limited 1993
>
> hill ... n
> >1 a raised area of land, not as high as a mountain, and not usu. as
> > bare or rocky: Sheep were grazing on the side of the hill. | The
> > castle stands on a hill. | a hill farmer
> >Longman Interactive English Dictionary
> >ゥ Longman Group UK Limited 1993
>
> とあります。
>
Encyclopedia Americana (1980) (s.v. WORLD) に次のような記述があ
ります:

Hills are rough lands, less high and less rugged than mountains.
They occur primarily along mountains and plateau fringes, or as
remnants of long-eroded mountains or plateaus of the geologic
past. In a sense, they form the "filler" between other major
landforms(i.e. mountains, plateaus, and plains).

英和辞典などにも「日本のあまり高くない"山"は hill(s) ということが
多い」というような注があれば助かるな,と前から思っていました.

加藤 和男


6 INET GATE INR00101 98/03/25 19:21
題名:[lex] [lex] hill/mountainで思い出しまし

Date: Wed, 25 Mar 1998 19:10:26 +0900
From: "浅田 幸善" <>
Reply-To:
To: <>

hill/mountainの区別で思い出した映画があります.
95年のイギリス映画で"THE ENGLISHMAN WHO WENT UP A HILL BUT CAME DOWN A
MOUNTAIN"(邦題『ウェールズの山』)です.
手元にある日本語の短い解説を引用すると
「1917年のこと,ウェールズのある山村に2人の測量技師が訪れ,地図に載せる山の
高さを計る.ところが,それは山の基準点である標高305mにわずかにたらず,村人
は大騒ぎ」 (雑誌 BS fan 3月号. p.163)
また,手元の video movie guideには
Charming British fluff, set during World War I, about a cartographer who,
after declaring "the first mountain in Whales" to be sixteen feet short of
official British mountain height, is delayed by eccentric locals until they
can build it up from lowly hill status.... (Mick Martin & Marsha Porter:
Video Movie Guide 1996, Ballantine Books, p. 279)
と紹介されています.(ちなみに,映画としての評価は5点満点の4点--Very Goodと
なっています)

映画の中では「1,000フィートでないと地図にはのらんよ」というせりふがあった
り,mountainであってほしいという村人の願いもむなしく,その山が984feetしかな
いと発表したあと,まじめなcartographerが村人たちの前でその山をmountainと呼べ
ずに,小さい声でhillと呼ぶシーンなどがあったりします.

1,000 feetが本当にofficial British mountain heightなのか(だったのか)確認は
できていませんが,hillとmountainの違いというと必ず思い浮かぶ映画ですので,ご
紹介だけしておきます.

浅田幸善 (ASADA Yukiyoshi)


2 INET GATE INS00101 98/03/26 17:28
題名:[lex] hill/mountain

Date: Thu, 26 Mar 1998 15:59:38 +0900
From: "Asao, Kojiro" <>
Reply-To:
To:

朝尾@東海大学です。

hill / moutain についての話題をおもしろく読ませていただき
ました。

数年前、日本人学生とアメリカ人学生に対して山の絵を描いて
もらうという実験をしたことがあります。日本人学生には「山」
の絵を、アメリカ人学生には moutains を描いてくださいと指
示をして、色鉛筆で簡単な絵を描いてもらいました。

調査の目的は日米で同じ事物について、どのようなイメージの異
同があるかを調べることです。つまり、ことばでは表せないイメー
ジの違いを調べることです。このため、絵を描いてもらうという
方法をとりました。結果は次のとおりでした。

日本人学生:
~~~~~~~~~~ 
 日本昔話に出るような、おにぎりの形をした山: 11名
  (色は緑、山の数は1、2、3、4いろいろ)
 富士山:                    3名
  (富士山なので、白と濃い色、数はひとつ)

アメリカ人学生:
~~~~~~~~~~~~~~
 アルプス、ロッキー山脈ふうの切り立った山:   7名
   (山の数は複数、雪が上に積もっている)
 日本人が描くような丸い山:           4名
   (山は複数、丸い山でも上に雪が積もっているものが2名)
 富士山:                    2名
   (山はひとつ、日本人の描くのと同じ)

アメリカ人学生が富士山を描いたというのは、彼らは東海大学に
交換留学で来ている学生で、キャンパスからは富士山がよく見え
るという事情もあったのかもしれません。アメリカ人学生と日本
人学生のイメージを比べた場合、日本人は山をアルプスやロッキー
山脈ふうの、けわしい、切り立ったイメージでとらえないのに、
アメリカ人はこのようにとらえるものが多いということです。
また、アメリカ人は山の上に雪が積もったイメージをもつらしい
ということでした。

moutain について単に「山」という語義を与えるだけでは十分で
ないようです。ただし、学習辞典としてこのような情報をどこま
で載せるか、また、このようなイメージの相違というものがどこ
まで妥当性があるものかは、これからさらに考えていかなければ
ならないでしょう。

----------------------------------- phone (work): 0463-58-1211 --
朝尾幸次郎 東海大学(文学部)英文学科 ext.: 3133
fax (work): 0463-50-2239
-- http://www.lb.u-tokai.ac.jp/~koji/ ---------------------------


1 INET GATE INS00101 98/03/26 17:29
題名:[lex] hill/mountainで思い出しました

Date: Thu, 26 Mar 1998 17:18:00 +0900
From: 井上 永幸 <>
Reply-To:
To:

加藤先生,浅田先生

>1,000 feetが本当にofficial British mountain heightなのか(だったのか)確認は
>できていませんが,hillとmountainの違いというと必ず思い浮かぶ映画ですので,ご
>紹介だけしておきます.

official mountain heightなるもの,興味があります。国によっても違
うんでしょうね。OED2は何を基準に2000フィートとしているのでしょう
か。

17:17 (木) 03/26/98 井上永幸 <>
[辞書学MLログを公開中: http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html]


1 INET GATE INS00103 98/03/26 22:39
題名:[lex] hill/mountainで思い出しまし

Date: Thu, 26 Mar 1998 22:33:24 +0900 (JST)
From: konno takashi <>
Reply-To:
To:

井上先生、こんにちは。
>official mountain heightなるもの,興味があります。国によっても違
>うんでしょうね。OED2は何を基準に2000フィートとしているのでしょう
>か。
コンプトン百科事典でも
A mountain is a landform that rises prominently
above its surroundings. It is generally
distinguished by steep slopes, a relatively
confined summit, and considerable height. The
term mountain has topographic and geologic
meanings. It generally refers to rises over 2,000
feet (610 meters).
とあります
また日本百科全書の「やま」には
「どの程度の比高があれば「山」とよぶかは、地方、国、研究者などで異な
る。」とあります。2000フィートの説を展開している公明な学者がいるのでしょう

、その名前までは分かりかねます。世界大百科なら出ているかも知れませんが・・・
蛇足ですが、ご参考まで。
手元の電子ブック版の辞書類全てのmountainと山を調べてみましたが、言葉の定義という
のは自明のようで、その実とても大変な仕事なのですね。


5 INET GATE INP00102 98/03/27 00:32
題名:[lex] hill/mountainで思い出しました

Date: Fri, 27 Mar 1998 00:22:00 +0900
From: 井上 永幸 <>
Reply-To:
To:

金野様

>コンプトン百科事典でも
> A mountain is a landform that rises prominently
> above its surroundings. It is generally
> distinguished by steep slopes, a relatively
> confined summit, and considerable height. The
> term mountain has topographic and geologic
> meanings. It generally refers to rises over 2,000
>feet (610 meters).
>とあります
>また日本百科全書の「やま」には
>「どの程度の比高があれば「山」とよぶかは、地方、国、研究者などで異な
> る。」とあります。2000フィートの説を展開している公明な学者がいるのでしょ

なるほど,やはりそうですか。先ほど,OUPにOED2の記述について質問を
出しておきました。もし返事がきましたらご報告します。

00:20 (金) 03/27/98 井上永幸 <>
[辞書学MLログを公開中: http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html]


3 INET GATE INR00102 98/03/27 01:09
題名:[lex] Do you like a dog? は何故誤りか

Date: Fri, 27 Mar 1998 01:11:21 +0900
From: "谷橋浩昭" <>
Reply-To:
To: "Lexis" <>

神戸の谷橋です。
hill と mountain の違いに関するやりとりを
大変興味深く拝見しております。
かつて中学生にこの違いを質問されて答に窮し、
「高そうだなあ」と思えたらそれが mountain、
「そうでないなあ」と思えたら hill じゃあないの、などと
いい加減な返答をしていた頃が懐かしく思い出されます。

さて、最近 Do you know a dog? という英語は確かまずかったなあ
と思い辞書を確認してみたところ、
やはり Genius や Global では誤用法としてありました。
説明として、目的語となる名詞は普通は複数形と記述されていました。
A child needs love. と主語として用いられている場合は間違いではなさそうです。
目的語に a + 単数名詞 を何故持ってきてはいけないのか、
何故主語の位置になら持ってこれるのか、
その辺の事情に明るい方がいらしたら、
是非御教示下さいますようお願いいたします。
確か、河上道生さんの『英語参考書の誤りを正す』(?)には、
単に「ダメ」と書かれているだけで、
具体的な説明は何もなかったように記憶しております。


1 INET GATE INS00102 98/03/27 08:56
題名:[lex] hill/mountain 方法論

Date: Fri, 27 Mar 1998 08:45:43 +0900
From: Minoru Moriguchi <>
Reply-To:
To:

シャープ・森口です。

hill/mountain のお話、非常に興味深く読ませて頂いています。
本当にこのMLは勉強になると思います。

そこで、この hill/moutain のように定義または connotation
の違いがはっきりしない場合、派生語から考えるというのは
どうなんでしょうか。たとえば、昨日たまたま hill と mountain
をファイバリットで引いてみると、それぞれの形容詞が hilly と
mountainous となっていました。また、研究社の大英和には
mountain の形容詞として mountainy もあります。こういった派生語
どうしを比較することにより元の語の定義を再確認するという
方法は、メリットはあまりないのでしょうか(デメリットがあること
は私にも何となくわかるのですが)。

ふと思った素人の疑問です。

--
Minoru Moriguchi
Personal Computer Division
SHARP Corporation


5 INET GATE INP00103 98/03/27 10:01
題名:[lex] hill/mountain 方法論

Date: Fri, 27 Mar 1998 09:55:00 +0900
From: 井上 永幸 <>
Reply-To:
To:

シャープ・森口 様:

>そこで、この hill/moutain のように定義または connotation
>の違いがはっきりしない場合、派生語から考えるというのは
>どうなんでしょうか。たとえば、昨日たまたま hill と mountain
>をファイバリットで引いてみると、それぞれの形容詞が hilly と
>mountainous となっていました。また、研究社の大英和には
>mountain の形容詞として mountainy もあります。こういった派生語
>どうしを比較することにより元の語の定義を再確認するという
>方法は、メリットはあまりないのでしょうか(デメリットがあること
>は私にも何となくわかるのですが)。

これまではmountainやhillそのものについてのみ目が向いていましたが,
おっしゃるとおり,そういった切り口も必要ですね。派生語もそうです
が,hillやmoutainを修飾する語や前後で生起しやすい語句など,両者の
違いをはっきりさせるのにまだまだやるべきことはあるということです
ね。

09:51 (金) 03/27/98 井上永幸 <>
[辞書学MLログを公開中: http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html]


4 INET GATE INR00102 98/03/27 11:09
題名:[lex] Do you like a dog? は何故誤りか

Date: Fri, 27 Mar 1998 11:06:16 +0900
From: kazuo kato <>
Reply-To:
To:

加藤@岩手医大です.

谷橋浩昭 wrote:

> さて、最近 Do you know a dog? という英語は確かまずかったなあ
> と思い辞書を確認してみたところ、
> やはり Genius や Global では誤用法としてありました。
> 説明として、目的語とネる名詞は普通は複数形と記述されていました。
> A child needs love. と主語として用いられている場合は間違いではなさそうです。
> 目的語に a + 単数名詞 を何故持ってきてはいけないのか、
> 何故主語の位置になら持ってこれるのか、
> その辺の事情に明るい方がいらしたら、
> 是非御教示下さいますようお願いいたします。
> 確か、河上道生さんの『英語参考書の誤りを正す』(?)には、
> 単に「ダメ」と書かれているだけで、
> 具体的な説明は何もなかったように記憶しております。
>
「その辺の事情に明るい」わけではないのですが,関心がありますので,
書かせてもらいます.ただ,以下の見解はあくまで私見です.なお,
「総称数(generic number)」についての「現代英文法辞典」(三省堂,
1992)の解説を参照してください.先生の質問に対するそのものずばりの
答えが出ているわけではありませんが,総称単数/複数についてのやや
詳しい解説があります.

A child needs love がよくて,Do you like a dog? がまずいのは
単に主語/目的語の位置の問題ではなさそうです.その文の動詞の意味や
性質が関係してきます.目的語の位置に a dog や a cat が使われること
は珍しくありません:

(1) But if a man bites a dog, that's news.
(2) Mrs Crupp had indignantly assured him that there wasn't a room
to swing a cat there. (以上 2例は The Oxford Dictionary of
Humorous Quotations, 1995)

また,裸の複数形が目的語になる場合でも動詞によってその読み(解釈)が
ちがってきます:

(3) John likes vegetables. は
(4) John likes most or all vegetables. の読みが普通です.

一方,
(5) John buys vegetables は.
(6) John buys a few or some vegetables. の解釈を受けます.

((3)-(6) は昔読んだ David E. Kanouse (1972), "Verbs as
implicit quantifiers," Journal of Verbal Learning and
Verbal Behavior 11: 141-147 という論文の受け売りです.)

Do you like a dog? の dog は「総称」の読みではなく,specific
な(明示はしないけれども特定な)犬の読みを受けるのでまずいのだ
と思います.この文がなぜ (1)(2) のような読みを持てないかという
理由ですが,それは like という動詞の意味によるのではないかと今
は考えています.(これに対して Do you like dogs? の方は総称で,
Do you like most or all dogs? の読みを持つことになると思われます.)

以上,お役に立てば幸いです. (加藤 和男)


3 INET GATE INS00101 98/03/27 11:22
題名:[lex] RE:Do you like a dog? は何故誤りか

Date: Fri, 27 Mar 1998 11:10:06 +0900
From: "Matumoto Yosihito" <>
Reply-To:
To: <>

佐賀の松本@MCSです。

[谷橋先生]

>目的語に a + 単数名詞 を何故持ってきてはいけないのか、
>何故主語の位置になら持ってこれるのか、

吾妻書房の "A MISCELLANY OF MISTAKES" で、"a"はたくさんあるうちの一つ(ま
たはたくさんいるうちの一人)であることが述べられています。そこでは、
"Mary was a wife of Mr.Smith"
という文を題材に、これではスミス氏に複数の妻がいて、メアリーさんはそのうちの
一人であることになってしまう、という趣旨のことが述べてあります。

"Do you know a dog?" だと「犬そのもの」を知っているかどうかということになる
ので、普通、その表現はまずい、ということになるのではないでしょうか。"Do you
know my dog?" だと、単数でも大丈夫のはずです。

一方、"A child needs love." は、子どもというものは全員、愛情が必要なわけです
から、a child = any child と捉えて、こちらは大丈夫、ということなのだと思いま
す。


2 INET GATE INP00100 98/03/27 12:18
題名:[lex] hill/mountain,修飾語から

Date: Fri, 27 Mar 1998 12:12:00 +0900
From: 村田 年 <>
Reply-To:
To:

守口様,  井上様

村田年です.

(シャープ・森口 様:)

>そこで、この hill/moutain のように定義または connotation
>の違いがはっきりしない場合、派生語から考えるというのは
>どうなんでしょうか。たとえば、昨日たまたま hill と mountain

(井上先生:)
これまではmountainやhillそのものについてのみ目が向いていましたが,
おっしゃるとおり,そういった切り口も必要ですね。派生語もそうです
が,hillやmoutainを修飾する語や前後で生起しやすい語句など,両者の
違いをはっきりさせるのにまだまだやるべきことはあるということです
ね。

(村)派生語も語の守備範囲を限定するにはいいと思います.
   井上先生のおっしゃた修飾語で守備範囲を限定していくやり方は
   意味の本質に迫っていく1つに有効なやり方だと思っています.
   KWIC で修飾する形容詞の種類と頻度数を見てみるのはいいと思います.
   私は clear とclean,beautiful とprettyなどをCOBUILD でむかし
   やりまして,拙い論文に仕上げています.

この問題は最初は加藤さんでしたっけ.わたしもこんなみんなが食い
   ついてくるようなヒットを一度でいいから飛ばしたいですねー.

(無駄話)今日はこれからJACET英語辞書研究会の例会があり,出かけ
     ます.そこでJACET辞書研のホームページをあげた発表をします.


1 INET GATE INR00103 98/03/27 12:28
題名:[lex] RE:Do you like a dog? は何故誤りか

Date: Fri, 27 Mar 1998 12:21:53 +0900
From: "Matumoto Yosihito" <>
Reply-To:
To: <>

佐賀の松本@MCSです。

結論を書き忘れていましたので、追記します。

吾妻書房の "A MISCELLANY OF MISTAKES" を読んで、ずっと "a" を見てきたのです
が、"a" は、「全体を思い起こして、その中の不特定の1つ」を指すのではないか、
と考えるようになりました。

一方単なる複数形の場合は、全体を思い起こさずとも良く、そういったことから
"Do you know dogs?" のほうが普通なのでは、と考えております。


2 INET GATE INR00102 98/03/27 15:26
題名:[lex] Do you like a dog? は何故誤りか

Date: Fri, 27 Mar 1998 14:04:08 +0900
From: (SATO Hiroaki)
Reply-To:
To:

At 11:06 AM 98.3.27 +0900, kazuo kato wrote:
>また,裸の複数形が目的語になる場合でも動詞によってその読み(解釈)が
>ちがってきます:
>
>(3) John likes vegetables. は
>(4) John likes most or all vegetables. の読みが普通です.
>
>一方,
>(5) John buys vegetables は.
>(6) John buys a few or some vegetables. の解釈を受けます.
能動態と受動態で解釈が異なる,というN. Chomskyの1975年の論文を思い出します。

「"Beavers build dams"[(全ての)ビーバーにはダムを作る習性がある]は,真であ
るが...しかし,"dams are built by beavers"は,思うに,全てのダムがビーバーに
よって作られるということを含意していると理解するのが自然な解釈であり,したが
って,この文は偽である。」(N. Chomsky(安井稔訳)「形式と解釈」,研究社出版,
1982年,p. 57)

その後の生成文法の研究でも数量詞の解釈については,多くの研究がなされていると
思います。

>Do you like a dog? の dog は☆ぢ総称」の読みではなく,specific
>な(明示はしないけれども特定な)犬の読みを受けるのでまずいのだ
>と思います.この文がなぜ (1)(2) のような読みを持てないかという
>理由ですが,それは like という動詞の意味によるのではないかと今
>は考えています.
話題がずれますが,1995年9月のjacet全国大会で配布された"Longman Dictionary of
Contemporary English(3訂新版)"宣伝用のパンフレット(表紙の左上に"A WORD T
O THE WISE"と印刷されていて,裏にDella Summers, Lord Quirk, Geoffrey Leechの
カラー写真のあるもの)の中の"Spoken English--the whole story"というタイトル
のページに次のような英文があります。

Analysis of the spoken corpus of British and American English,
approaching 15 million words of natural, spontaneous speech, reveals
phrases that only occur, or most frequently occur, in spoken English. Up
until now, these phrases have never appeared in a learners' dictionary,
such as "get a life", "way the hell over there" and "I mean".

「ロングマン口語英語コーパスのすごさ」を宣伝する部分の英文ですので,"a learn
ers' dictionary"の不定冠詞aというのは,「総称的」のはずです。わざわざ"have n
ever appeared"とう強い否定をしているのですから,「明示はしないけれども特定の
1辞書」という解釈では「口語英語コーパスのすごさ」を示せません。

「総称的」に解釈した場合に,"get a life"と"way the hell over there"について
は,「口語英語コーパスのすごさ」を示すデータと捉えてもよいのですが,"I mean"
は変ですよね? "Up until now"の1995年時点で,"I mean"を載せていない辞書など
世の中にあったのでしょうか?

この年までにはすでに,高等学校の英語科目に「オーラル・コミュニケーション(A,B
,C)」が導入されていたので,"I mean"を解説していない辞書など,日本の高校生は
誰も買わないと思いますが。
__________________________________________
〒214-80 神奈川県川崎市多摩区東三田2-1-1
  専修大学8号館8411研究室
佐藤弘明
TEL: 044-911-1297
FAX: 044-911-1231
e-mail:
homePage: http://www.senshu-u.ac.jp/~thc0408/


1 INET GATE INS00104 98/03/27 16:02
題名:[lex] 同義語・類義語

Date: Fri, 27 Mar 1998 15:54:04 +0900
From: Minoru Moriguchi <>
Reply-To:
To:

シャープ・森口です。

井上先生、村田先生:
コンピュータのユーザインタフェースを考える際、同義語・類義語と
いうのは大きな問題となっており、常々興味のあるところでした。
たとえば、ユーザがしたいタスクが、複数の語で表現できるとき
どの語を選ぶかといったようなことです。

参考にさせて頂きます。ご教示ありがとうございました。

--
Minoru Moriguchi
Personal Computer Division
SHARP Corporation


1 INET GATE INP00100 98/03/27 16:43
題名:[lex] Do you like a dog? は何故誤りか

Date: Fri, 27 Mar 1998 16:41:04 +0900
From: kazuo kato <>
Reply-To:
To:

佐藤先生,加藤@岩手医大です.コメントありがとうございました.

SATO Hiroaki wrote:
>
> その後の生成文法の研究でも数量詞の解釈については,多くの研究がなされていると
> 思います。
>
おっしゃる通りです.ただ,この問題については動詞によって後続する
裸か複数名詞の数量解釈が異なることを例示するのが目的でしたから,
あれでいいのではないかと思いました.

> 話題がずれますが,1995年9月のjacet全国大会で配布された"Longman Dictionary of
> Contemporary English(3訂新版)"宣伝用のパンフレット(表紙の左上に"A WORD T
> O THE WISE"と印刷されていて,裏にDella Summers, Lord Quirk, Geoffrey Leechの
> カラー写真のあるもの)の中の"Spoken English--the whole story"というタイトル
> のページに次のような英カがあります。
>
> Analysis of the spoken corpus of British and American English,
> approaching 15 million words of natural, spontaneous speech, reveals
> phrases that only occur, or most frequently occur, in spoken English. Up
> until now, these phrases have never appeared in a learners' dictionary,
> such as "get a life", "way the hell over there" and "I mean".
>
> 「ロングマン口語英語コーパスのすごさ」を宣伝する部分の英文ですので,"a learn
> ers' dictionary"の不定冠詞aというのは,「総称的」のはずです。わざわざ"have n
> ever appeared"とう強い否定をしているのですから,「明示はしないけれども特定の
> 1辞書」という解釈では「口語英語コーパスのすごさ」を示せません。
>
この文の a learners' dictionary についてはおっしゃる通りだと思います.
ただ,Do you like a dog? はおかしくて Do you like dogs? ならよい理由
を説明するにはあの方がいいと思ったのです.ちょっと古いですが,G.K.
Chesterton, The Oracle of the Dog に次のような文があります:

"Yes," said Father Brown, "I always like a dog, so long as he
isn't spelt backwards."

この a dog は犬一般ではなく,ある限定がついた specific な犬だから
いいのではないでしょうか.
また,I like an apple はおかしいけれども,I should/would like
an apple なら OK です.これは like と should/would like の意味が
ちがっていて,後者では「りんご1個(ただし,どんなりんごでもかまわ
ない)」の意味だから OK だと考えたわけです.これに対して,I like
an apple の an apple は「りんご一般」という総称のつもりかもしれな
いが,そのような読みは(おそらく)成立しないので OUT だと説いたつも
りでした.「不定冠詞 + 名詞」がすべて「明示はしないが,特定の」とい
う意味を持つと主張するつもりはまったくありません. (加藤 和男)


1 INET GATE INP00100 98/03/27 17:16
題名:[lex] Do you like a dog? は何故誤りか

Date: Fri, 27 Mar 1998 17:14:00 +0900
From: kazuo kato <>
Reply-To:
To:

加藤@岩手医大です.言い落としたことがありました.
.
Do you like an apple? も Do you alike an apple that is very sweet,
but not sour at all? なら OK ではないかという気がするのですが,い
かがでしょうか.後者は「りんご一般」ではありません.


1 INET GATE INP00102 98/03/27 21:02
題名:[lex] at (the (very) )least

Date: Fri, 27 Mar 1998 20:55:16 +0900
From: Atsuhiro Kato <>
Reply-To:
To:

安藤貞雄・山田政美(編著)(1995)「現代英米語用法事典」研究社.
を何気なく見ていたら、p.314の"least, at (the)"の項に次のような
記述をみつけました。

COD8,LDCE2は「とにかく」(anyway)という意味では, at leastという
形を示し,「(いくら)少なくても」という意味では at (the) least
[反対表現は at (the) most]という形を示している(中略)ただし,
OALD4は上のどちらの意味でも at leastという, theのない形しか示し
ていない。英和辞典の中には at (the) leastという見出しで2つの意
味を示しているものがあるが、「とにかく」という意味では theがつ
かないのだから、この抱き合わせ表記には問題がある。

この記述をきっかけにいろいろ調べていくうちに、2つの疑問が浮かび
ました。

1.「とにかく」という意味では本当にtheがつかないのか

市川繁治郎ほか(編)(1995)「新編 英和活用大辞典」研究社.
p.1413の"least"の項には次の用例が出ています。

At (the) least I want [demand] a note of apology. せめて
詫び状ぐらいはほしい

この記述によれば、theはつくことになります。

ちなみに、安藤・山田(1995)は「英和辞典の中には」としていますが、
OED2も「抱き合わせ表記」をしています。

2.veryは共起するのか

LDOCE3では、2版の at (the) leastという形をなくし、 at the very least
という形をゴシック体で立項しています。また、CIDEは at (the very) least
という項目を立てています。この二つを見る限りでは、 at leastに theを単
独でくっつけることはできず、必ず veryを伴うということになります。

ここまで断定的ではなくても、at leastと veryの共起を示す記述は他にもあり
ます。

1."at the (very) least (after amounts)"----OALD5
2."at (the) 〜=at the very 〜"----リーダーズ
3."at (the) least / at the (very) least"----ランダムハウス(2版)
4.ライトハウス(2版)は、項としては"at (the) least"としておきながら、
用例では"At the very least"で始まる文をのせています。(なぜveryを挿
入したのか説明しなければユーザーは混乱するでしょう)

veryがあってもなくてもよいのなら、学習辞典にふさわしい情報かどうかを
各辞典が判断し、のせる/のせないの選択をすればいいのかもしれません。
しかし、LDOCE3やCIDEが主張するように、theを入れる場合には必ずveryを
伴うのだとすれば、どの辞典もこの情報を入れないわけにはいかないと思い
ます。

以上、at leastについて若干調べてみましたが、どなたかにご教示を頂ければ
幸いです。

---------------------------------------
加藤豊裕(島根大学教育学部英語教育専修)
Atsuhiro Kato


2 INET GATE INS00100 98/03/28 00:33
題名:[lex] Longman の Activatorの件

Date: Sat, 28 Mar 1998 00:25:00 +0900
From: 村田 年 <>
Reply-To:
To:

正保 富三先生

村田です.
今日の例会は30名を越えてなかなかの盛会でした.お話もたいへんに具体的でわかり
やすく,ロングマン社の編集部の内情なども部分的にわかっておもしろいものでした.
発表の小室さんは初めての発表で辞書の研究会にデビューされたわけです.

 小室さんの E-mail ID を公開できるかどうか,また彼女のハンドアウトを辞書研の

ームページに公開できるかどうか,聞いてみます.

  村 田  年
  英語辞書研のホームページを見てやって下さい.
  別便で発表します.


1 INET GATE INR00103 98/03/28 00:33
題名:[lex] 辞書研のHPをあげました!

Date: Sat, 28 Mar 1998 00:26:00 +0900
From: 村田 年 <>
Reply-To:
To:

村田です.
辞書研のMLをあげました.見てやって下さい.

ようこそJACET英語辞書研究会へ!
(URL: http://www.f.chiba-u.ac.jp/JACET-LEX.html)

 ようこそJACET英語辞書研究会のホームページへお出で下さいました.
 この研究会は1995年11月に大学英語教育学会の中に英語の辞書を研究す
る小さなサークルとして作りました.まだ会則も名簿もありませんし,会
費を徴収する予定もありません.E-mail を登録いただければ活動の連絡
は致します.連絡は島根大学の井上永幸先生がお世話をされている
 「辞書学メーリングリスト」
  (http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/mailinglist.html)
に常に掲載しますし,このホームページを月1回見ていただければ,それ
でも十分です.入会されても,されていなくても扱いにはほとんど差があ
りません.
 以下に今まで送りましたメールの大半を掲載致します.今後順次これに
加えてまいります.原則として新しい情報は毎月月初めに掲載する予定で
おります.

1998年3月26日
大学英語教育学会(JACET)
             英語辞書研究会
              世話人 小林ひろみ 南出 康世
赤野 一郎 井上 永幸
      赤須  薫 山田  茂
連絡先:村 田  年


電話:0474-23-5475
FAX:043-290-3447

1. 研究会の目的
  1.関連諸科学を基盤として、英語辞書学の理論的研究を行なう。
  2.英語辞書編集の実際上の課題(見出し語、定義、文型表示、コロケーションな

)を研究する。

2. 会合の持ち方
  従来の JACET の研究会のように1つのテーマを立てて、学習会形式で運営してい

ことは、会員各自がそれぞれ多忙であると想像されるので、難しいと思います。そこで
、会員個々の研究成果の発表及び問題点の提示の会合としてはどうかと考えております

 1)現在行なっている研究や最近紀要などに発表した研究を発表する。現在研究デザ
イン形成途上のものでもよい。
 2)各発表について相互に意見交換をする。(発表30分、意見交換20分を基本と
する)研究方法、デザインに関する alternative な方法の可能性や、同じテーマの別
の視角の可能性を交換する。
 3)発表者は発表論文、または研究途上のアイディアの目的、方法、分析と考察/途
中経過、今後の展望・課題を記したレジュメを用意する。(単なる一つの研究発表とい
うよりもその人の研究の手の内を示して広く意見を求めるものとしたい)
 4)多忙なため発表予定のない方の参加も歓迎する。全体としてリラックスして自由
に意見交換ができるようにしたい。
 5)以上の発表と意見交換を通して、
   1. 参加者各自の研究を、一歩進め、または多角的に見直す場を持ち、より豊か

進める一助とする。(論文を読んで意見を言ってくれる人はなかなかいないので、よい
チャンスになることは確かです)
   2. 会員一人一人の研究の充電の場とする。
   3. 会員間の研究ネットワークを形成する契機とする。
4. ここから共同研究が始まる芽を育てることにもつながる。

(以下略)


4 INET GATE INS00101 98/03/28 08:45
題名:[lex] Do you like a dog? は何故誤りか

Date: Fri, 27 Mar 1998 09:14:38 -0800
From: Scott Petersen <>
Reply-To:
To:

谷橋浩昭 wrote:

> さて、最近 Do you know a dog? という英語は確かまずかったなあ
> と思い辞書を確認してみたところ、
> やはり Genius や Global では誤用法としてありました。
> 説明として、目的語となる名詞は普通は複数形と記述されていました。
> A child needs love. と主語として用いられている場合は間違いではなさそうです。
> 目的語に a + 単数名詞 を何故持ってきてはいけないのか、
> 何故主語の位置になら持ってこれるのか、
> その辺の事情に明るい方がいらしたら、
> 是非御教示下さいますようお願いいたします。
> 確か、河上道生さんの『英語参考書の誤りを正す』(?)には、
> 単に「ダメ」と書かれているだけで、
> 具体的な説明は何もなかったように記憶しております。

下手な日本語、すみません。この問題はtopic/comment の問題だと気がします。英語
では、目的語がtopicにはなれないかな?


3 INET GATE INS00101 98/03/28 12:29
題名:[lex] Do you like a dog? は何故誤りか

Date: Sat, 28 Mar 1998 12:24:57 +0900
From: kazuo kato <>
Reply-To:
To:

加藤@岩手医大です.「言いだしっぺ」でまとめさせてもらいます.

kazuo kato wrote:
>
> 加藤@岩手医大です.言い落としたことがありました.
> .
> Do you like an apple? も Do you alike an apple that is very sweet,
> but not sour at all? なら OK ではないかという気がするのですが,い
> かがでしょうか.後者は「りんご一般」ではありません.

Do you alike an apple that ...? の alike はミスタイプでした.

谷橋先生が提起された問題は,なぜ A child needs love. は OK で,Do you
like an apple? はダメなのか,そして,なぜ Do you like apples? なら OK
なのか,という問題でした.私の暫定的な答えは,「主語の位置」対「目的
語の位置」では説明できないということでした.その理由:

(1) 主語でも「不定冠詞 + 名詞」が「総称」(generic) 主語としてはダメにな
ることがあります.(cf. *A tiger is in danger of becoming extinct.
(Leech, G., & Svartvik, J. (1994), A Communicative Grammar of Eng-
lish, p. 53)) この場合は The tiger または Tigers にしなければなりま
せん.)

(2) 目的語でも否定がかれば「総称」になります.(cf. I don't see a French
writer voluntarily writing in English.(Greenbaum, S.(1996), The
Oxford English Grammar, p. 245))(佐藤先生があげられた例も否定文でし
た)

(3) 肯定文の目的語として「不定冠詞 + 名詞」は生じうるが,「総称」の読みを

つことはないかもしれない.(これはもう少し調べてみないと断定はできま
せん.
しかし,「総称」の問題は非常によく研究されている分野ですから,もうだ
れか
が答えを出しているかもしれません.)

(4) Scott Petersen 先生は topic になれるのは英語では主語だけだから問題の
文が
ダメだというご意見ですが,2つほど問題があるのではないかと思います.
この
考えでは (2) の現象を説明できません.また,これは topic という用語の
定義
にもよるかもしれませんが,英語では主語だけが topic になるというのは
言語
事実に反するように思います.(cf. Lambrecht, K.(1994), Information
Structure and Sentence Form, pp.146-150)

以上まとめてみましたが,あるいは提起された問題に対する回答になっていない
かも
しれませんね. (加藤 和
男)


4 INET GATE INS00100 98/03/30 11:19
題名:[lex] Do you like a dog? は何故誤りか

Date: Mon, 30 Mar 1998 10:17:22 +0900
From: kazuo kato <>
Reply-To:
To:

加藤@岩手医大です.送信した後で考えてみると,まだ問題が残っているよう
なので書かせてもらいます.

> kazuo kato wrote:
>
> 谷橋先生が提起された問題は,なぜ A child needs love. は OK で,Do you
> like an apple? はダメなのか,そして,なぜ Do you like apples? なら OK
> なのか,という問題でした.私の暫定的な答えは,「主語の位置」対「目的
> 語の位置」では説明できないということでした.その理由:

>(2) 目的語でも否定がかれば「総称」になります.(cf. I don't see a French
> writer voluntarily writing in English.(Greenbaum, S.(1996), The
> Oxford English Grammar, p. 245))(佐藤先生があげられた例も否定文でし
> た)
>
これは,前に示唆したように,やはり動詞(より一般的には述語/述部)の性質/
意味が一枚噛んでいて,上の(2)の一般論がすべての「不定冠詞 + 名詞」にあて
はまるというわけではなさそうです.たとえば:

I don't like cats/bullies/critics/lies, etc. と
I don't like a cat that leaves a mess in our garden.
I don't like a man who is too lazy to make any effort. を

比較しますと,最初のは無条件で「総称」(猫その他一般)ですが,
次の2例では猫/人間の1部です.つまり,I don't like cats. の
意味で I don't like a cat と言うわけには行かないということ
になります.「不定冠詞 + 名詞」は限られた条件下で「総称」の
読みを持てるが,はだか複数名詞は(ほとんど?)いつでも「総
称」であるということになります. (加藤 和男)


3 INET GATE INS00103 98/03/30 11:19
題名:[lex] hill & mountain

Date: Sun, 29 Mar 1998 13:28:00 +0900
From: 赤須 薫 <>
Reply-To:
To:

3/29/98

赤須@東洋大学です。
hillとmountainの話、楽しく読ませていただきました。

どうも議論が一段落したところでメールを出すことになってすみません。
あとでまとめて読む癖があるものですから。

1,000フィートないとmountainの資格がないという話は知りませんでした
ので、ためになりました。
(新情報ではありませんが、確認のため)辞書学の立場から、別の観点で
ひとつコメントしておきたいと思います。

「1,000フィート以上がmountain」という情報は、いわば、百科事典的関
心であって、辞書的関心ではないと思います。
この二つは、基本的に分けて考えた方が有益だと思います。
(百科事典と辞書というのも不鮮明な境界領域があって、明確な線引きは
できませんが、ここでは強引に分けます)

「1,000フィート以上がmountain」ということを大部分のイギリス人が
知っているとは思われません。
むしろ、そういう情報を習う以前にhillとmountainの区別がなんとなく
できているというのが実状だと思います。
ですから、その区別を支えるのが何なのかを追い求め、それを記述するの
が辞書の仕事だと思います。
辞書に「1,000フィート以上がmountain」という情報が不必要だというこ
とではなく、あった方が面白いし、いろんな意味でいいのですが、辞書的
関心から言えば、それは二次的な情報になるという話です。

以上


2 INET GATE INS00104 98/03/30 11:49
題名:[lex] 発表者の IDを公開します

Date: Mon, 30 Mar 1998 11:42:00 +0900
From: 村田 年 <>
Reply-To:
To:

村田 年です.

    辞書研の例会発表者の E-mail ID を公開します.

 先日のJACET英語辞書研の発表「Longman Essential Activator の編集と
レキシコグラファー養成の問題」の 小 室 夕 里 さんの E-mail ID を
公開します.

 <>

 ハンドアウトを辞書研のホームページに載せたかったのですが,原文がパソ
コンのテキストファイルにならないそうですので,載せられません.メールで
ご質問下さい.

 ロングマン社の編集会議の様子,レキシコグラファーの問題点などの発表は
日本では初めてでしょう.当日も活発な質疑が取り交わされました.

村 田  年

英語辞書研究会ホームページ:
URL: http://www.f.chiba-u.ac.jp/JACET-LEX.html


1 INET GATE INP00102 98/03/30 13:02
題名:[lex] contagious/infectiousの語義を教え

Date: Mon, 30 Mar 1998 12:55:36 +0900 (JST)
From: konno takashi <>
Reply-To:
To:

 みなさん、こんにちは。金野です。
 TIMEのコレラに関する記事の中に
(The disease, while not contagious, can be transmitted by food handling,
and in up to 50% of cases, kills if left untreated.)
という分がありましたが、コレラは法廷伝染病なのに not contagious と書かれ
ているのが、どうにも理解できませんでした。

GENIUS
○contagious
1 〈病気が〉(接触)伝染する(⇔noncontag
ious)(cf.<→infectious)
○infectious
1 伝染性の,伝染病の;[通例叙述]〈人が
〉病気を他人にうつすおそれがある《◆特
に接触による伝染についてはcontagiousを
用いる》‖〜 diseases (間接)伝染病,感
染症.
まだ得心が行きませんので感染経路について調べてみました。
(GENIUSが特にわかりにくかったという意味ではありません。リーダースプラスプ
ラスでもプログレシブでも分かりませんでした。もちろん一番問題なのは自分の理
解力不足だと思っております。関係者の方どうか、誤解なさらないでください。)

感染経路  route of infection
○A.直接感染
1.接触感染
2.飛沫感染
3.空気感染(飛沫感染の1種)
B.間接感染  (媒介物: 飲食物,水,衣類・器物,塵埃,カ,ハエ,シラミな
ど)

○病原体の侵入門戸による分類
A.皮膚(経皮感染)
B.粘膜
1.呼吸器
2.消化器(経口感染)
3.眼
4.泌尿生殖器

contagiousの語義はこの分類での接触感染を意味するのでしょうか?それとも直接
感染全体を指すのでしょうか?またinfectiousはこの分類の間接感染ととらえて良
いのでしょうか?それともこの分類とは関係ないのでしょうか?
それとこの分類で使われているごの英語も教えて頂けると幸いです。どうかご教示
のほどよろしくお願いいたします。
 ちなみに問題の英文のほうはコレラは接触感染するものではないが食物を通して
経口感染することがある・・・のように理解しました。
---------------------------------------------


4 INET GATE INS00103 98/03/30 23:44
題名:[lex]  [lex] contagious/infectious

Date: Mon, 30 Mar 1998 21:17:18 +0900
From: "浅田 幸善" <>
Reply-To:
To: <>

>感染経路  route of infection
>○A.直接感染
>1.接触感染
>2.飛沫感染
>3.空気感染(飛沫感染の1種)
>B.間接感染  (媒介物: 飲食物,水,衣類・器物,塵埃,カ,ハエ,シラミな
ど)
>○病原体の侵入門戸による分類
>A.皮膚(経皮感染)
>B.粘膜
>1.呼吸器
>2.消化器(経口感染)
>3.眼
>4.泌尿生殖器
>contagiousの語義はこの分類での接触感染を意味するのでしょうか?それとも直接
感染全
>体を指すのでしょうか?またinfectiousはこの分類の間接感染ととらえて良いので
しょう
>か?それともこの分類とは関係ないのでしょうか?
>それとこの分類で使われているごの英語も教えて頂けると幸いです。どうかご教示
のほど
>よろしくお願いいたします。

Random House Dictionary(第2版)のcontagiousの項にある類義語解説によると
CONTAGIOUS, INFECTIOUS are usually distinguished in technical medical use.
CONTAGIOUS, literally "communicable by contact," describes a very easily
transmitted disease as influenza or the common cold. INFECTIOUS refers to a
disease involving a microorganism that can be transmitted from one person to
another only by a specific kind of contact; venereal diseases are usually
infectious,...
とあります.
(小学館ランダムハウス英和 第2版には 「空気・水などの媒介による間接伝染は
infectious」と書いてあります)

また,手元にある辞典(インタープレス版 バイオ&メディカル大辞典 和英編)に
よれば(この辞典は用語の説明はいっさいありません)
直接感染: immediate contagion
接触感染: contagion
飛沫感染: droplet infection
空気感染: air-borne infection
間接感染: mediate contagion
経口感染: oral infection
となっています(このうち接触感染と飛沫感染は「リーダーズ」にもありました)
(immediate) contagionの下位分類に (droplet) infectionというのがあったり,ど
れほど厳密な区別があるのかわからないようにも思われます.
インタープレス版の辞書はやや信頼性に欠ける部分がありますので,他の専門辞書な
どにあたってみる必要があると思いますし,自分なりの見解を出す時間もありません
ので,今日は中間報告的なものですませておきます.
中途半端な書き込みですみません.
たぶん他の方からの書き込みがあると思います.

浅田幸善 (ASADA Yukiyoshi)


3 INET GATE INP00102 98/03/30 23:53
題名:[lex] contagious/infectiousの語義を教

Date: Mon, 30 Mar 1998 23:43:00 +0900
From: 村田 年 <>
Reply-To:
To: ,

金 野 様

村田です.
いやー,すごいところに目をつけられましたね.
実は私の知り合いでこの問題について論文を書いた人がいまして,現在印刷中です.
彼に答えてやってと,連絡中ですが,現在彼は引っ越しの,また引っ越しの最中で
まだ連絡がつきません.彼の特許ですから,私が答えるわけにもいかないし...
数日中にご返事します.

村 田  年
英語辞書研究会ホームページ:見てやって下さい.
URL: http://www.f.chiba-u.ac.jp/JACET-LEX.html


1 INET GATE INS00101 98/03/31 00:01
題名:[lex] hill and mountain

Date: Mon, 30 Mar 1998 20:55:00 +0900
From: 南出 康世 <>
Reply-To:
To:

大阪女子大の南出です。

hill, mountainについての議論おもしろく拝見させていただいています。
井上先生のほうから、辞書の定義だけでは相違がはっきりしないので、コ
ロケーションの観点から見直してはどうかという主旨の提案があり、村田
先生からそれをサポートする意見が寄せられました。
A word is known by the company it keeps.(Firth) という指摘は昔か
らあります。しかし理屈で分かっていてもこれを実証するのはこれまで大変
でしたが、最近ではある程度まで容易になりました。
簡単な調査をやってみました。
コーパスとしてCD-ROM版辞書, Random House Webster's Unabridged
Dictionary (version 2.1) [RHD]とOxford Advanced Learner's
Dictionary 5(version1.0) [OALD] を利用しました。2つを組み合わせた
のは、英と米、一般と学習で偏らない結果がでるのでは、という軽い気持ち
でやっただけで、深い理由はありません。hillとmountainを含む用例が約
200検出できましたので(定義文そのものから取っていません)、以下そ
れに基づく報告です。(なお、 CD-ROMの説明については『英語辞書と辞書
学』(近刊)にゆずります)。

(1) hill に はしばしば(平地と連続する)道路が通っていて車の通行は自由
である(この場合「坂道」という訳があてはまるのでしょうか)。一般に勾
配がきつく、人でも車でも登ることに苦労することが含意される。
It was strenuous to wagon up the hill.[RHD]/She puffed up the hill./
The old car pulled hard as we drove slowly up the hill.[OALD].(ほか
使われる動詞は、toil up, laboriously climb up, struggle up, go chugging
up ,clank up ,creep up etc.)
また、車は(steep) hill でしばしば故障するという連想がある:
His brakes failed on a steep hill./The driver lost control and the
car careened down the hill./ The car conked out halfway up the hill.
[以上OALD]/The engine lugs when we climb a steep hill.[RHD]
mountainにももちろん道路が通じていることが多いが、平地の道路とは別と
いう意識があるためか、The van labored up the steep mountain track.
[RHD]のように、track[road]を付けて言うのが普通か。

(2)勾配がきついことから、hill はなにかが転がり落ちること、滑り降りる
ことを連想させる:The ball gathered pace as it rolled down the hill.
[OALD]/slide down a snow-covered hill./pull a sled up a hill [以上RHD]
もちろん雪崩は山腹を滑り落ちる:The sound was deafening, as tons of
snow hurtled down the mountain.[RHD]

(3)転がり落ちる[滑り降りる]ことから、hill は地肌が見えてる状態のもの

イメージされる。このようなhill だと吹きさらしなので、a windy hill [RHD]
も存在する。a windy mountain は想像しにくい。

(4)hill はしばしば戦略上の重要ポイントとなる:The infantry slugged
up the hill and dug in./The enemy forces held the hill.[以上RHD]
関ヶ原の合戦にも山がいくつも登場する(たとえば、松尾山(小早川秀秋)/
笹尾山(石田三成)など)。これらの山も英語で言えばhill なんでしょうね。

(5)hill にもmountain にも top, crest があるが、hill の頂上は比較的
容易に到達できるので、頂上まで登ることを目的にした活動は特にないが
(せいぜい。頂上までのかけっこ)、mountain にはもちろんある
(e.g.mountain climbing[climber]) 。
従ってmountain の頂上は到達・征服の対象になる:attain the
mountain peak[RHD]/The mountain was not conquered until 1953.
[OALD]

(6)lake. river 等はmountain の中に存在することが多いが、hillは通例
lake, riverに 隣接するものとしてとらえられる:the charm of a mountain
lake [RHD]/The hill declines to the lake.[RHD]

(7)mountain はseaside と並んでリゾート地になりうる:weekend
excursions to mountain resorts[RHD] 。一方 hill resortという複合語は
ない。

(8)mountain には荘厳、雄大の観念を伴うが、hillには特にこの観念は
ない:the majesty of the mountain scenery [OALD]/grand mountain
scenery[RHD]
(ほか形容詞は、mighty, romantic etc.)。またhill にはhill scenery とい
う複合語もない。

(9)その高さからしてhill には(威圧するように)そびえ立つというイメー

はないが(cf. The mountain towered above us.[OALD]), 海に対しては高低
差が生じるためか「見おろす」気持ちが強い: The hill commands the sea./
a hill overlooking the sea[以上RHD]

(10)RHD にはa descendable hill の用例がある。ということは崖に近い
急勾配のhill もあるということになる。

以上限られたコーパスのコロケーションから推測した hill, mountain の「意味」

です。

3月30日 南出康世


2 INET GATE INR00104 98/03/31 00:06
題名:[lex] a の総称の読みについて

Date: Mon, 30 Mar 1998 19:06:30 +0900
From: Minoru MURATA <>
Reply-To:
To:

加藤和男先生

   a の総称の読みについて

村田 年です.
文法・語法に弱いので,黙って眺めていたのですが,先生方の議論
を見ていて,「総称」ということに拘りすぎているのではないかと思
いました.

a (an)の意味は <indefinite>(任意の1つ)であって,基本的には
それ以外の意味はないでしょう.その他の意味は場面に適用されて,
その場限りの意味として出てくるものです.その場合も基底には依然
として「任意の1つ」の意味が存在するわけです.

 I don't like a cat. がおかしいのは意味的に文が完結していないからです.
(私は任意の1つの猫が好きではありません→任意の1つの猫というのは
 どんな猫でしょう?)

先生がお示しのように修飾語を加えると完結の度合いが上がって OK に
なるわけですが,「おかしい(非文)」と言っても OK と言っても程度の
差でしょう.
ですから,A cat has nine lives. と言っても,この a は総称である前に
「任意の1つの」という基本的な意味は相変わらず持っているわけです.
それに文のトピックになっているとか,その場に適用された2次的な意味
が加わるにすぎないわけです.

 複数形にしても同じでしょう.「任意の複数個のもの」を表しているに
過ぎません.「任意の複数個のもの」が場面によってはその種の大きな部分
を指すこともあるし,小さなグループを指すこともあるでしょう.
ですから裸の複数形の場合は完全に全部を含む総称の意味は理論的に起こり
得ません.ですから裸の複数形が総称の意味を持つと言っても the... や
all the ...とは自ずと違った意味合いになるのではないでしょうか.
先生が「限られた条件下で」でおっしゃっているのは正しいと思います.
ただし,「はだか複数名詞は(ほとんど?)いつも総称」と言われて
いるのは単なる適用された場面の説明であって,本質をついていないし,
ミスリーデイングになると思います.

 a は<indefinite>
the は<definite>

これが基本的な意味であとはすべてこれが適用された場面の意味にすぎないで
しょう.

 以上が忙しかったこの2,3日歩きながら考えた感想です.いかがでしょうか.

村 田   年
辞書研究会のホームページ:見てやって下さい
URL:http://www.f.chiba-u.ac.jp/JACET-LEX.html

(以下は加藤先生のメールの一部)

>(2) 目的語でも否定がかれば「総称」になります.(cf. I don't see a French
> writer voluntarily writing in English.(Greenbaum, S.(1996), The
> Oxford English Grammar, p. 245))(佐藤先生があげられた例も否定文でし
> た)
>
これは,前に示唆したように,やはり動詞(より一般的には述語/述部)の性質/
意味が一枚噛んでいて,上の(2)の一般論がすべての「不定冠詞 + 名詞」にあて
はまるというわけではなさそうです.たとえば:

I don't like cats/bullies/critics/lies, etc. と
I don't like a cat that leaves a mess in our garden.
I don't like a man who is too lazy to make any effort. を

比較しますと,最初のは無条件で「総称」(猫その他一般)ですが,
次の2例では猫/人間の1部です.つまり,I don't like cats. の
意味で I don't like a cat と言うわけには行かないということ
になります.「不定冠詞 + 名詞」は限られた条件下で「総称」の
読みを持てるが,はだか複数名詞は(ほとんど?)いつでも「総
称」であるということになります. (加藤 和男)


1 INET GATE INR00103 98/03/31 00:09
題名:[lex] Do you like a dog? に対する様々な

Date: Tue, 31 Mar 1998 00:13:30 +0900
From: "谷橋浩昭" <>
Reply-To:
To: "Lexis" <>

谷橋です。
この度は、Do you like a dog? に対する様々な御教示
誠に有り難うございました。
冷静に考えてみれば、
諸先生のおっしゃる通りだと思います。
私も外国語大学出身なのですが、
井上さんとは違い、
文化人類学の先生にくっついて、
その方面の知的好奇心をふくらませてばかりいました。
そのツケが今になって帰ってきたかのようです。
現在は、比較文明学(人類学の延長線上にあります)を独学し、
人間行動科学をマスターで勉強中です。
やはり未だに英語学にはあまり縁がないままなのですが、
本職は英語とは切っても切れない関係にあうため、
日々基本的なことで悩みつづける毎日です。
今後も初歩的な質問をさせていただくことがあろうかと思いますが、
その節は宜しくお願いいたします。

さて、赤須さんは以下のようにお書きになっております。

>「1,000フィート以上がmountain」ということを大部分のイギリス人が
>知っているとは思われません。
>むしろ、そういう情報を習う以前にhillとmountainの区別がなんとなく
>できているというのが実状だと思います。
>ですから、その区別を支えるのが何なのかを追い求め、それを記述するの
>が辞書の仕事だと思います。
>辞書に「1,000フィート以上がmountain」という情報が不必要だというこ
>とではなく、あった方が面白いし、いろんな意味でいいのですが、辞書的
>関心から言えば、それは二次的な情報になるという話です。

今回私が取り上げた Do you like a dog? という英文に対して、
I like reading a book. を誤りとし、その説明として
”実際にこの意味では無冠詞複数形が好まれる。特に目的語となる名詞は
複数形が普通。”のごとく説明されています。
辞書学的な観点からは、
この記述はどのように考えられるのでしょうか。
やはり「二次的な情報」に過ぎないので、
普通の英和辞典ではそこまで触れる必要はないのでしょうか。
ご意見をお聞かせいただければ幸いです。


51 INET GATE INR00102 98/03/31 02:20
題名:[lex] hill and mountain

Date: Tue, 31 Mar 1998 02:13:00 +0900
From: 村田 年 <>
Reply-To:
To:

南 出 康 世 先生

村田です.
先生の用例と分析は極めて興味深いものです.このようによく準備され,
練られた解答はできません.私などは口から出任せで.少し暇ができたら,mountain/h
ill と形容詞とのコロケーションをやってみたいと思っていま
したが,先生の動詞とのコロケーションはおもしろいし,コーパスで機械
的にできるものではないですね.

 村 田  年
 英語辞書研究会ホームページ:
 URL: http://www.f.chiba-u.ac.jp/JACET-LEX.html


50 INET GATE INP00101 98/03/31 02:20
題名:[lex]  [lex] contagious/infectious

Date: Tue, 31 Mar 1998 02:13:00 +0900
From: 村田 年 <>
Reply-To:
To:

浅田先生

村田 年です.
この問題は辞書ではちょっと解決がつかないと思っています.
最近は辞書がよくなり,辞書の誤り,ミスリーデイングな説明は
極めて少なくなりましたが,この contagious/infectious はめずらしく,
辞書の記述と実際の使用例のギャップがある問題のようです.
友人が見つかったら解答を載せます.

 ともかく浅田先生は1000mの山の映画でヒットを飛ばして
いらっしゃるから.私などは下手な鉄砲で数を打っています.

 赤須 薫先生のことばの辞書と百科事典との違いの指摘はいいところを
ついて下さいましたが,おっしゃっているようにこれも程度の問題ですね.
浅田先生の指摘は相当文化的な意味があります.
例えば,
   水:H2O(eichi,two,oh);水素と酸素からなる.

などと較べれば皆さんの説明は文化的です.

 次の見坊さんの語釈はいかがでしょうか.

水:1.泉からわき川を流れ海にたたえられたり雨となって降って
  来たりする,冷たい液体.化学的には,水素と酸素の化合物と
  してとらえられる.[きれいなものは無色透明で飲料に適し,
  生物の生存に不可欠.熱したものは「湯」,蒸発するものは
  「水蒸気」凍ったものは「氷」と言う]...[新明解国語辞典]

 water は必ずしも「冷たく」ありませんし,「湯」も water ですし,
 「飲料に適し」などは日本の文化ですし,イギリスの川はたいてい冬
は「流れ」ないそうですし,文化的意味は相当に違うわけで,これを記
述するのがことばの辞典なのでしょうね.

 文化的意味をどこまで書くか,がことばの辞書の問題となるでしょ
う.見坊さんの語釈もくどすぎるとも思えますが,外国人だったら
どんなにか助かるでしょう.日本人が水をどうとらえているかがわか
るのですから.

 これを英語の問題にしてみると,NWD が改訂において(3版)文化
的な説明をかなりカットしてスペースを作ったのもうなずけます.ア
メリカ人にとっては自明のことですから.旧版は日本人のフアンが多
かったのもわかります.

 おしゃべりはこのへんで.おやすみなさい.

 村 田  年
 英語辞書研究会ホームページ:見てやって下さい.
 URL: http://www.f.chiba-u.ac.jp/JACET-LEX.html


45 INET GATE INS00100 98/03/31 09:11
題名:[lex] メールのだぶり

Date: Tue, 31 Mar 1998 09:07:42 +0900
From: kazuo kato <>
Reply-To:
To: lexicographer <>

加藤@岩手医大です.

どういうわけか村田 年先生のメールだけがダブって受信されてしま
います.どうしてでしょうか?


42 INET GATE INR00103 98/03/31 10:40
題名:[lex] contagious/infectiousの語義を教え

Date: Tue, 31 Mar 1998 10:36:10 +0900
From: kazuo kato <>
Reply-To:
To:

加藤@岩手医大です.

医(歯)学生相手の英語教育をしているので,この問題には前から関心
がありました.学生は英和辞典を見て infectious disease や
infection を「伝染(病)」と訳すことがよくあるので,それを「感染
(症)」と訂正するのに汲々としておりました.(私自身は MD でも,
基礎医学の PhD でもありません.)

konno takashi wrote:
>
 TIMEのコレラに関する記事の中に
> (The disease, while not contagious, can be transmitted by food handling,
> and in up to 50% of cases, kills if left untreated.)
> という分がありましたが、コレラは法廷伝染病なのに not contagious と書かれているの
> が、どうにも理解できませんでした。
>
> contagiousの語義はこの分類での接触感染を意味するのでしょうか?それとも直接感染全
> 体を指すのでしょうか?またinfectiousはこの分類の間接感染ととらえて良いのでしょう
> か?それともこの分類とは関係ないのでしょうか?

>  ちなみに問題の英文のほうはコレラは接触感染するものではないが食物を通して経口感
> 染することがある・・・のように理解しました。

私もそのように理解します.英和辞典(大多数の英英辞典も多分そうだ
と思いますが,英和辞典の contagion の語釈には Transmission of
disease by contact with the sick. という情報のほかに,

The term originated long before development of modern ideas
of infectious disease and has since lost much of its
significance, being included under the more inclusive term
"communicable disease." (Stedman's Medical Dictionary, 24th
Edition, 1982)

という情報が欠如しているため,contagion も infection も同じ
時間軸の中でとらえられてしまう可能性が出てきます.日本の医学生
対象の教科書や医学用語辞典では contagion は医学用語あつかいを
されていないようです.現代の概念の感染症を contagion という用語
で切ろうということ自体が無理なのだというのが,小1時間ほど若い
医師の解説を聞いた印象でした.つまり,英和辞典には専門用語と
しての infection の説明と contagion の歴史的,比喩的な意味の
解説までが混在しているので,金野様のようにつきつめて考えると
かえってわかりにくくなるということのようです.

なお,contagion という概念が西洋医学に登場したのはかなり古い
ことで,John H. Talbott, M.D.,(1970), A Biographical History
of Medicine: Excerpts and Essays on the Men and Their Work
(New York/London: Grune & Stratton) によると17世紀のようです.

また,contagion と contact は同根ですね. (加藤 和男)


40 INET GATE INR00104 98/03/31 19:23
題名:[lex] メールのだぶり

Date: Tue, 31 Mar 1998 19:18:00 +0900
From: 村田 年 <>
Reply-To:
To:

村田 年です.
どうしてメールがだぶるのでしょうか.申し訳ありません.
受信状況が悪く,井上先生からリストへの登録をはずされて
その後復活したのですが,メールが入らず,井上先生に頼んで
入れていただいたのですが,二重登録になっているのでしょうか.

 書き込みは常に lexicographer@ でやっているのですが.
井上先生からもお尋ねがあったのですが,私の方で二重に書き込みを
しているわけではないので,どうすればいいのかわからず,ご迷惑を
おかけしています.


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