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1998年5月 (11日〜20日)


2 INET GATE 1998/05/11 12:49
題名:[lex] 辞書学ML一時停止のお知らせ

Date: Mon, 11 May 1998 12:23:42 +0900 (JST)
From: Nagayuki Inoue <>
Reply-To:
To: Lexicographer Mailing List <>

各位

島根大学学内のネットワーク保守のため,下記の日時に辞書学MLが一時的に使え
なくなります。よろしくご協力のほどお願い申し上げます。

(日時)1998年5月14日(木)13:30〜17:00

メンテ係: 井上永幸(島根大学)

Nagayuki Inoue <><>==
<> Shimane University, Japan==============


1 INET GATE 1998/05/11 12:51
題名:[lex] 日本と外国の文化の違い

Date: Mon, 11 May 1998 12:22:25 +0900
From: (SATO Hiroaki)
Reply-To:
To:

At 3:36 PM 98.5.10 +0900, Matumoto Yosihito wrote:
>・・・, and people visit cemeteries to place flowers on the graves of their
>loved ones. の "graves" です。
>
>on the graves ですから、具体的な場所に花を供えているのではないか、と思いま
>す。日本のような墓石があって、その前に飾る形式でないことはわかるのですが、で
>は具体的に、となると困ってしまいました。私のように不勉強な者でも、「これが外
>国の献花だ」と生徒たちに言える良い解決方法はないでしょうか。

結婚式,葬式,墓参りの場面。映像があればどんな英語を使い,どんな身振りをする
のかが分かります。英語圏滞在中に写真や8mmビデオで録画しておくと,あとあとの
英語の授業で活用できそうですが,結婚式以外で日本からやってきた<部外者>がラ
イトを当てて撮影するのはヒンシュクを買うはずです。この場合は,映画の映像を使
うのが便利です。

映画を検索すると,墓石に花を"place"する場面が2つありました。乱暴な置き方と,
丁寧な置き方が映画で確認できました。映画のストーリからどの宗教・宗派なのかも,
だいたい想像できます。

#1/1 1969 M15-2 JC 00:20:24
■Midnight Cowboy// 真夜中のカーボーイ
[ 隣の墓から花を失敬して, 自分の父親(イタリア系のアメリカ人だから,多分,
カトリック)の墓に無造作に花を放り投げる]
ダスティン・ホフマン:HE AIN'T YOUR GODDAMN FATHER.
$ " X. " THAT'S WHAT IT OUGHT TO SAY ON THAT @HEADSTONE.
ONE BIG LOUSY " X. " JUST LIKE OUR DUMP--
_______________________________________________________

#1/1 1989 D08-1 PG 00:37:12
■Driving Miss Daisy// ドライビング・ミス・デイジー
[自分の夫(ユダヤ系アメリカ人だから,多分,ユダヤ教徒)の墓に丁寧に花を植え
ている]
BOOLIE WILL HAVE ME IN PERPETUAL CARE BEFORE I'M COLD.
SHOOT, MISS DAISY, YOU OUGHT TO GO ON AWAY FROM HERE.
HOKE.
YES'M?
$ @PUT THAT AZALEA ON LEO BAUER'S GRAVE.
_______________________________________________________

死者を埋葬するの場面では,棺の蓋の上に花が飾られていました。参列者が土(砂?)
をかける場面も,映画「第三の男」の最後で確認できます。
___________________
佐藤弘明
専修大学商学部


2 INET GATE 1998/05/11 16:12
題名:[lex] 新刊辞書速報: NTC's AELD

Date: Mon, 11 May 1998 15:49:00 +0900
From: 井上 永幸 <>
Reply-To:
To:

井上永幸(島根大学)です。注文しておりました下記の辞書が来ましたの
で,概略をお知らせします。

NTC's American English Learner's Dictionary: The Essential
Vocabulary of American Language and Culture. 1998.
Editor-in-Chief: R.A. Spears. Lincolnwood, Ill.: NTC Publishing
Group.

・72,000 example sentences--all in plain English
・35,000 senses, including compounds and idioms
・22,000 main entries, with the part of speech for each sense
・International Phonetic Alphabet pronunciation for each entry
・Idioms and Phrases Index
・Gazetteer of 450 placenames, with pronunciations and maps

以下Intoductionより抜粋

... The word list is derived from a corpus of material used at
the intermediate and advanced levels of English language
education. It is a simplified dictionary in that it focuses on
basic vocabulary presented in a clear and uncomplicated format
and using a minimum of codes, abbreviations, and typographical
devices.

〔途中略〕

The dictionary was developed solely for the use of learners and
was not derived from any existing dictionary. The word list,
definitions, and examples were composed and edited to aid in
advancing the use and understanding of the English language as it
is spoken and written in the United Sates.

最後に印象ですが,物理的サイズがCOBUILD2よりやや大きく,重い辞書
ですね〔ちなみに私のはペーパーバック版〕。用例も豊富で,これほど
基本語に詳しい米語の辞書はなかったと思います。ちなみに,hisの項目
は33行あります。(・o・)

15:30 (月) 05/11/98 井上永幸 <>
[辞書学MLログを公開中: http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html]
--辞書学ML脱会は宛てにsignoff lexと送る--


3 INET GATE 1998/05/11 18:59
題名:[lex] as tall as

Date: Mon, 11 May 1998 18:19:21 +0900
From: "NISHIMURA Tadamasa" <>
Reply-To:
To: <>

佐賀の松本先生、

> He is as tall as his father.
>
> の訳が、「彼はお父さんと同じくらい背が高い」
>
>としかならずに、矯正に苦労しました。

この問題については、次の論文があります.
平政子(1985)「as tall as と not as tall as について」『英語教育』
(大修館書店)1985年12月号、pp. 67-69

Rusiecki (1985) の論文における Mr. Smith is as tall as Mr. Brown.
という文に、59名がどう反応したか、というところも紹介して、大変
おもしろいものです.

西村 公正


2 INET GATE 1998/05/11 20:55
題名:[lex] fall a victim to の用例 ( 再)

Date: Mon, 11 May 1998 20:32:02 +0900
From: "kawakami yusaku" <>
Reply-To:
To:

馬本 勉様
 fall a victim to 〜 の用例有り難うございました。
 コーパスというのはすごいですね。ほしい用例がたちどころに見つかるのですね。
 ところで小学館 Random House 第2版には fall a victim to 〜 ばかりか fall
the victim
to 〜 まで載っていました。見出しに fall (a [or the]) victim to と出される
と、頻度から見て
どの表現が一般的で、どの表現が少ないかの区別がつきません。おそらく fall the
victim to 〜 は数少ない例でしょう。
 CODの表記の歴史的な解明はとても参考になりました。


3 INET GATE 1998/05/12 08:58
題名:[lex] fall a victim to の用例 (再)

Date: Tue, 12 May 1998 08:44:00 +0900
From: 井上 永幸 <>
Reply-To:
To:

kawakami 様:
書き込みありがとうございます。

> ところで小学館 Random House 第2版には fall a victim to 〜 ばかりか fall
>the victim
>to 〜 まで載っていました。見出しに fall (a [or the]) victim to と出される
>と、頻度から見て
>どの表現が一般的で、どの表現が少ないかの区別がつきません。おそらく fall the
>victim to 〜 は数少ない例でしょう。

確かにおっしゃるとおりですね。EFL辞典という立場からは,単に( )
や[ ]で済ませるのではなく,頻度によって

fall victim to ... (☆fall a [the] victim toは((まれ)))

とか,

fall victim to ... (☆時にfall a [the] victim toで)

といった示し方がされている方が好ましいと思います。

08:21 (火) 05/12/98 井上永幸 <>
[辞書学MLログを公開中: http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html]
--辞書学ML脱会は宛てにsignoff lexと送る--


3 INET GATE 1998/05/12 08:58
題名:[lex] fall a victim to の用例 (再)

Date: Tue, 12 May 1998 08:44:00 +0900
From: 井上 永幸 <>
Reply-To:
To:

kawakami 様:

書き込みありがとうございます。

> ところで小学館 Random House 第2版には fall a victim to 〜 ばかりか fall
>the victim
>to 〜 まで載っていました。見出しに fall (a [or the]) victim to と出される
>と、頻度から見て
>どの表現が一般的で、どの表現が少ないかの区別がつきません。おそらく fall the
>victim to 〜 は数少ない例でしょう。

確かにおっしゃるとおりですね。EFL辞典という立場からは,単に( )
や[ ]で済ませるのではなく,頻度によって

fall victim to ... (☆fall a [the] victim toは((まれ)))

とか,

fall victim to ... (☆時にfall a [the] victim toで)

といった示し方がされている方が好ましいと思います。

08:21 (火) 05/12/98 井上永幸 <>
[辞書学MLログを公開中: http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html]
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2 INET GATE 1998/05/12 08:59
題名:[lex] MLでの引用の仕方について

Date: Tue, 12 May 1998 08:44:00 +0900
From: 井上 永幸 <>
Reply-To:
To:

MLでの引用の仕方についてご意見をいただきました。よい機会ですので,
ガイドラインというわけではありませんが,このMLの目安のようなもの
とお考えください。

実はこの引用部分の問題は,このメールのフッター部分でも示しており
ますログを編集するときにも問題となりました。他のメールに紛れて飛
び飛びに入ってくる[lex]メールを読むときは,確かに文脈把握のために
この引用はありがたいのですが,[lex]メールだけを順番に列べたログで
はファイルサイズが大きくなるばかりでなく,読みにくくなるという状
況も少なくありません。したがって,ログ編集の段階で,メールソフト
によって自動的に添付されたと思われる全文引用は,私の判断で削除さ
せていただいております。

さて,実際に配信されてまいりますMLの場合ですが,初出の話題から時
間がかなり経ってしまったものについては,やはり皆さんの記憶からメ
ールの内容が遠のいている可能性があると思われますから,ある程度の
長さの引用はやむを得ないかもしれません。一方,時間的な隔たりがあ
まりない場合は,必要最小限の引用でお願いできれば,私のログ編集も
楽になりますので(^_^;),ご協力いただければありがたく存じます。

いろいろと失礼を申し上げましたが,今後とも宜しくお願い申し上げま
す。<m()m>

08:27 (火) 05/12/98 井上永幸 <>
[辞書学MLログを公開中: http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html]
--辞書学ML脱会は宛てにsignoff lexと送る--


1 INET GATE 1998/05/12 09:37
題名:[lex] RE:日本と外国の文化の違い

Date: Tue, 12 May 1998 09:16:45 +0900
From: "Matumoto Yosihito" <>
Reply-To:
To: <>

佐藤先生、レスありがとうございます。佐賀の松本@MCSです。

やはり「学問には捷径(royal road)なし」、ですね。

考えてみたら、dinner についてアメリカ人に聞いたとき、「私が知っている限りで
は dinner は夜しか食べない」と言われ、文化については耳学問ではなく、実際当
たってみるしかない、と思ったことを忽然と思い出しました。
(そのアメリカ人は、「dinner と supper の違いは日本語で言うところの「夕御
飯」と「晩御飯」の違いぐらいで、自分の家で食べるとき dinner 、外食するとき
supper を使うときがあるけど、使い分けているわけではなく、 must と have to ほ
どの違いはない」、と言っていました。いつの日か確かめにいこうと思っていま
す。)

映画だと学生にも気軽に奨められます。情報ありがとうございました。


1 INET GATE 1998/05/12 11:34
題名:[lex] 辞書学ML項目別ログ

Date: Tue, 12 May 1998 11:14:00 +0900
From: 井上 永幸 <>
Reply-To:
To:

各位

日頃は辞書学MLをご利用いただき,ありがとうございます。

さて,現在辞書学MLでは時系列的に整理したログを公開しておりますが,
項目別のログを加えることを検討しております。これまでの議論をいっ
そう見通しのよいものにして,ご利用いただいている方々の利便性をは
かれればと存じます。引用その他に関する条件に関しましては,これま
でのログと変わりはありません。

つきましては,当MLに登録いただいております方々のご賛意をいただけ
ればと存じますが,MLの性質上,ご異議のある方のみご意見をお書き込
みいただければと存じます。なお,整理の都合上,5月14日(木)までこの
件に関してご意見をうかがい〔差し障りがある場合は,私宛メールでも
けっこうです〕,特にご異議がない場合は,ご賛意を得たものとして扱
わせていただければと存じます。宜しくご理解・ご協力のほどお願い申
し上げます。<m()m>

10:56 (火) 05/12/98 井上永幸 <>
[辞書学MLログを公開中: http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html]
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1 INET GATE 1998/05/12 23:47
題名:[lex] Prof. Murata's COBUILD story

Date: Tue, 12 May 1998 23:03:00 +0900
From: 磐崎 弘貞 <>
Reply-To:
To:

lexの皆様、

今度の月刊『言語』6月号に「COUBILD小史」を載せました。ご笑覧下さい。
私がバーミンガムにいた時に長期インタビューをし、それに活字や電子
メールの情報を加えたものです。

さて、そのインタビューをしていた頃、あれは確か茨城高専の高橋先生
だったか(?)、千葉大の村田年先生がバーミンガム滞在時の経験を基に
COBUILDの人たちのプロフィールをレポートしたニューズレターを発行
していると聞きました。今回、すっかり忘れていたのですが、先日、
それをふと思い出し、村田先生に頼み込んで、1つ送ってもらいました。

面白い!!

それも、第9号までも出ているらしい!

そこで、私だけが残りを送っていただくのももったいなく、ぜひlexに連載
して下さいとお願いしました。村田先生は謙遜して、まだちょっと腰が
重いようです。そこで、本メーリングリストでCOBUILDにご関心ある方々も
ぜひ、私のお願いに賛同して下さい。

ということで、村田先生、ぜひ、ぜひ、9号全部を順次公開して下さい。

よろしくお願いいたします。m(_ _)m

磐崎弘貞@筑波大学外国語センター


2 INET GATE 1998/05/13 00:22
題名:[lex] Prof. Murata's COBUILD story

Date: Tue, 12 May 1998 23:56:25 +0900
From: 投野由紀夫<東京学芸大学> <>
Reply-To:
To:

投野@元学芸大です。

On Tue, 12 May 1998 23:03:00 +0900
磐崎 弘貞 <> wrote:

> そこで、私だけが残りを送っていただくのももったいなく、ぜひlexに連載
> して下さいとお願いしました。村田先生は謙遜して、まだちょっと腰が
> 重いようです。そこで、本メーリングリストでCOBUILDにご関心ある方々も
> ぜひ、私のお願いに賛同して下さい。
>
> ということで、村田先生、ぜひ、ぜひ、9号全部を順次公開して下さい。

これは是非私も読んでみたいので、村田先生にお骨折りいただきたいです。

よろしく。

*****************
投野由紀夫(Yukio TONO)
ランカスター大学博士課程留学予定
  (当分の間)
*****************


1 INET GATE 1998/05/13 00:35
題名:[lex] Prof. Murata's COBUILD story

Date: Wed, 13 May 1998 00:07:00 +0900
From: 井上 永幸 <>
Reply-To:
To:

磐崎 弘貞 先生:

書き込みをありがとうございます。

>そこで、私だけが残りを送っていただくのももったいなく、ぜひlexに連載
>して下さいとお願いしました。村田先生は謙遜して、まだちょっと腰が
>重いようです。そこで、本メーリングリストでCOBUILDにご関心ある方々も
>ぜひ、私のお願いに賛同して下さい。
>
>ということで、村田先生、ぜひ、ぜひ、9号全部を順次公開して下さい。

公開嘆願に一票。<m()m>

00:05 (水) 05/13/98 井上永幸 <>
[辞書学MLログを公開中: http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html]
--辞書学ML脱会は宛てにsignoff lexと送る--


5 INET GATE 1998/05/13 10:50
題名:[lex] Prof. Murata's COBUILD story

Date: Wed, 13 May 1998 10:25:12 +0900
From: "Matumoto Yosihito" <>
Reply-To:
To: <>

佐賀の松本@MCSです。

磐崎先生
>面白い!!
>
>それも、第9号までも出ているらしい!

村田先生、私もぜひ読んでみたいです!


3 INET GATE 1998/05/13 12:04
題名:[lex] 英語教師のおかしな日本語 (royal r

Date: Wed, 13 May 1998 11:35:03 +0900
From: kazuo kato <>
Reply-To:
To:

西村先生:

加藤@岩手医大です.
>
> 英語の語法にはやかましいのに、己の国語にはとんと
> 無頓着、ということを指摘したのが、高嶋俊男『お言葉
> ですが…「それはさておき」の巻』(文藝春秋社、1998).
> 本書 p.232「There is no royal road to learning.
> をだれが「学問に王道なし」と訳したのか知らない
> が、これはひどい訳だ。
>
> なるほど、「王道」には「徳をもって理想的に治める
> 政治」の意味しかないですね.日本近代史では「王道楽
> 土」という語も出てきます.

私はこの本を読んでいないのですが,「王道」も claque または loan trans-
lation として悪くはないと思います.本来の中国語(の意味)にはなくても日本
で発明されて中国へ逆輸出された,いわゆる和製漢語の例は沢山ありますし,ま
た,たまたま逆輸出されなくても,日本では慣用化している漢語は沢山あります.
たとえば,相浦 コウ(「日」の下に「木」です)(1974)「日中対照語彙論」
(「文化庁(編)「日本語と日本語教育―語彙編―」, pp.241-246)によると,
「文化」は古代中国語では「文治教化」(刑罰や威力を用いないで人民を教化する
こと)の意味だったそうですが,それを culture の訳語として日本が使い始めた
とのことですし,「鉛筆」はもともと「鉛粉を用いて書く毛筆」のことだったそ
うですが,日本で pencil の訳語として使用し,それが中国に逆輸出されたという
ことです.その他「哲学,科学,歴史,目的,抽象」などは和製の新造語でした.
しかし,「老師」は中国語では「(学校の)先生」の意味なので,外国語として
日本語を学習する中国人が誤解することがよくあるようです.
ですから,royal road の訳語として日本で「王道」を用いたとしても,非難され
ることは何もないのでないかと,私は思います.勤務先に英中辞典がないので確か
められませんが,ひょっとすると royal road の訳として「王道」を使っているもの
があるかもしれませんね.
漢字の用法が全部本家の中国の通りでなければ,「間違い」であるとするのは少し
問題ではないでしょうか. (加藤 和男)


1 INET GATE 1998/05/13 15:18
題名:[lex] 英語教師のおかしな日本語 (royalro

Date: Wed, 13 May 1998 14:54:08 +0900
From: narisawa yoshio <>
Reply-To:
To:

東北学院大学、成沢です。

> 西村先生:
>
> 加藤@岩手医大です.
>
> 私はこの本を読んでいないのですが,「王道」も claque または loan trans-
> lation として悪くはないと思います.
> 勤務先に英中辞典がないので確かめられませんが,ひょっとすると
> royal road の訳として「王道」を使っているものがあるかもしれませんね.
> 漢字の用法が全部本家の中国の通りでなければ,「間違い」であるとするのは
> 少し問題ではないでしょうか.

Shogakuan Bookshelf の和英辞典に次のように記載されています。

T〔真の王者の政治〕the rule of virtue; righteous government

U 〔楽な道〕
学問に王道なし There's no royal road to learning.

Progressive Japanese-English Dictionary, Second edition Shogakukan 1993.プ
ログレッシブ和英中辞典 第2版 小学館 1993.

「間違い」であるとするのは 問題ではないでしょうか.

*************************************************
narisawa yoshio
Tohoku Gakuin University

*************************************************


1 INET GATE 1998/05/13 17:22
題名:[lex] 英語教師のおかしな日本語 ( royal

Date: Wed, 13 May 1998 16:53:19 +0900
From: Minoru MURATA <>
Reply-To:
To:

村田年です.いろいろと教えていただきました.

royal road 「王道」の問題

 誤訳が定着することはよくあることのようですが,「ボストン茶会事件」ほどの誤訳
でしたら訂正の必要があろうかと思います.このぐらいの場合でしたら「王道」が定着
していれば新たな意味として認知されるのでしょうが,定着しているかどうか?

 1.「学問に王道なし」が実際の日本語の中でどのぐらい使われているか?
 2.「学問に王道なし」以外のこの意味の「王道」のバリエーションが用例としてあ
  るかどうか?

  どなたか国立国語研究所かどこかのコーパスに問い合わせてはくださいませんで
 しょうか.
  ものぐさをして申し訳ございません.


1 INET GATE 1998/05/13 18:40
題名:[lex] 英語教師のおかしな日本語 (royalr

Date: Wed, 13 May 1998 18:35:09 +0900
From: (SATO Hiroaki)
Reply-To:
To:

「http://www.jp.opentext.com/」でインターネットのホームページを検索した結果
です。

At 4:53 PM 98.5.13 +0900, Minoru MURATA wrote:
> 1.「学問に王道なし」が実際の日本語の中でどのぐらい使われているか?
13件(Documents 1 to 10 of 13 documents containing: 王道
And 学問)

> 2.「学問に王道なし」以外のこの意味の「王道」のバリエーションが用例としてあ
>  るかどうか?
意味別の検索はできないので,とりあえず文字列での検索結果をお知らせします。

670件(Documents 1 to 10 of 670 documents containing: 王道
But Not 学問)
【用例】
1.pソコンの王道 (score: 20, size: 2.0k)
From: http://www.sopia.or.jp/maro/

2.F良和王道の狗の大家が永年に渡る沈黙を打ち破
り、熱筆をふるう。「この国の.. (score: 20,
size: 1.4k)
From:
http://www.kodansha.co.jp/mismaga/oudourensai.htm

3.*** [氣の王道] (score: 17, size: 1.1k)
From:
http://www.php.co.jp/shinkan/ISBN4-569-55230-7.html

4.Vステム開発の王道を極める (score: 14, size: 5.0k)
From: http://www.pascal.co.jp/~k-kazuma/SD/SD.html

5.3Dの知恵袋 Strata Studio Pro 1.75J 98
INFOWAVE Vol.1-Vol.3 DTPオペレータへの王
道... (score: 13, size: 1.2k)
From:
http://www.vcnet.fukui.fukui.jp/~aratani/Ama_1300/computer.html

6.zームページ (score: 12, size: 4.5k)
From:
http://www.kodansha.co.jp/mismaga/oudouno_inu_fude.htm
本邦初公開!安彦良和先生・魔法の筆さばき『王道の
狗』担当・Y本への指令最近、キミは編集部最年少
の24歳にもかかわらず彼女をつくり「いやぁー今で

7.hとんこつ”、”激辛”にきた人に朗報!大阪の
中華そばの王道を行く店が登場!黒... (score: 11,
size: 2.8k)
From: http://www.le-merche.co.jp/ouban.html
   中 華 そ ば   ”とんこつ”、”激辛”
にきた人に朗報!大阪の中華そばの王道を行く店が
登場!黒豚、地鶏をミンチから自家製のギョーザ(ニ

8.adult | Macintosh | Windows | Video-CD |
Adult |王道勇者 /アリスソフト... (score: 11,
size: 1.2k)
From: http://www.computerwave.co.jp/weekly/adult.htm
| Macintosh | Windows | Video-CD | Adult |王道
勇者 /アリスソフト放課後ファンくらぶ /リビドー

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ホームページでは,学問以外で「王道」が多く使われているようです。
___________________
佐藤弘明

専修大学商学部


2 INET GATE 1998/05/13 18:48
題名:[lex] 英語教師のおかしな日本語 ( roya

Date: Wed, 13 May 1998 18:27:50 +0900
From: kazuo kato <>
Reply-To:
To:

村田先生:

加藤@岩手医大です.

> royal road 「王道」の問題
>
>  誤訳が定着することはよくあることのようですが,「ボストン茶会事件」ほどの誤訳> でしたら訂正の必要があろうかと思います.このぐらいの場合でしたら「王道」が定着> していれば新たな意味として認知されるのでしょうが,定着しているかどうか?
>
>  1.「学問に王道なし」が実際の日本語の中でどのぐらい使われているか?
>  2.「学問に王道なし」以外のこの意味の「王道」のバリエーションが用例としトあ
>   るかどうか?
>
>   どなたか国立国語研究所かどこかのコーパスに問い合わせてはくださいませんで
>  しょうか.

”Yahoo Japan”には「パソコンの王道」(パソコンについて「上達の早道」
や仕組みの説明,特集記事等.)や,「チャットの王道」「複勝は王道」と
いうホームページがありました.


1 INET GATE 1998/05/14 17:33
題名:[lex] 英語教師のおかしな日本語 ( roya

Date: Thu, 14 May 1998 16:47:56 +0900
From: kazuo kato <>
Reply-To:
To:

加藤@岩手医大です.

> royal road 「王道」の問題

> ”Yahoo Japan”には「パソコンの王道」(パソコンについて「上達の早道」
> や仕組みの説明,特集記事等.)や,「チャットの王道」「複勝は王道」と
> いうホームページがありました.

"goo" という検索エンジンに「N 氏語録」というのがあり,そのなかに「事
を成就させるにには王道と覇道がある.私は王道を行く.」というのを見まし
た.これは国語辞典で第1義としている「王道」だと思います.
しかし,その他は「ビジュアルの王道」「マスコミ就職の王道」「グラフィ
ックのギミックだけに頼らない王道を行くスタイル」「インターネットの王道
を極めるのだ!!」というようなのがほとんどです.
現代日本語では本来の意味の「王道」はまれなのではないでしょうか?それ
に,気になっていることがもう一つあって,それは royal road を「王道」と
訳した人が英語教師だという証拠があるのかということです.英語教師以外に
英語使いは沢山いますから,かりに「王道」が誤訳だったとしても,もし訳し
た人が英語教師でなかったら,この訳は英語教師の無知のせいではないことに
なります.
気の小さい良心的な英語教師が scapegoat(s) にされることがよくあるよう
な気がするので,蛇足を付け加えました.


2 INET GATE 1998/05/14 18:25
題名:[lex] Prof. Murata's COBUILD story

Date: Thu, 14 May 1998 15:42:00 +0900
From: Minoru MURATA <>
Reply-To:
To:

村田です.

  コービルド物語について

磐崎 弘貞<> さんは書きました:
> lexの皆様、

「おだてりゃ豚も木に登る」例えではありませんが,ほめられるとうれしいものです.
(学生の英語もできるだけ声に出してほめるようにしています!)
たくさんあるメールに混じって勉強のじゃまをすることになりますが,コービルドの全
盛期のお話もちょびっと意味があるでしょうか.登場人物は日本人もすべて実名です.
ご迷惑をかけることがなければいいですが.

滞在が6週間で短く,古くて(1992年),ヒアリング力が弱くて誤解しているところも
あり,そのまま信用しないで下さい.

学生たちがあまり読みたがらなかったものですから,30回ぐらい続けるつもりが9
回で終わりです.ご笑覧下さい.

磐崎先生の『月刊言語』の文章は正確で,記述に深みがあり,たいへん興味深いもので
す!


1 INET GATE 1998/05/14 18:25
題名:[lex] 「王道」という日本語

Date: Thu, 14 May 1998 15:14:02 +0900
From: Minoru MURATA <>
Reply-To:
To:

    「王道」という日本語

  加藤和男先生,佐藤弘明先生

用例をいただきましてありがとうございます.
しかし,いずれの用例もホームページのタイトルのせいもあって日本語として定着した用法であるかどうか,判断に迷います.またあまりいい日本語ではないのではとの印象も抱きます.(年寄りの偏見かも?)
「中華そばの王道」などは「近道」という意味もあるでしょうが,それより「中心の,正統な道」という意味が強いかも知れません.「パソコンの王道」でも「正統な」といった意味をこめているのであって,単に「近道」だけではなさそうです.

否定文の中ではなく,肯定文で積極的に使われているわけですが,普通のエッセイなどにも用例があるのでしょうね.

 ここで脱線しますが,「王道」には具体的な「道,道路」という意味は最初からないのですが,royal road の方は最初から道路そのものを指していたようです.BNC の簡易検
索では21例が出てきて,その大部分は道路名です.(11例)ほかに道路を指す例が4例あります.精神分析で用いられているのが4例(the royal road to understand
mentalityなど.)

「王道」に当たる例は2例で,あまり active な語義ではないようです.
There is no royal road to teaching, and teachers are rightly highly
suspicious of IQ experts who tell them there is.
It is an old story; but there is no royal road to learning (or teaching).

次の用例は royal road の意味・用法の展開を示していて興味深いものです.
「王の通る道」→「王の軍隊の道」→「(王の繁栄のための)貿易・通商の道」

In England any road leading to a port or a market was a royal road, and this indicates that royal interest was not confined to providing roads for the
movement and provision of royal armies, but was concerned with trade and
markets.


1 INET GATE 1998/05/14 23:24
題名:[lex] バーミンガム物語1

Date: Thu, 14 May 1998 23:05:00 +0900
From: 村田 年 <>
Reply-To:
To:

       バーミンガム学派の人々(1)

村 田   年
アン と ソラヤ
 コービルド英語研究所におけるわたしの研究室の右隣りはアンとソラヤの部屋だ。最
初は所長のギネスの部屋だと思っていた。というのは、ギネスがその部屋に入るところ
を見たことが1、2度あったからだ。そこからはときどき速いタイプのキーの音が聞こ
えてきた。コービルドは忙しくて所長でも資料の打ち込みをしているんだな、と想像し
ていた。ギネスには初めてこの研究所に来た日に挨拶をした。「あなたとはそのうちゆ
っくりお話しましょう。」と言ってくれた。
 金曜日だった。週末で何か楽しいことが待っているのであろう。みんなの帰りが少し
早くなる。私の場合は研究のほかには何もすることがなかった。これからの6週間の計
画をどう立てて、間もなく旅行から帰ってくる、私のここでの担当教官であるアントワ
ネットにどう説明したらいいだろうか、また、アントワネットの論文も読んでおかない
といけない、などと考えていた。レディングとオックスフォードに来ている友人からは
週末はロンドンで遊ぼうという誘いも来ていた。
6時を回ったが、まだ速いキーの音は続いている。もう大半の人は帰ってしまってい
る。ちょっとぐらいギネスも手を休めてもいいだろう。日本からおみやげに風呂敷を持
ってきているし、と思って
行ってみることにした。ドアーは開いていた。どんずまりの部屋で鍵の手になっている
ので中は見えない。
 ノックをすると返事があったので、中に入ってみると若い女性がいた。
 「フォックスさんの部屋かと思ったもので失礼しました」
 「フォックスさん?」
 「所長のギネス・フォックスさんですけど」
 「あー、ギネスの部屋でしたら2階です」
 ここバーミンガムでは教官と大学院生とはファースト・ネームで呼び合っているので
、ファミリー・ネームは知らなかったりすることがよくある。
「隣りの部屋に月曜から入っているミノル・ムラタです」
 「ソーリー?」
 その言葉はやや高い音できんきんと響いた。
 「ミ・ノー・ル。エム・アイ・エヌ・オウ・アー・ユー」
 「アンです」
 と言うと彼女は前へ出てきて握手を求めた。きれいな人だった。少女漫画から抜け出
してきたかのような、かれんな美しさがあった。
 少しおしゃべりしてもよさそうな雰囲気だった。日本からきたと言うと、日本のどこ
からかと聞かれた。日本に対する関心が高いせいか、たいていの場合、日本だと言うだ
けではすまない。千葉の説明には成田エア・ポートがあるので本当に助かる。スペイン
のバルセロナの少し奥の方からきて、いま博士論文を書いている。毎日少しは書いてい
るんだけど、いつになったら終わるのかしら、と彼女は言った。日本からでは文化が全
然違うからたいへんですね、などと言ってもくれた。もたもたと、やっと話している私
などとは違って彼女は自由に英語を操っているふうであった。
 それからは下のロビーで、廊下で、食堂でアンと会った。彼女はいつもかんだかい、
頭の上から聞こえて来るような声で、「ハロー」と呼びかける。同じ日に何度会っても
「ハロー」である。バーミンガムではみんなこの様にする。朝初めて会ったときでも「
グッド・モーニング」とか「モーニング」とか言わないで、「ハロー」と高い声で言う
人が多い。
 アンが部屋に来るときはハイヒールでカッカと音をたててやかましくやってくる。よ
く見ると体も相当大きい。カギをがちゃがちゃと開けて、バーンとおもいっきりドアー
を閉める。わたしの部屋がびりびりと鳴る。やかましいこと、と最初は気になったが、
ここではみんながそうしている。いやそうしなければいけないのだ。玄関のドアーを強
く閉めて、さらに閉まったことを確かめるようにという掲示がしてある。何度かコンピ
ュータのマシーン(端末)を盗まれたことがあったからだ。  
アンは部屋に入ると機関銃のようにキーを叩き始める。ときにはただしーんとして何
も聞こえない。しかしいずれにしても長くは続かない。間もなくドアーをやかましく開
けてばたばたと階下へ降りて行く。後でわかったことだが、電話をかけにいくか、オフ
ィスの秘書のクリスにものを頼みにいくのだ。彼女を見ていると、ここでは何ごとも遠
慮することはない、頼んでみることだ、とわかる。
 間もなく彼女に電話がかかってくる。彼女は院生なのだが既に結婚している。電話は
夫からのものと女友達からのと、男性からのとがある。どうしてそんなことがわかるの
かと聞かれると困るが、応えている彼女の声の調子が違うのだ。私はヒアリングの力が
極めて弱いし、隣りの部屋から漏れてくる声なので、内容は全然わからない。
 何人かの男が部屋にアンを訪ねてくる。別にあやしい男が来るわけではない。たいて
いは年輩の院生だが、中にはスタッフもいる。美人の力はすごいものだと思う。みんな
研究の話をしている。アンの博士論文の内容を聞いて、細かく質問したり、意見を言っ
たり、アドヴァイスをしたりしている。アンが結婚していなければよかったのに、など
とわたしに言った男もいた。結婚していたほうが気楽でいいじゃない、と答えておいた

 アンはかんだかい声で、「ソーリー?」を連発している。彼女は少しでもわからない
と聞き返す。それほど英語ができないわけではない。相手の言っている意味をきちんと
確認するのだ。男達は「ソーリー?」と聞き返される度にていねいにもう一度説明する
。あるときなどは10時頃からだれかが来ていて、盛んにしゃべりまくっているので、
彼女の指導教官でも来て、論文についてきびしいことを言っているのかな、と思った。
お昼になったのでわたしは大学のスタッフ・ハウスの食堂まで往復30分ちょっと歩い
て食事に行ってきた。2時頃帰ってきたら、まだ「ソーリー?」が響いていた。どうな
っているんだろう。お昼は抜いてしまったのだろうか。「どうしたの?あれ。指導教官
でも来ているのかな?」とジュンに聞いたら、「いや、ピーターだよ。気があるんだろ
う」とのことだった。
 またアンは来たと思ったら出て行く。今日はもう戻らないかも知れない。その部屋に
はもう一人来る人がいるような気がした。というのは、ときによって足音が相当に違う
のだ。わたしはいつもドアーを全開にして仕事をしているので、3階に上ってくる足音
は少しずつ区別がつくようになっていた。これは左隣りの日本人のジュンがそうしてい
たのでまねたのだ。それに、このように大きな部屋を与えられ、部屋のカギと玄関のカ
ギを5ポンドのデポジットと引き換えに貰ってしまうと、日中であろうが、夜であろう
が、土・日であろうが自由にコンピュータを使えるのは有難いが、英語の勉強にはなら
ない。ドアを閉めたが最後日本の千葉大にいるのと大差がなくなってしまうという危機
感があったからだ。
 それはソラヤだった。ソラヤはやや小柄なので足音はアンのように大きくはない。し
かしドアは同じようにバターンと閉める。閉めるのが大好きですぐに出るときでもバタ
ーンとやる。ソラヤも院生で博士論文に挑戦している。ヴェネズエラから来ていて、な
んとしても早く博士号を取って、国に帰り、大学の教師になりたいのだそうだ。日本で
は Ph D を持っていなくても大学の教師になれる、特に英語・英文学の場合はもってい
ない人のほうが多いと言うと、そんなのおかしい、おかしいですよ、と言っていた。
 ソラヤもあまり長くは部屋にいない。このような若い人達と比べると私など、戦後の
食糧難を生き抜いた人間はどこかが違っていた。1日25ポンド(6,000円)払ってい
るんだという考えが働くのかも知れない。朝は、最初は早起きしてしまって8時半には
出勤していたが、慣れてからは9時から、夕方の6時半まで、ときどきは7時過ぎまで
、マシーンで打ち出したコロケーションの頻度数を大きな模造紙に書き出しては一覧表
を作っていた。その模造紙だってコピー室からコピーミスのA3の用紙を貰ってきてつ
なぎ合わせたものだ。(どういうわけかB4とB5の用紙にはついにお目にかかること
がなかった)学寮に戻って夕飯を作りながらそんな話を学生たちにすると、どうしてそ
んなつまらないことをとあきれた顔をされる。
あるときソラヤが土曜日に来ていた。めずらしいことがあるものだ、と思っていたら
、なにやらわめきながら私の部屋に飛び込んで来た。男にでも襲われたのかと思ったら
、鍵束を部屋に入れたまま閉めちゃったとのこと。確か時間外出勤者名簿にサインをし
に行ったときギネスの名前があったな、と思い出して、ギネスに相談しようと2人で行
ってみたら既に帰った後だった。研究所中回ってみたが、シェイクスピアの人が1人い
るだけだった。大学警備部
(University Security)に電話しようということになり、彼女が電話するとすぐにパ

カーのようなクルマで飛んできてくれた。持って来た30個ほどのキーのどれもが合わ
ず、インポッシブルを連発して警備員が帰ろうとする。彼女は泣き顔になっている。「
あなた、オフィスを開けるカギをもってんだろう。私の場合もスペアキーがあったから
、これもあるんじゃないかな」と言ったら、カギを捜してオフィスを開けてくれた。や
っとスペアキーを見つけて一件落着。大騒ぎして開けてやったのに、ソラヤは疲れたか
ら帰ると言って、すぐに帰ってしまった。
 ソラヤに貸しができたので、ひとつお願いがあるのだが、と言って、部屋を出るとき
は窓を閉めてくれないか、と頼んだ。彼女は
「シュア!」と言ってすぐにオッケーしてくれたが、窓はその後も開いたままだった。
風が少しあると大きなドアががたがた言ってうるさいのだが、仕方がない。
 ソラヤはマーチンについて、ディスコース・イントネーションを専攻している。これ
は実際の談話(ディスコース)のイントネー
ションがどうしてそのようになっているのかを追求し、そこに一定の法則を見いださな
ければならない学問で外国人には不可能ではないかと思われるほど難しい分野に違いな
かった。
 マーチンはやせて、すらっと背が高く、静かで、やさしそうで、いつも恥ずかしそう
な笑みをたたえていた。意見を言うときはちょっと顔を赤らめて、一歩下がって言うよ
うな雰囲気があった。日本人より日本人的だとフミオが言っていた。さすがにその発音
はきれいで、これこそ本物のイギリス英語と言えるものであった。バーミンガムなまり
が飛び交うなかで、彼の英語はオアシスのような感じを与えるせいか、日本人学生、特
に女子学生には圧倒的な人気とのことであった。(わたしたち日本人は英語の発音にた
いへんに関心が高いけれども、ヒアリングの力が弱いのはなぜだろう)
 ソラヤは食堂へもいそいそとマーチンについてきて飲物などに気を配っていた。この
ようにマーチンがもてるのは単に発音がきれいで、穏和だ、というだけではない。じつ
に親身になって学生の世話をするからだろう。小柄で、かわいらしい奥さんがまた面倒
味がいい。これはすべて師匠のデイヴィド・ブラジルご夫妻にならってのことかも知れ
ない。デイヴィドはすでに定年で退官しているが、夏休みともなると世界中から、かつ
ての教え子たちが集まってくる。デイヴィドは教え子たちと酒を酌み交わすのではなく
、毎日私設のゼミを開いて、ディスコースのイントネーション分析をしている。
 ソラヤとアンの関係でおもしろいことに気がついた。アンがいるときにはソラヤはい
なくて、ソラヤがいるときにはアンがいないことが多いということだ。どうもソラヤが
アンを避けているのかも知れない。あるとき2人の会話を聞いていて、アンがソラヤに
対するときには言葉がややぞんざいなことに気がついた。どうしてだろうか。そうだ、
ソラヤもスペイン系だ。もしかしたら、同じスペイン系でありながらアンは白人で、ソ
ラヤはダークだからか。あるいはスペイン人と中南米のスペイン系との間では無意識の
うちに優越感、劣等感が働くのだろうか。こんなことをバーミンガムに2年以上もいる
人に話したら、そんなことは思ってもみなかったと言う。


1 INET GATE 1998/05/15 01:22
題名:[lex] 辞書学ML項目別ログのご案内

Date: Fri, 15 May 1998 01:08:00 +0900
From: 井上 永幸 <>
Reply-To:
To:

各位

日頃は辞書学MLをご利用いただきありがとうございます。

さて,先日来ご意見を承ってまいりました「辞書学ML項目別ログ」開設
にご賛同いただきましてありがとうございます。

項目別ログは佐賀の松本祥仁氏(MCS)の編集によるものです。松本氏
のご厚意にこの場を借りてお礼申し上げます。なお,項目別ログは,都
合によりすべての時系列ログを含まない場合があります。ご了承下さい。

項目別ログへは下記のURLよりお入りください。

http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html

それでは引き続き活発な議論が展開されることを願っております。

00:58 (金) 05/15/98 井上永幸 <>
[辞書学MLログを公開中: http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html]
--辞書学ML脱会は宛てにsignoff lexと送る--


1 INET GATE 1998/05/15 08:04
題名:[lex] RE: [lex] royalroad→王道の訳語

Date: Fri, 15 May 1998 07:49:20 +0900
From: "NISHIMURA Tadamasa" <>
Reply-To:
To: <>

加藤先生.

(1) 加藤先生や佐藤先生が探してくださった用例について
村田先生がご自身の解釈をつけていただきました.

加藤先生は、以下のフレーズにおける「王道」にどの
ような意味を読み取られましたか.

「ビジュアルの王道」
「マスコミ就職の王道」
「グラフィ>ックのギミックだけに頼らない王道を行くスタイル」
「インターネットの王道を極めるのだ!!」

(2)
>に,気になっていることがもう一つあって,それは royal road を
>「王道」と訳した人が英語教師だという証拠があるのかというこ
>とです.英語教師以外に英語使いは沢山いますから,かりに
>「王道」が誤訳だったとしても,もし訳した人が英語教師でな
>かったら,この訳は英語教師の無知のせいではないことに
>なります.

たとえ初出例が英語界の人によるものでなくとも、英和・和英
辞書が昭和30年以降(?)ごろから、これに従っているのです
から、やはり(当然、不肖私も含まれて)従った方の無知と言え
ましょう.

(3) calque により「王」と「道」から「王道」にしたということは
よくわかりますが、これは「王道」の日本語の意味(孟子の
原意から、日本では村田先生の解釈にある「正道」という
ような意味)を知っていたら、 royal road = 王道 とはしなかった
のではないか? と思います.

これは少しはずれるかも知れませんが、 down-town の訳の
英和辞典における変遷が面白い (ただし、down-town の何
たるかがおそらくわからなかったのが原因で、royal road とは
その点が違いますが).

(4)
> 気の小さい良心的な英語教師が scapegoat(s) にされること
がよくあるような気がするので, (……)

上の繰り返しになりますが、ともかく「間違いではないか」と
いう指摘があって、英語教師の領域である There is no royal
road to . . . の訳語の問題なので、検討するにやぶさかでない、
所をみせても良いと思います.

(5)英語教師と日本語
つらつら反省するに、英語の教室内ではかなり「不自然な
日本語」をとかく使ってきました(全体論です).

その反面、英語になると(私もこの点は A級戦犯)、やたら
厳しい.
ですから、英語教師は国語が変わっていく方には加担しない、
国語においては規範主義であるべし、という立場で発言した
ものです.

端が英語を間違ったのではないかと思うと、英語教師は指
摘をしてきましたから.

かつて華厳の滝で、
「ホレーショの哲学つひに何等のオーソリテーを價するものぞ。」
を残したら、あとから「ホレーショの哲学」は『ハムレット』の
your philosophy の your の意味を取り間違えたのであろう、
と、青年の意気を、注釈ついでにたしなめたのも(これは、
「考察」であり手柄であったのですが)英語教師であったと
思います.
(このあたり蛇足を、うろ覚えで加えたので、覚え間違いで
あればご容赦ください)

西村 公正


2 INET GATE 1998/05/15 10:45
題名:[lex] RE: [lex] RE: [lex] royalroad→王

Date: Fri, 15 May 1998 10:23:12 +0900
From: "羽鳥 浩太郎" <>
Reply-To:
To: <>

飛び入りですみません。
はじめまして、羽鳥と申します。

以下のお話に関しては、

 渡部昇一『英文法を撫でる』(PHP新書)pp.91-95

にて、そっくりそのままその詳しいところが記されています。
おそらく西村さんもここからとられたのではないでしょうか。
お時間のある方はご覧になってみてください。

| かつて華厳の滝で、
| 「ホレーショの哲学つひに何等のオーソリテーを價するものぞ。」
|を残したら、あとから「ホレーショの哲学」は『ハムレット』の
|your philosophy の your の意味を取り間違えたのであろう、
|と、青年の意気を、注釈ついでにたしなめたのも(これは、
|「考察」であり手柄であったのですが)英語教師であったと
|思います.

羽鳥浩太郎  _/ _/ _/ _/ _/ _/ _/ _/ _/ _/


2 INET GATE 1998/05/15 18:02
題名:[lex] RE: [lex]royalroad→王道の訳語

Date: Fri, 15 May 1998 17:23:38 +0900
From: kazuo kato <>
Reply-To:
To:

西村先生:

加藤@岩手医大です.
>
> (1)以下のフレーズにおける「王道」にどの
> ような意味を読み取られましたか.
>
> 「ビジュアルの王道」
> 「マスコミ就職の王道」
> 「グラフィ>ックのギミックだけに頼らない王道を行くスタイル」
> 「インターネットの王道を極めるのだ!!」
>
3番目はよくわかりませんが,簡単に言うと「最善の道」ぐらいかなと思いま
す.

(2) たとえ初出例が英語界の人によるものでなくとも、英和・和英
> 辞書が昭和30年以降(?)ごろから、これに従っているのです
> から、やはり(当然、不肖私も含まれて)従った方の無知と言え
> ましょう.

「覇道」の対語としての「王道」としてしかこの語を使えないという立場を取
ればそういうことになるかもしれません.しかし,前にふれた「文化」や「鉛
筆」,更には「手紙」などの例もあることなので,同じ漢字だからと言って
その意味・用法が必ず本家の中国のものと同じでなければならないとするの
は少し窮屈ではないだろうか,と私は思います.

(3) calque により「王」と「道」から「王道」にしたということは
> よくわかりますが、これは「王道」の日本語の意味(孟子の
> 原意から、日本では村田先生の解釈にある「正道」という
> ような意味)を知っていたら、 royal road = 王道 とはしなかった
> のではないか? と思います.
>
私は必ずしもそうは思いません.また,「王道」が「王だけが利用する特権的
な道」の意味から「インターネットの王道」のような用法にまで拡張される
ことは,言語の意味変化の過程としてはやむをえないことではないでしょうか.
>
> (4)上の繰り返しになりますが、ともかく「間違いではないか」と
> いう指摘があって、英語教師の領域である There is no royal
> road to . . . の訳語の問題なので、検討するにやぶさかでない、
> 所をみせても良いと思います.
>
それはかまわないと思います.

(5)英語教師と日本語
> つらつら反省するに、英語の教室内ではかなり「不自然な
> 日本語」をとかく使ってきました(全体論です).
>
> その反面、英語になると(私もこの点は A級戦犯)、やたら
> 厳しい.
> ですから、英語教師は国語が変わっていく方には加担しない、
> 国語においては規範主義であるべし、という立場で発言した
> ものです.
>
私もいわゆる「ら抜き」ことばなど気になることが沢山あって,話すときは
ともかく―うっかりやってしまうことがないとは言えないので―自分で書く
ときには避けるようにしています.しかし,他人の日本語をいちいち直すわけ
にもいかないので,静観することにしています.また,非常勤で 15 年近く
北米の大学生に日本語を教えたときに痛感したのですが,学生の日本語を直し
ても「ホームステイ先のお母さんはそう言っていました」と言われると一言も
ない,という経験をよくしました.

調べてみましたら,この問題については井上義昌(編)「英米故事伝説辞典」
(増補版)(冨山房,1972)にも言及があり,安井コウ一郎という人の次の
ようなことばが引用してあります.
「OED に,Royal road, a smooth or easy way; a method (of study, etc.)
unaccomanied by difficulties と懇切ていねいに説明されているにもかかわ
らず,royal road は往々にして「王道」と邦訳されるが,これではちょっと
あてはまらない.なんとなれば,「王道」とは「覇道」の対語としての意味が
あるのである.ごやっかい―誤訳解―ながら,世のためにもなろうかと
Webster の royal road の説明を引用する. (引用 略)」

水掛け論になるかもしれませんが,Royal road to learning が Euclid の
Ptolemy に対する返事から始まったということを考えると,やっぱり「王道」
も悪くないのではないかという気がします.

なお,「捷径」は「和英対照独習フランス語捷径」(丸山順太郎著,白水社,
1928-1930)のような使われ方もしました.ちなみに,この本のフランス語の
副題は Le vade-mecum de l'autodidcate ou le Francais sans maitre です.
(加藤 和男)


1 INET GATE 1998/05/15 18:12
題名:[lex] 王道(ロイヤルロード)の新たな意味

Date: Fri, 15 May 1998 17:45:09 +0900
From: Minoru MURATA <>
Reply-To:
To:

      「王道」(ロイヤルロード)の新たな意味

村田 年です.
もしかしたら,「王道」に先に申した「正道,一番いい道」という新しい意味が生ま
れていると考えた方がいいかも知れないですね.加藤先生が出して,それはどういう
意味かと西村先生が問うている用例はなべてこの意味になるのではないかと思います.

同僚に今「王道」が問題になっているんですよ,と話しましたら,学長が「学問に王
道なしですから,飛び入学といった道もあっていいんですよ」と言ったので,ことわ
ざの意味を取り違えていると言って文春かなんかで話題になったのはご存じですか,
と言われました.それはおもしろい,と思ってさがしてみました.

「飛び入学」はジャーナリズムに受けたようで,あるはあるは,何十回と100近く
も記事があって,ドンぴしゃのは見つかりませんでしたが,似たようなことをあちこ
ちで言っていました.

産経新聞(1997.7.18)
丸山:数学会がいっておられることは,全くその通りですが,それでは,数学会の方
 たちは,今の教育がご自分たちの学問のために一番いいと立証できるのですかね.
 別の道をとってみるということも,やはり考えなければいけないのではないで
 しょうか.
  なぜなら,「学問にロイヤルロードはない」というのが実証されているのに,
 今の方がいいとおっしゃっている.私は数学はわからないが,学問に関しては,
 数学者はわかっていないということではないでしょうか.

 学長は生化学者で,世界的にも知られた学者であり,勉強家で私も英文の意味など
を聞かれたことがあります.このことわざは明らかに取り違えていますが.

 「王道(ロイヤルロード)」=正道,は今やたいへんに用例が多いのかも知れませ
んですね.いかがでしょうか.


1 INET GATE 1998/05/17 15:34
題名:[lex] I didn't sleep until midnight

Date: Sun, 17 May 1998 15:03:40 +0900
From: "Matumoto Yosihito" <>
Reply-To:
To: <>

佐賀の松本@MCSです。

西九州大学櫻井先生からの質問を転記します。

=====================
>ジーニアス sleep の記述には、
>I slept late this morning. : 今朝は寝坊した。(状態の動詞)
>
>until の記述には
>I didn't sleep until midnight. : 真夜中まで眠れなかった。(動作の動詞?)

>とありますが、上記の例文が普通だとすると、下記の例は
>「(昼から寝ていて)真夜中まで寝た訳ではない(状態の動詞)」
>といった意味にもとれるのではないでしょうか。

>また、下の例文が正しいとすると、sleep の項にこの下記の用例
>(類似の例)がないのはなぜでしょうか。
======================

個人的には下記の例文は
I didn't fall asleep until midnigaht.
の方がいいような気がするのですが、自信がありません。お答えいただいたメール
は、私松本が責任を持って櫻井先生に届けます。ご存じの先生がいらっしゃいました
ら、よろしくご教授お願いいたします。


1 INET GATE 1998/05/18 09:30
題名:[lex] I didn't sleep until midnight

Date: Mon, 18 May 1998 09:16:30 +0900
From: kazuo kato <>
Reply-To:
To:

松本先生:

加藤@岩手医大です.

「プログレッシブ英和中辞典」(2,3 版)の until の語法解説に説明があり
ます.

(加藤 和男)


2 INET GATE 1998/05/18 11:36
題名:[lex] I didn't sleep until midnight

Date: Mon, 18 May 1998 11:05:58 +0900
From: "Matumoto Yosihito" <>
Reply-To:
To: <>

加藤 先生、メールを有り難うございます。

佐賀の松本です。

早速調べまして、櫻井先生に報告します。有り難うございました。


2 INET GATE 1998/05/18 17:23
題名:[lex] OED と royal road

Date: Mon, 18 May 1998 16:46:29 +0900
From: kazuo kato <>
Reply-To:
To:

加藤@岩手医大です.

これは「王道」問題の蒸し返しではありません.あの問題を調べているうちに
(少なくとも私にとっては)興味深い問題を発見したので,報告する気になり
ました.(なお,前回の「フランス語捷径」の Le vade-mecum de l'auto-
didcate ... は l'autodidacte のミスタイプでした.)

OED2 は問題の royal road に "a smooth or easy way; a method (of study,
etc.) unaccompanied by difficulties”という語釈をし,「学問に近道なし」
のような用例だけを10例 (fly-dressing の項にも1例あり)上げていますが,
村田先生が言及された BNC の,(具体的な)「王のための道」の意味や用例は
忘れているか無視しています.

ところが,royal road は「(人生の)公道」としての意味・用法もある(あっ
た?)ようです:

最初は Robert Louis Stevenson, Virginibus Puerisque and Other Papers
(1881)(「研究社英文学叢書」(1922))の例です.

It seems as if marriage were the royal road through life, and realised,
on the instant, what we have all dreamed on Summer days when the bells
ring, or at night when we cannot sleep for the desire of living.... For
marriage is like life in this--that it is a field of battle, and not a
bed of roses. (pp. 13-14)

これは,この叢書の General Index の語彙索引で見たものです.この個所には
編者の岡倉由三郎の注がついていて,それには 「the royal road 「天下の公
道」cp. "There is no royal road to Euclid." (p. 174)」とあります.

また,次は http://www.hti.umich.edu の Public Domain Modern English
Text Collection で見たものです:

Thomas Hardy, The Return of the Native (1878)
... to courship without acquaintance, to pass to marriage without
courtship, is a skipping of terms reserved for those alone who tread
this royal road.

たった 2例ですが,royal road にはこういう用法もある(あった?)が,OED
は採録しなかったということでしょう.してみると,BNC にあるような具体的
な道路としての royal road としての意味のほかに,「(学問の)近道,手っ
取り早い学習法,速習法」という用法や,岡倉由三郎のいう「天下の公道
(としての結婚)」という意味・用法もあるわけで,英語の royal road も結構
多義であるというか用法が多様であると言えそうです.

ご覧になった方も多いと思いますが,フランク・シナトラの死を報じた「朝日
新聞」(5月16日)には「「マイウエイ」―王道 50年」という見出しがありま
した.こちらは「(歌手としての)王者の道」とパラフレーズできるかもしれ
ません. (加藤 和男)

P.S. 「学問に王道なし」ということわざを「学問はこつこつやるしかしかたが
ない」という意味にではなく,「学問はいくらやっても果てしがない」という
意味に解釈している人に出会いました.「情けはひとのためならず」を「情け
をかけると相手のためにならない」と解釈する人もいるそうですから,こうい
うこともあるわけですね.


2 INET GATE 1998/05/18 17:23
題名:[lex] OED と royal road

Date: Mon, 18 May 1998 16:46:29 +0900
From: kazuo kato <>
Reply-To:
To:

加藤@岩手医大です.

これは「王道」問題の蒸し返しではありません.あの問題を調べているうちに
(少なくとも私にとっては)興味深い問題を発見したので,報告する気になり
ました.(なお,前回の「フランス語捷径」の Le vade-mecum de l'auto-
didcate ... は l'autodidacte のミスタイプでした.)

OED2 は問題の royal road に "a smooth or easy way; a method (of study,
etc.) unaccompanied by difficulties”という語釈をし,「学問に近道なし」
のような用例だけを10例 (fly-dressing の項にも1例あり)上げていますが,
村田先生が言及された BNC の,(具体的な)「王のための道」の意味や用例は
忘れているか無視しています.

ところが,royal road は「(人生の)公道」としての意味・用法もある(あっ
た?)ようです:

最初は Robert Louis Stevenson, Virginibus Puerisque and Other Papers
(1881)(「研究社英文学叢書」(1922))の例です.

It seems as if marriage were the royal road through life, and realised,
on the instant, what we have all dreamed on Summer days when the bells
ring, or at night when we cannot sleep for the desire of living.... For
marriage is like life in this--that it is a field of battle, and not a
bed of roses. (pp. 13-14)

これは,この叢書の General Index の語彙索引で見たものです.この個所には
編者の岡倉由三郎の注がついていて,それには 「the royal road 「天下の公
道」cp. "There is no royal road to Euclid." (p. 174)」とあります.

また,次は http://www.hti.umich.edu の Public Domain Modern English
Text Collection で見たものです:

Thomas Hardy, The Return of the Native (1878)
... to courship without acquaintance, to pass to marriage without
courtship, is a skipping of terms reserved for those alone who tread
this royal road.

たった 2例ですが,royal road にはこういう用法もある(あった?)が,OED
は採録しなかったということでしょう.してみると,BNC にあるような具体的
な道路としての royal road としての意味のほかに,「(学問の)近道,手っ
取り早い学習法,速習法」という用法や,岡倉由三郎のいう「天下の公道
(としての結婚)」という意味・用法もあるわけで,英語の royal road も結構
多義であるというか用法が多様であると言えそうです.

ご覧になった方も多いと思いますが,フランク・シナトラの死を報じた「朝日
新聞」(5月16日)には「「マイウエイ」―王道 50年」という見出しがありま
した.こちらは「(歌手としての)王者の道」とパラフレーズできるかもしれ
ません. (加藤 和男)

P.S. 「学問に王道なし」ということわざを「学問はこつこつやるしかしかたが
ない」という意味にではなく,「学問はいくらやっても果てしがない」という
意味に解釈している人に出会いました.「情けはひとのためならず」を「情け
をかけると相手のためにならない」と解釈する人もいるそうですから,こうい
うこともあるわけですね.


1 INET GATE 1998/05/18 23:27
題名:[lex] バーミンガム物語1

Date: Mon, 18 May 1998 23:05:00 +0900
From: 磐崎 弘貞 <>
Reply-To:
To:

村田先生のバーミンガム物語の連載が始まり、わくわくしております。

まず、第1回を読ませていただきました。先生がいらした時には、リス
トラ後の現在同様、編集部がキャンパス東側のマナー・ハウス、Westmere
にあった時ですよね。人間模様が細かく描写され、今後の登場する人た
ちの部分が待ち遠しいです。

> ここではみんながそうしている。いやそうしなければいけないのだ。
> 玄関のドアーを強く閉めて、さらに閉まったことを確かめるように
> という掲示がしてある。何度かコンピュータのマシーン(端末)を
> 盗まれたことがあったからだ。  

私がいたときにも、2回PC教室が盗みに入られました。おそらく、
もうWestmereにパソコン部屋は設置しないでしょう。

> 味がいい。これはすべて師匠のデイヴィド・ブラジルご夫妻にならっ
> てのことかも知れない。デイヴィドはすでに定年で退官しているが、
> 夏休みともなると世界中から、かつての教え子たちが集まってくる。
> デイヴィドは教え子たちと酒を酌み交わすのではなく、毎日私設の
> ゼミを開いて、ディスコースのイントネーション分析をしている。

先生はブラジルに会われたわけですね。私はとうとう直接お会いするこ
ともなく、他界されました。

では今後に期待しております。

磐崎弘貞


1 INET GATE 1998/05/18 23:37
題名:[lex] I didn't sleep until midnight.

Date: Mon, 18 May 1998 23:18:00 +0900
From: 南出 康世 <>
Reply-To:
To:

松本先生

南出(大阪女子大)です。先生の寄せられた質問をジーニアスの執筆者で
もあるSchourup 先生と考えました。
先生のおっしゃるとおり(1)は曖昧で

(1)I didn't sleep until midnight.

(2), (3) の意味に解釈されます。

(2) I was awake until midnight.
(3) I slept, but not until midnight. I awoke some time before
midnight.

そしてこれも先生のおっしゃる通り特別な文脈がない限り(1)は(3) に解釈さ
れるのが普通で, (2)の意味はI didn't fall asleep until midnight.で表現
するのが普通です。

下記の理由とあわせて、(1) を削除すべきと考えます。
(a) sleep は瞬間を表す動詞でないので(I slept until midnight./ * I came
until midnight.), (1)は用例として不適当。
(b) (1)は注記(1)(s.v. until)であげているstayの 例と重複するので不要。

貴重なご指摘ありがとうございました。


7 INET GATE 1998/05/19 00:02
題名:[lex] バーミンガム物語1

Date: Mon, 18 May 1998 23:49:00 +0900
From: 井上 永幸 <>
Reply-To:
To:

村田 年 先生:

「バーミンガム物語1」をありがとうございました。懐かしく拝読しま
した。

>行ってみることにした。ドアーは開いていた。どんずまりの部屋で鍵の手になってい

>ので中は見えない。

この部屋ってもしかして207では?
ちなみに,私もこの部屋でした。(^_^;)

>けではすまない。千葉の説明には成田エア・ポートがあるので本当に助かる。スペイ

>のバルセロナの少し奥の方からきて、いま博士論文を書いている。毎日少しは書いて

私もスペインから来た女性教師と二日ほど207号をシェアしたことがあり
ますが,非常に気軽にCOBUILDに調べにきているといった感じで,うらや
ましいなあと思ったことがあります。日本はやはり遠いなあと思いまし
た。

彼女はイギリスの食べ物は高くてまずいとこぼしていました。私が日本
から比べれば安もんだ,メロンなんか1ポンドちょっと〔当時165円くら
い〕だというと,彼女はメロンはスペインから輸出したもので,スペイ
ンではもっと安いということでした。(^_^;)

「バーミンガム物語2」を楽しみにしております。

23:34 (月) 05/18/98 井上永幸 <>
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5 INET GATE 1998/05/19 01:20
題名:[lex] OED と royal road

Date: Tue, 19 May 1998 01:04:00 +0900
From: 村田 年 <>
Reply-To:
To:

加藤和男先生

村田 年です.
いろいろ教えていただきましてありがとうございました.
しかし,加藤先生の調べる力はものすごいものですね.

このMLには150人からいらっしゃると伺っていますが,だんまりの人が
ちょっと多いですね.日本人のでしゃばらない文化なのでしょうけれど.
もうちょっと人の意見に反応しあいましょうよ!


4 INET GATE 1998/05/19 01:24
題名:[lex] コービルド物語2

Date: Tue, 19 May 1998 01:05:00 +0900
From: 村田 年 <>
Reply-To:
To:

磐崎先生,井上先生

ひとこといただいてありがとうございます.ブラジルは来日されたこともあります.愛
媛大学の井門(いど)義男先生が親しいですね.
 食べ物ですが,大学食堂のランチはいまひとつでしたが,何でも安いので,自分で買
ってきて組み合わせると結構よかったですね.駅前に10軒近くある中華料理店は広く
て,おいしかったです.

(問題)「ジュン」とはだれのことでしょうか?

しかし,こんな遊びの記事をMLに載せていいんでしょうか.怒って下さい.すぐに止
めますから.

         バーミンガム学派の人々(2)

 村 田   年
わたしの担当教官のアントワネット

 アントワネットにはすぐ会えるものと思っていたら、今は旅行中と言う。夏休みに押
し掛けたのだから仕方がない。しかし、待てど暮らせど彼女は現れない。バーミンガム
へ来て12日目の7月21日(火)にやっと会えた。
 だれかが廊下を走ってくる、聞きなれないヒールの音がした。いつも開いているドア
からいきなり入ってきて、息をはーはーさせている。(ここではみんなフランクな付き
合いをしているので、いきなり入ってきてなにか言う人は多いのだ)振り返って見ると
、女の人が顔いっぱいの笑みを浮かべて立っていた。瞬間これがアントワネットだと思
った。
彼女は両手を差しだして私の手を握り、体が触れ合うほど近くまで寄ってきて、「ム
・ラ・タ!」と言って、またにこっと微笑んだ。私は型通りの挨拶をして、お礼を述べ
た。とたんに彼女は早口で捲くし立てた。お会いするのが遅くなってということのほか
は何を言っているのかわからなかった。「旅行をされて日に焼けたんじゃありませんか
」などとつまらないことを言った。「日焼けはしなかったと思いますけど」と彼女は答
えた。なんだもともと地が黒いのか、よけいなことを言ってしまったな、と反省した。
彼女は気にしないで次の話題に移って行った。(後になってみると彼女は色白であった
。やはり日焼けしていたのだ)今日はこれから会議があるし、3日後にはフランスの学
会へ行かなければならないので、ととても忙しそうだった。
 私は計画の概略を説明し、出来上がっていた、日本語の「きれいな」に相当する英語
の形容詞(beautiful, pretty, clean など)が結び付く名詞を出現頻度順に並べた一
覧表とそれを生活範疇別(シソーラス)に「人」「物」「衣服」「抽象名詞」などに分
けて、並べ直した一覧表を彼女に見せて、同じように「きれいな」という意味で用いら
れていても次にくる名詞が相当違うことがわかるでしょう、などと説明した。
 それからしばらくやりとりがあって、彼女はロン・カーターの2つの論文を読んでい
るか、と聞いた。どうもそれは読んでないみたいだったので、そのように言うと、すぐ
にセクレタリーにコピーさせて届けるからと言った。打てば響く、聞きしにまさる才媛
だけれど、ちょっとせっかちな人だなと思った。
 それでマシーンのほうは大丈夫ですか、と聞かれて、コンピュータ・パーソンのアレ
ックスに1から10まで手取り足取りで面倒みてもらっているのだが、すぐにまたわか
らなくなっちゃって、と言うと、どこがわからないのかと聞く。これとこれがわからな
くて、と言うと、それはね、と言いながら彼女がやったがやはりだめだった。アレック
スに聞いてくる、と言って飛び出していってはばたばたと走って帰ってくる。はあはあ
言いながらやってみてオッケーだとそれをそのへんの紙に書いてていねいに私に説明す
る。わかったと言うとにこっとする。
 「ムラタ、アレックスは教師じゃないの。コンピュータ・パーソ ンなの。だから聞
いたことだけしか教えてくれないから、しつこ く先まで何度でも聞かなくちゃ。わか
りました?」
  「彼、すごく忙しそうだから、まとめて聞こうと思って」
  「アレックスはミノルはわかったと言ったよ、と言っていたけ ど、わかったふり
などしちゃだめよ」
 と言ってにこっとわたしを見つめる。ほんとに彼女は教師だ。わたしがわかってない
な、と思うと、すぐそのへんの紙を取り出して要点を書いてくれる。
 アントワネットはいつも小走りでやってきた。最初は彼女の部屋がどこにあるのかも
わからなかった。が、ちょっとこれを見てもらいたいな、とか、こんな本を貸してくれ
ないかな、と思っていると現れた。いつもはーはーとせいているような感じであった。
彼女の書く論文も、ひとの論文を批判する口調もせいいっぱい頑張っているふうであっ
た。ちょっとへんな論文は、"He is silly!"(この人ばかよ!)と言って切って捨てる
ところがあった。
 「実はぼくはロン・カーターは好きじゃないんです」と言うと、彼女はにこにこして
、「どうして?」と聞いた。「いろんなことを知っていて情報は多いんですけど、オリ
ジナリテイはないし。この貸してくれたコアー・ボキャブラリーの論文だって、スタッ
ブズに寄りかかっていて、ああしたらいい、こうしたらいい、と言っているけど、実際
語彙表を作ろうとすると、彼の提案のかなりのものは実行できないんですよ。わたしは
学習基本語4000語の語彙表を作ったことがあるんですけど、彼はそういう仕事をし
たことがあるのかしら。それから、友達がカーターの間違いを見つけて手紙を二度も出
したのに返事がなかったと言っていたけど。また別の本でも同じ間違いをしているよう
ですよ」
 「彼はアドミニストレイター(管理職)なのよ。忙しすぎて。有名教授ですし。あな
たの言う通りだわ。彼はコービルドに来て研究したことがあるんですけど、そのときも
やはり実際に仕事をする人ではなかったわ」 
 じゃあなぜカーターの論文を読め、と言って2つもわたしに貸したんだろう、と思っ
た。
「ここにケーススタディがあるけど、これでは単にケースを挙げているだけで、実証
的なケーススタディとは言えませんよ。どうもかれはめったやたら論文が多いけど、ラ
イト・タッチのものばかりですね。文学教育などでも世界的に有名らしいけど」
 ちょっと無責任なことを言ってしまったかなと反省したが、彼女にはたいへんこれは
受けたようであった。
アントワネットは若い男といっしょになってるという噂であった。ここバーミンガム
では同棲などは多いらしいが、彼女はどんな生活をしているのだろう。おしゃれで、ち
ょっと派手で、名前に負けずなかなかのフランス系の美人であった。ロンドンはハイド
パークのすぐそばで生まれ育ったという。バーミンガムなまりのずーずー弁が多いなか
で彼女の発音は標準的なイギリス英語であった。
 7月末になると、ジュンの家族が日本からやってきた。アントワネットがジュンの家
族とわたしを招待したいと言った。イギリスの家を外からはたくさん見たが、中を見て
ないので、期待して出かけた。どう捜しても教わった番地には彼女の家はなかった。間
違って引っ越す前の番地を私に教えたのだ。このことでそれから長い間会う度に彼女は
謝った。彼女の夫のイアンが車でわたしを捜し回ってやっと見つけてくれた。
 その家は想像以上に大きかった。裏庭はずっと芝生になっていて、200年以上も経
つと思われる大きな木がまわりに生えていて、隣の家は見えなかった。庭のまん中には
子供用のプールがあって、きれいな水がそよ風にさざ波をたてていた。アントワネット
はジュンの子供たちを芝刈機に乗せてプールの周りを回っていた。ジュンは庭でビール
を飲んでいた。さっそくイアンとわたしもビールの座に加わった。アントワネットのお
父さんのビルは窓から首を出して楽しそうに見ている。ビルと握手をして挨拶を交わし
た。
そろそろ家に入りましょう、というアントワネットの誘いで、中に入ると料理は大体
出来上がっているらしく、今度は立ったままワインを飲み始めた。キッチンが珍しいの
で、遠慮なくいろいろ見せてもらった。料理はイアンが主で作っているようで、アント
ワネットは楽しそうに1つ1つ説明してくれる。イアンはビーフを合わせて大きな西瓜
ぐらいにし、それを布で縛って、蒸焼きにしたのを2本のナイフをうまく使って薄くそ
ぎ落としている。それを見ていると、肉を主にした食文化ではまだ男の仕事があるのだ
な、と思った。日本でも昔は大きな鯉など釣ってくると、それを捌くのは親父の仕事だ
った。いまでもわたしは、お歳暮に新巻の鮭を貰ったりすると、自分の仕事ができた、
といそいそと包丁を研ぐことがある。
アントワネットが家をぐるっと案内してくれることになった。わたしはひとの家を見
るのが大好きで、ここでもさんざん新聞の住宅広告を見ている。外から眺めたよりも大
きな家だ。まず地下室へ降りる。ほぼ地下全体が一部屋になっていて沢山のむき出しの
柱で支えられている。戦争中には防空壕として使っていたらしい。一角にワインの貯蔵
庫があった。みやげ代わりにいいワインを持ってきてよかった。バーミンガムの連中は
みんな安いワインを飲んでいるんだから、高いのを持って行く必要はないよ、との忠告
をもらったが、どうもそれには従えなかった。これほど沢山のワインを貯蔵しているイ
アンは相当のワイン通であろう。
 どの部屋もうらやましいばかりに大きく、きれいで、設備が整っていた。アントワネ
ットのコンピュータつきの書斎もいいが、彼女が仕事部屋だと言った部屋は日本では考
えられないほど大きく、どんなに資料や本をちらかしてもまだまだスペースがある感じ
であった。わたしは大きな机が3つほしい、とずっと思ってきた。本を読んだり、手紙
を書いたり、授業の下調べをする普通の机、辞書の仕事をするための机(途中で片付け
る必要がなくて、いつも広げっぱなしにできるもの)、パソコン、ワープロ、プリンタ
ーが使える状態でいつも置いてある机、の3つである。
 この家ならそれは可能である。バス・トイレも各寝室にあり、全部で4組ある。多過
ぎて使いきれないと言う。ロンドンではとてもこんな生活はできない、バーミンガムは
住むにはいいところだ、と二人は言う。サンルームには太い葡萄のつるが這わせてあり
、たくさんの実をつけていた。
 静かな、広々とした眺めのダイニングで、ビーフとチーズと豆とポテトを中心とした
、いわゆるイギリス料理を堪能することができた。
 二人は決して豊かな出身ではないと思う。イアンはスコットランドの出身で、母親は
英語が母語ではなく、ゲール語で育ったと言う。実は日曜日にわたしが出勤していたと
きに、アントワネットがイアンの母親を連れてきてコービルドの中を案内していた。日
曜日でわたしとジョン・トッドのほかにはだれもいないはずだと思っていたら、急に階
段のところがやかましくなり、突然二人でわたしの部屋に入ってきた。イアンの母親は
わたしの仕事を見て、わたしだって、beautiful や pretty や lovely なんかの意味の
差はわからないわ、だって英語は母語じゃないもの、と言ったのでわたしは驚いた。
 いっぽうアントワネットはイギリス海峡の島の出身である。このような元々のイング
ランド人でない二人がこんなすばらしい家を持つまでには、親子二代にわたる、それ相
当の努力があったろうと推察する。
 イアンはいかにもスコットランド出身らしく、気はやさしくて、力持ち、といった感
じで、妻のどんな苛立ちも、我がままも受け入れて、まだ余裕があるといった、ゆった
りとしたところがある。気張って、頑張って、はーはー言いながら走り回っているアン
トワネットにとって、これ以上の亭主は考えられない。おまけにイアンは風貌とは違っ
て、コンピュータ技師で、銀行の出世コースに乗っていると言う。招待された翌日ジュ
ンに会ったとき、あれなら大丈夫だ、と2人とも同じことを言った。なにしろここでは
離婚が多すぎるのだ。
アントワネットは博士論文の資料も集まり、膨大な資料に埋まってディスコース・ア

リシスの論文を書き始め、1回目の部内発表もし、いよいよというときに病に倒れ、 P
h D 論文を諦めた。病が癒えたときには、バーミンガム大学始まって以来の最大のプロ
ジェクトとも言える、コンピュータ分析による大型データベース作りが始まろうとして
いた。彼女はシンクレア教授の右腕ともなって働こうと決心した。1980年から83年にか
けてプロジェクトの推進責任者を勤め、いまある現代英語に関する世界最大のコーポー
ラ(データーベース群)の基礎を築いた。
 当然彼女が占めてもいいと私などが想像する、コービルド所長の地位は、後から入っ
たギネスに与えられた。彼女は現在コービルドからもシンクレア教授からも少し離れた
、微妙な位置にいる。
 ともあれ、アントワネットは優秀な研究者だ。コンピュータ言語学、語彙、コロケー
ション、談話分析等いろいろな分野で発表し、論文を書いている。わたしが談話分析の
一方法として、談話を統括している名詞とそれを限定・修飾する形容詞について、その
結び付きの統計調査をしたい、と言い出したとき、彼女はこのようにやったらどうか、
という図を描いてくれた。例のごとく、その日のうちにいくつかの関連論文が届けられ
た。
 わたしのバーミンガム滞在も5週間が過ぎた。11種類の調査をし、その裏付けとな
る資料をフロッピ6枚に収めた。来週の木曜にロンドンに発ちます、と挨拶すると、そ
れじゃ水曜にランチをいっしょにしましょうと誘われた。きれいな、静かな雰囲気のパ
ブに車で連れていってくれた。ジュンもいっしょだった。ワインを飲みながらゆっくり
と食事を楽しむことができた。
   「きょうはムラタの送別会をぼくのフラットでやるんだ。ど   うですか、来
ませんか」とジュンが誘った。
   「きょうはイアンはゴルフ仲間とクラブで飲むらしいから、   フリーだけど
。みなさん日本語でくつろぎたいんじゃあな
   い?」と言う。
   「いや、どうせ大家さんのビルも来るだろうし、構わないん   だ」
アントワネットの運転は少々乱暴だ。道を間違えたときなど平気でガーとばかりバッ
クしたりする。ワインを飲んでいてもへっちゃらである。日本だったら飲酒運転は職を
棒に振ることになることもあるけど、とジュンが言うと、「どうして?」と言いながら
、ビューンとラウンド・アバウトを回る。(この飲酒運転についての考え方の違いにつ
いてはわたしは長い間気になっていて、ついにある解答に到達したのであった。これは
日英のものの考え方の根本に触れることであった。このように長い間考えていてわかっ
た結論はもったいなくてとてもひとには話せない)
ジュンのフラットでのパーテイはたいへんに盛り上がった。相当飲んだアントワネッ
トはフミオとわたしを車で送り届けると言って聞かない。彼女の知らない間にタクシー
を呼んでわれわれは帰ることにした。別れ際に彼女は、ミノール!あなたに会えて楽し
かった、勉強にもなった、と言って、抱きついてきて頬にキスをした。いまも彼女はは
ーはー言いながら走り回っていることであろう。


1 INET GATE 1998/05/19 09:13
題名:[lex] OED と royal road

Date: Tue, 19 May 1998 08:57:00 +0900
From: 井上 永幸 <>
Reply-To:
To:

村田 年 先生:

井上(島根大学)です。

>このMLには150人からいらっしゃると伺っていますが,だんまりの人が
>ちょっと多いですね.日本人のでしゃばらない文化なのでしょうけれど.
>もうちょっと人の意見に反応しあいましょうよ!

現在168名の方が登録されていますが,確かに,もっといろいろな方々に
気楽に書き込んでいただきたいですね。

08:27 (火) 05/19/98 井上永幸 <>
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1 INET GATE 1998/05/19 09:14
題名:[lex] コービルド物語2

Date: Tue, 19 May 1998 08:57:00 +0900
From: 井上 永幸 <>
Reply-To:
To:

村田 年 先生:

井上(島根大学)です。

>ひとこといただいてありがとうございます.ブラジルは来日されたこともあります.

>媛大学の井門(いど)義男先生が親しいですね.
> 食べ物ですが,大学食堂のランチはいまひとつでしたが,何でも安いので,自分で

>ってきて組み合わせると結構よかったですね.駅前に10軒近くある中華料理店は広

>て,おいしかったです.

私も,イギリスの料理はよく悪口を言われますが,そんなに捨てたもの
ではないと思いますよ。〔バーミンガムの植物園にあるレストランの,
ビーフシチューのキャセロールパイ包み焼きは私のお気に入りでした〕
もっとも,スペインの料理はもっとおいしいということですかね?(^_^;)

>(問題)「ジュン」とはだれのことでしょうか?

中村純作先生かな?(^_^;)

>しかし,こんな遊びの記事をMLに載せていいんでしょうか.怒って下さい.すぐに

>めますから.

遊びというか,雑談の種類にもよるでしょうが,たとえばこの種の話を
聞いて留学を決意する人が出るかもしれませんから,むだな話というこ
とにはならないと思います。英米の生活事情や文化に関する話題は,辞
書には欠かせないものです。

それから,問題に出されておりますファーストネームで呼び合う習慣も,
学生の時初めて留学したときにはすごく新鮮に感じたものです。そのう
ち,ファーストネームだけで呼び合うので,その人の名字を知らない知
り合いの人がけっこういました。こういった,異文化に関する話題のき
っかけを提供することも,このMLの重要な使命と考えます。〔ちょっと,
おおげさ(^_^;)〕

ということで,皆さんどんどん気軽に書き込んでいただければと思いま
す。ちょっとした気づきでもけっこうです。その方が書き込まれた方も
張り合いがあるというものです。

08:40 (火) 05/19/98 井上永幸 <>
[辞書学MLログを公開中: http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html]
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3 INET GATE 1998/05/19 11:01
題名:[lex] I didn't sleep until midnight.

Date: Tue, 19 May 1998 10:34:31 +0900
From: "Matumoto Yosihito" <>
Reply-To:
To: <>

南出先生、メールをありがとうございます。

佐賀の松本@MCSです。

お忙しい中真剣にご検討いただき、恐縮しております。このメーリングリストのおか
げで様々な疑問が解け、大変感謝しております。

これからもよろしくご教授お願いいたします。


2 INET GATE 1998/05/19 11:17
題名:[lex] バーミンガム物語1

Date: Tue, 19 May 1998 11:03:35 +0900
From: TERAMOTO Mamoru <>
Reply-To:
To:

村田先生、

寺本@三省堂です。「アンとソラヤ」楽しく読ませていただきました。先生が
疑問に思ってらっしゃることについて、何か参考になればと思い、キーをたた
いています。学生時代にラテンアメリカ史を専攻していたものですからつい、
といったところでしょうか。

> ソラヤとアンの関係でおもしろいことに気がついた。アンがいるときには
ソラヤはい
>なくて、ソラヤがいるときにはアンがいないことが多いということだ。どう
もソラヤが
(略)
>ソラヤもスペイン系だ。もしかしたら、同じスペイン系でありながらアンは
白人で、ソ
>ラヤはダークだからか。あるいはスペイン人と中南米のスペイン系との間で
は無意識の
>うちに優越感、劣等感が働くのだろうか。

アンが「バルセロナの少し奥の方からきて」いることがポイントです。彼女を
スペイン人(espanola)というよりもカタルーニャ人(catalana)といった方
がよさそうです。バルセロナを中心として南はバレンシア、北はフランス国境
、東はマジョルカ島のあるバレアレス諸島までがこの文化圏に属します。歴史
的には中央よりも開けた時期が早く、サルデーニャやナポリの方までをその版
図としたこともあります。経済的にも先進地で、「お荷物」のアンダルシアな
ど他地方を軽蔑している感があります。芸術面でもダリ・ガウディ・ミロなど
の才能を輩出しています。
スペインはわたしたちが思うよりずっと地域主義が根強いと思います。バスク
というまったく異質な地域もありますし。

このように、カタルーニャ人は中央であるマドリードに対して優越感・対抗心
をむき出しにすることが多いようです。今から6年前、1492年のコロンブ
スの新大陸到達[発見]に関するあるシンポジウムで、カタルーニャ人のある歴
史家は「あれは、カスティーヤ(つまりマドリードのある地方)人やアンダル
シア人のやったことでわれわれには関係のないことだ」と発言し、わたしは少
なからず衝撃を受けました。

冒頭の件については、スペイン国内でもこうした構造がありますので、「野蛮
な」アンダルシア人たちが侵略・混血してなりたったラテンアメリカ出身の人
に対しては...という邪推もなりたちますが。

このへんで止めておきます。アンとソラーヤ両人に面識がある訳でもありませ
んし、そもそも文化論自体うさんくさいですね。適当にながしてください。気
軽なきもちで書き込んでみました。
それでは「バーミンガム物語2」を楽しみにしております。

--
(株)三省堂 外国語辞書出版部
寺本 衛 (TERAMOTO Mamoru)
東京都千代田区三崎町2-22-14
tel: 03-3230-9457 / fax: 03-3230-9547
e-mail:


1 INET GATE 1998/05/19 13:03
題名:[lex] バーミンガム物語1

Date: Tue, 19 May 1998 12:31:00 +0900
From: 村田 年 <>
Reply-To:
To:

寺本 衛様

村田 年です.
スペインの中がそのような民族の関係になっているとは知りませんでした.
スペインの人と中南米のスペイン系との感情的な関係はその後スペイン人の
友達がたくさんいる人に,それがほぼ事実であることを確かめました.

友人の英語の先生でアメリカの IBM研究所に留学した人がいます.そこには
優秀な黒人の研究員がいたが,彼は白人の研究員と話すとき,どうしても
Yes, sir.式になってしまうそうです.東洋人と話すとくつろげるらしくて,
あなたが来てくれて助かったと言われ,かわいい,と思ったそうです.
(この日本人の先生は女性です.)

学生を連れてアラバマ大学へ行ってきました.アラバマ大学における白人
学生と黒人学生との微妙な関係をいろんな機会に感じました.日本の学生
たちのように居眠りなどしていられません.


2 INET GATE 1998/05/19 14:27
題名:[lex] コービルド物語2

Date: Tue, 19 May 1998 13:46:17 +0900
From: kazuo kato <>
Reply-To:
To:

村田先生:

加藤@岩手医大です.

> アントワネットの運転は少々乱暴だ。道を間違えたときなど平気でガーとばかりバッ> クしたりする。ワインを飲んでいてもへっちゃらである。日本だったら飲酒運転は職を> 棒に振ることになることもあるけど、とジュンが言うと、「どうして?」と言いながら> 、ビューンとラウンド・アバウトを回る。(この飲酒運転についての考え方の違いにつ> いてはわたしは長い間気になっていて、ついにある解答に到達したのであった。これは> 日英のものの考え方の根本に触れることであった。このように長い間考えていてわかっ> た結論はもったいなくてとてもひとには話せない)

もうかなり古いこと(1979年夏)になりますが,Reading でホームステイをし
ていたことがあります.下宿の Mr. John Tracy は Kellog を定年退職した人
でしたが,かなりの酒好きで weekdays の夜には歩いて行けるパブ,週末には
毎週のように車で田舎のパブへお供しました.
衛星放送のニュースなどで見ているとイギリスも飲酒運転取り締まりはかなり
きびしくなっているようですが,当時はおおらかなもので,Mr. Tracy の飲酒
運転に「所変われば」だなと思ったものでした.
そして,かれの娘さんと一緒に飲んだとき Julia's got hollow legs. と
いう表現を教わりました.先生の「コービルド物語2」を読んで,そのときの
ことを思い出し,辞書を調べてみると,どうも Collins English Dictionary
にしか出ていないようです.1979年の初版では 'A HOLLOW LEG OR HOLLOW LEGS
the capcity to eat a lot without getting fat'でしたが,1991年の3版には
'the capacity to eat or drink without ill effects' と飲酒についての情報
もあります.
ただ,飲酒運転に対する英国人の態度にそれほど深刻な理由があるとも思え
ないのですが,いかがでしょうか. (加藤 和男)


1 INET GATE 1998/05/19 14:31
題名:[lex] 英語教師のおかしな日本語 (royal r

Date: Tue, 19 May 1998 14:06:45 +0900
From: NARITA Keiichi <>
Reply-To:
To:

はじめまして。成田@新潟大です。それから、加藤先生、お久しぶりです。

出張から戻ってきて溜まりに溜まったメールを読んでいるところですが、
「気楽に発言しましょう」という誘いにのって(根が軽薄ですから)、
ちょこっとだけコメント。

>ひょっとすると royal road の訳として「王道」を使っているもの
>があるかもしれませんね.
> 漢字の用法が全部本家の中国の通りでなければ,「間違い」であるとするのは
>少し問題ではないでしょうか. (加藤 和男)

目の前の書棚に_Longman English-Chinese Dictionary of Contemporary English_
(1988)があったので、引いてみました。"road"の項。以下引用です。

5 royal road (to): an easy way (to) 捷徑;最佳途徑: There's no royal
road to success in this trade, my boy! (中国語訳は省略)

残念ながらこの辞書では「王道」は使われていません。でも、加藤先生の
推測が否定されるわけではもちろんありません。
ついでながら、さすが中国の人は「英語はビジネスのため」と割り切って
いるのかなあ、と例文を読みながら感心したのですが、ひょっとしてLongmanの
英語辞書にも同じ例文があるかも知れないと思い、手元のLDCE1987年版と
_Longman Dictionary of English Language and Culture(1992)を調べたら、
何と、"road" "royal"のどちらの項にも"royal road"は見あたりませんでした。
_Longman Dictionary of the English Language_ (1982)では "royal road"が
見出しに立っていますが、例文はなし。

=======================================
成田圭市


2 INET GATE 1998/05/19 16:49
題名:[lex] 英語教師のおかしな日本語 ( royal

Date: Tue, 19 May 1998 16:11:41 +0900
From: kazuo kato <>
Reply-To:
To:

成田圭市先生:

加藤@岩手医大です.
>
> 目の前の書棚に_Longman English-Chinese Dictionary of Contemporary English_
> (1988)があったので、引いてみました。"road"の項。以下引用です。
>
> 5 royal road (to): an easy way (to) 捷徑;最佳途徑: There's no royal
> road to success in this trade, my boy! (中国語訳は省略)
>
> 残念ながらこの辞書では「王道」は使われていません。

ありがとうございました. (加藤 和男)


1 INET GATE 1998/05/19 17:02
題名:[lex] コービルド物語2

Date: Tue, 19 May 1998 16:21:39 +0900
From: kazuo kato <>
Reply-To:
To:

加藤@岩手医大です.

> そして,かれの娘さんと一緒に飲んだとき Julia's got hollow legs. と
> いう表現を教わりました.先生の「コービルド物語2」を読んで,そのときの
> ことを思い出し,辞書を調べてみると,どうも Collins English Dictionary
> にしか出ていないようです.1979年の初版では 'A HOLLOW LEG OR HOLLOW LEGS
> the capcity to eat a lot without getting fat'でしたが,1991年の3版には
> 'the capacity to eat or drink without ill effects' と飲酒についての情報
> もあります.

いつも「送信」してからミスタイプに気づいて後悔しています.先ほどもあわ
てて「削除」キーを叩いたのですが,後の祭りでした.上の 'the capacity
to eat or drink without ill effects' は 'the capacity to eat or drink
a lot without ill effects' のつもりでした. (加藤 和男)

P.S. この時 Julia の酒の強さについて 'She can manage six pints.' と言
っていました.


4 INET GATE 1998/05/19 19:17
題名:[lex] have a lollow leg

Date: Tue, 19 May 1998 18:27:00 +0900
From: 磐崎 弘貞 <>
Reply-To:
To:

加藤先生、

> そして,かれの娘さんと一緒に飲んだとき Julia's got hollow legs. と
> いう表現を教わりました.

have (got) a hollow legでdrink a lotを意味する用法は、アメリカの
バーミングハム(こちらはBirminghamのhを発音する)でも入手しました。
同じ意味でShe is a bottomless pit.とも表現するようです。こちらは
聖書の表現の転用ですね。

磐崎弘貞@筑波大学外国語センター


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