【辞書学メーリングリストログ】 →ログメニューへ

1998年8月 (11日〜20日)


From:
Subject: [lex] kick the bucket {1}
Date: Tue, 11 Aug 1998 23:53:08 +0900

 はじめまして。高校の教師をしています埼玉の杉本と申します。
よろしくお願い致します。
 最初からダウンロードして通読しました。辞書の世界の広さと深さと
面白さに驚嘆しています。

 2月に竹蓋さんが「イディオムの成り立ち」の辞書について質問され、
井上先生がLong, T.H. (ed.) Longman Dictionary of English Idioms等
を紹介され、この辞書から一例として kick the bucket をあげておられ
ました。

 Kick the bucket _coll, often humor_ to die: ... <Bucket in this
 phrase perhaps means a beam from which pigs were hung by   
their heels after being killed

 私がこのイディオムを知ったのは、当時NHKの英語会話の講師で
あった松本亨先生の「ことばの花かご(熟語編)」(英友社, 1961)
〜英語らしいイディオムの感覚を養わせてくれた本として忘れることが
出来ません〜でそこにはこう書かれています。その頃大好きだった
西部劇の連想も何となく手伝って、頭にこびりついていましたので、
これを読んで「おやっ」と思いました。

 あまりよい話ではないが、昔罪人を死刑にするときは、バケツの上に
立たせて首をくくり、執行人はそのバケツをけって処刑したものである。
今日では"kick the bucket" は自動詞として「死ぬ」という意味に使わ
れる。
 
 手元の何冊かの辞書を引いてみると、今は次のように二つの説が
あるようです。

 A euphemism for 'to die', it comes from either the suicide's
kicking away the bucket on which he/she is standing, in order
to hang him/herself, or from the 'bucket beam' on which pigs
were hung <after>being slaughtered.
-- Rees, N.: Bloomsbury Dictionary of Phrase & Allusion
(Bloomsbury, 1991)

 OEDも「自殺」説には言及していませんが、Brandreth, G.: Everyman's
Modern Phrase & Fable (J.M. Dent & Sons, 1990)が言うように
'unproven theory'なのだからでしょうか。

 松本先生の説は手元の辞書では見あたりませんでしたが、載って
いる辞書どこかにあるでしょうか。(或いは、もしかすると長いアメリカ
滞在中にどこかで聞かれた俗説なのかなとも思いましたが ....)

--
杉本一潤


From:
Subject: [lex] kick the bucket {1}
Date: Tue, 11 Aug 1998 23:53:08 +0900

 はじめまして。高校の教師をしています埼玉の杉本と申します。
よろしくお願い致します。
 最初からダウンロードして通読しました。辞書の世界の広さと深さと
面白さに驚嘆しています。

 2月に竹蓋さんが「イディオムの成り立ち」の辞書について質問され、
井上先生がLong, T.H. (ed.) Longman Dictionary of English Idioms等
を紹介され、この辞書から一例として kick the bucket をあげておられ
ました。

 Kick the bucket _coll, often humor_ to die: ... <Bucket in this
 phrase perhaps means a beam from which pigs were hung by   
their heels after being killed

 私がこのイディオムを知ったのは、当時NHKの英語会話の講師で
あった松本亨先生の「ことばの花かご(熟語編)」(英友社, 1961)
〜英語らしいイディオムの感覚を養わせてくれた本として忘れることが
出来ません〜でそこにはこう書かれています。その頃大好きだった
西部劇の連想も何となく手伝って、頭にこびりついていましたので、
これを読んで「おやっ」と思いました。

 あまりよい話ではないが、昔罪人を死刑にするときは、バケツの上に
立たせて首をくくり、執行人はそのバケツをけって処刑したものである。
今日では"kick the bucket" は自動詞として「死ぬ」という意味に使わ
れる。
 
 手元の何冊かの辞書を引いてみると、今は次のように二つの説が
あるようです。

 A euphemism for 'to die', it comes from either the suicide's
kicking away the bucket on which he/she is standing, in order
to hang him/herself, or from the 'bucket beam' on which pigs
were hung <after>being slaughtered.
-- Rees, N.: Bloomsbury Dictionary of Phrase & Allusion
(Bloomsbury, 1991)

 OEDも「自殺」説には言及していませんが、Brandreth, G.: Everyman's
Modern Phrase & Fable (J.M. Dent & Sons, 1990)が言うように
'unproven theory'なのだからでしょうか。

 松本先生の説は手元の辞書では見あたりませんでしたが、載って
いる辞書どこかにあるでしょうか。(或いは、もしかすると長いアメリカ
滞在中にどこかで聞かれた俗説なのかなとも思いましたが ....)

--
杉本一潤



From:
Subject: [lex] kick the bucket {2}
Date: Wed, 12 Aug 1998 14:56:15 +0900

埼玉の杉本一潤先生初めまして。佐賀で塾を開いております松本祥仁と申します。

> 最初からダウンロードして通読しました。辞書の世界の
>広さと深さと面白さに驚嘆しています。

今更,といわれそうですが(^_^;),過去ログに関しては項目別ログを準備しておりま
す。

過去の議論についてお知りになりたいとき,ご利用いただければ幸いです。

http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html

からお入りください。



From:
Subject: [lex] kick the bucket {2}
Date: Wed, 12 Aug 1998 14:56:15 +0900

埼玉の杉本一潤先生初めまして。佐賀で塾を開いております松本祥仁と申します。

> 最初からダウンロードして通読しました。辞書の世界の
>広さと深さと面白さに驚嘆しています。

今更,といわれそうですが(^_^;),過去ログに関しては項目別ログを準備しておりま
す。

過去の議論についてお知りになりたいとき,ご利用いただければ幸いです。

http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html

からお入りください。



From:
Subject: [lex] kick the bucket {3}
Date: Wed, 12 Aug 1998 23:33:54 +0900

松本祥仁先生

Matumoto Yosihito wrote:

> 今更,といわれそうですが(^_^;),過去ログに関しては項目別ログを準備しておりま
> す。
>
> 過去の議論についてお知りになりたいとき,ご利用いただければ幸いです。
>
> http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html
>
> からお入りください。

ご教示ありがとうございました。
ダウンロードしたときも、「コービルド物語」通読したいときは「何かいい方法ないの

なあ」と思っていましたので、このようなログがあることをありがたく思っております

将来は投稿者の名前でも引ける索引が出来たらなあ等と欲張りなことが頭を
横切りました。
とりあえず、お礼まで。

--
杉本一潤



From:
Subject: [lex] kick the bucket {3}
Date: Wed, 12 Aug 1998 23:33:54 +0900

松本祥仁先生

Matumoto Yosihito wrote:

> 今更,といわれそうですが(^_^;),過去ログに関しては項目別ログを準備しておりま
> す。
>
> 過去の議論についてお知りになりたいとき,ご利用いただければ幸いです。
>
> http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html
>
> からお入りください。

ご教示ありがとうございました。
ダウンロードしたときも、「コービルド物語」通読したいときは「何かいい方法ないの

なあ」と思っていましたので、このようなログがあることをありがたく思っております

将来は投稿者の名前でも引ける索引が出来たらなあ等と欲張りなことが頭を
横切りました。
とりあえず、お礼まで。

--
杉本一潤



From:
Subject: [lex] 光陰矢のごとし {1}
Date: Mon, 17 Aug 1998 13:31:44 +0900

岡田@日大理工です.いつも忙しくて面白い話題と知りながら直に参加できず後講釈
になってすみません.Time flies like an arrow.のことですが、昨日久しぶりに新
宿の紀ノ国屋にいきましたので、そこで立ち読みしたMulticultural Dictioinary of
Proverb には、(1)Time flies like an arrow.(Japanese), (2)Time fllies like a
n arrow, days and months as a shuttle.(Chinese) となっていました.してみると
「光陰矢のごとし」というのは日本語だけのようですね.試みに市川三喜の「大英和
辞典」(冨山房、昭和6年)では(1), 斎藤秀三郎「熟語本位英和中辞典」では Time
flies. です.なお、貝原益軒の「益軒十訓」の英訳:KenHoshino,TenKun(TenPrecep
ts)Bk.i.(1710)[Stevenson:The Macmillan Book of Proverbs, Maxims,& Famous
Phrases,1948]には Time flies swiftly as an arrow, and the seasons pass quic
hly as a stream.とあります。「光陰」と「矢」の連想は直接に李白や朱喜の詩から
ではないかも知れませんが、「日本国語大辞典」を見ますと早くも「曽我物語」や「
日葡辞書」にも浮世草紙「武家義理物語」にもありますので、この結びつきは早くか
ら我が国では普通のようでした。英語ではHow time flies! が普通のようですが、古
くは Time fleeth/flieth (away/ without delay) とあり、カッコの中は1.両方あ
る.2.どちらか一つだけ、と全部で三通りあるようです.たまたま見つけたのは C
haucer: TC, the Clerkes Tale 119 、Ay fleeth the tyme, it nyl no man abyde
です.チョーサーの場合は古典に同じような文があるかも知れませんが、調べていま
せん。ちなみに、我が国では「太平記」に「光陰不待人」とあります。



From:
Subject: [lex] kick the bucket {2}
Date: Mon, 17 Aug 1998 17:50:40 +0900

杉本一潤先生:

加藤@岩手医大です.

>  私がこのイディオムを知ったのは、当時NHKの英語会話の講師で
> あった松本亨先生の「ことばの花かご(熟語編)」(英友社, 1961)
> 〜英語らしいイディオムの感覚を養わせてくれた本として忘れることが
> 出来ません〜でそこにはこう書かれています。その頃大好きだった
> 西部劇の連想も何となく手伝って、頭にこびりついていましたので、
> これを読んで「おやっ」と思いました。
>
>  あまりよい話ではな「が、昔罪人を死刑にするときは、バケツの上に
> 立たせて首をくくり、執行人はそのバケツをけって処刑したものである。
> 今日では"kick the bucket" は自動詞として「死ぬ」という意味に使わ
> れる。
>  
>  松本先生の説は手元の辞書では見あたりませんでしたが、載って
> いる辞書どこかにあるでしょうか。(或いは、もしかすると長いアメリカ
> 滞在中にどこかで聞かれた俗説なのかなとも思いましたが ....)

辞書ではありませんが,たまたま読んでいた本に言及がありました.Raymond
W. Gibbs, Jr., The Poetics of Mind: Figurative Thought, Language, and
Understanding (Cambridge University Press, 1994), pp. 276-277 です
(引用文中のイタリックは大文字に変えました):

People generally think that KICK THE BUCKET comes from the situa-
tion of a condemned man with a rope around his neck who suddenly has
the bucket he is standing on kicked out from beneath him. However,
the phrase KICK THE BUCKET probably comes from a method of slaughter-
ing hogs where the animal was strung up on a heavy wooden framework
and its throat cut. BUCKET is thought be an English corruption of
BUQUET, a French word for the wooden framework that the hog kicked in
its death struggle.

たまたま勤務先の図書館にあった Slang and Its Analogues, Past and
Present, Compiled and edited by John S. Farmer and W. E. Henley
(Printed for Subscribers Only, 1896) という7冊本の, KICK THE BUCKET の
1785年から 1892年の15例を見ても,絞首刑の例は見当たりません.この説は
松本先生が「滞在中にどこかで聞かれた俗説なのか」もしれませんね.

>  手元の何冊かの辞書を引いてみると、今は次のように二つの説が
> あるようです。
>
>  A euphemism for 'to die', it comes from either the suicide's
> kicking away the bucket on which he/she is standing, in order
> to hang him/herself, or from the 'bucket beam' on which pigs
> were hung <after>being slaughtered.
> -- Rees, N.: Bloomsbury Dictionary of Phrase & Allusion
> (Bloomsbury, 1991)
>
手元にある William and Mary Morris, Morris Dictionary of Word and
Phrase Origins (Harper and Row, 1977) も同じです.

まだ見てはいないのですが,Random House Historical Dictionary of
American Slang (Vol. 1: A-G) (Random House, 1994) という大冊の辞書もあ
りますから,そちらにはもう少しくわしい情報があるかもしれません.



From:
Subject: [lex] lex {1}一時停止について
Date: Tue, 18 Aug 1998 10:12:33 +0900

lexicographer各位

島根大学の学外ネットワークが保守のため一時的に停止します。したがいまして,
下記の期間中,辞書学MLが一時停止します。皆様にはご不便をおかけしますが,
何とぞご理解の上ご協力のほどお願い申し上げます。

(日時)1998年8月30日(日) 09:00〜17:30
     1998年9月 6日(日) 09:00〜17:30

**********************井上永幸 <>*********************
[辞書学MLログを公開中: http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html]
--辞書学ML脱会は宛てにsignoff lexと送る--



From:
Subject: [lex] Question Box {2}索引/語法大事典
Date: Tue, 18 Aug 1998 10:14:48 +0900

飯塚様

いつも素早い対応をありがとうございます。さて,下記の件,少し時間が経って
しまい失礼しました。

> 2) QB 索引
>  Question Box のうち,『ジーニアス英和』に関係するものを中心にしたキー
> ワード索引を個人的必要から作ってあります(1987年11月から)。もしさしつか
> えなければ,このMLの発言として掲載しましょうか。

QBは一般読者向けに書かれた内容ですし,辞書の記述に関心をもたれた方がアク
セスしやすくなるというメリットもありますので,ご多忙のところお手数をおか
けして恐縮ですが,掲載の方宜しくお願い申し上げます。<m()m>

**********************井上永幸 <>*********************
[辞書学MLログを公開中: http://lexis.edu.shimane-u.ac.jp/inoue/ml_log.html]
--辞書学ML脱会は宛てにsignoff lexと送る--



From:
Subject: [lex] 辞書について {1}
Date: Tue, 18 Aug 1998 17:32:09 +0900

岡田@日大理工です.いつもいろいろ勉強させて頂いて感謝しています.ところで、
最近思うのですが、随分英語の辞書が出版されているものだな、ということです.さ
らに各種試験用の単語集まで入れると大変な数になりますね.国語関係のものよりは
るかに多い.これに英米の辞書があり、さらに各国語辞書が加わる.外国語習得に熱
心な国民ということになるでしょうが、こういう国は世界でも珍しいのではないでし
ょうか.それで私も英語教師の端くれですので日ごろ使用している英語の辞書につい
て、いろいろ気のついたことを書いてみようとおもいます.時には些細でつまらない
こと(の方が多い?)や中傷的と誤解されることもあるかとも思いますが、他意はあ
りません.学生さんの使用するときにいいアドバイスをできればと思っているだけで
す.ただ身銭を斬って買ったものですから少々位文句を言う権利はあると思ってはい
ます.もちろん過日批評に関しての投書も読んで承知していますが.ただこのリンク
は英語関係の方々が大部分で、とくに辞書学専攻の方や実際に辞書編集に携わっいる
方が多いと思いますので、まったくの素人の意見にもそれなりの理解を示されて下さ
るものと、こちらで勝手に解釈しているだけですが、ご容赦願えれば幸いです.



From: "Mayumi Nishikawa" <>
Subject: [lex] 'Here you are.' and 'Here you go.' {1}
Date: Wed, 19 Aug 1998 10:07:03 +0900

皆様、初めまして。大阪女子大学M2 西川です。いつも各先生方のご意見や研究内
容を興味深く拝見させていただいてます。

さて先日来話題になっております'Here you are.' 'Here you go.'についてです
が、何かの参考になればと、数日前のフロリダ旅行での体験を紹介させていただきま
す。

結論からいいますと、圧倒的に'Here you go.'が多かったということです。10日間
の滞在中、例えばお店でものを手渡す場合、'Here you are.'を聞いたのはたった
1っかいだけで、それも’Here you go, here you are.' とならんで使われていまし
た。LDOCE5やGENIUSに記述がありますが、COBUILD2にはありませんし、日本でもあま
りなじみのない表現なのでとまどいました。

'Here we go.'のようにも聞こえますが、やはり「さあ、いくぞ」と言うようなとき
に使われるだけではないでしょうか。例えば、信号が青に変わってわたろうというと
きや、車に全員が乗り込んで出発するときなどに、耳にしました。現地のアメリカ人
の友達にも確認しましたが、'Here we go.' は、ものを手渡すときには使わないとい
うことです。しかし表現は、場所や人によって異なるかもしれませんので、確実なこ
とはわかりません。
'Here we go.' 'Here you go.' は、発音がとてもよく似ているので聞き分けにくい
のは事実です。

またいろいろなことを勉強させていただきたいと思っております。どうぞよろしくお
願いします。


From:
Subject: [lex] make a pass at {1}
Date: Wed, 19 Aug 1998 14:36:58 +0900

岡田@日大理工です.一昨日読み終えたばかりですが、次のような個所で目が止まり
ました.
David Lodge, _A David Lodge Trilogy --Small World _ (Penguin,1989)
'You know that American professor's wife back at the party? She made a pass
at me.' 'She made a pass at me too,' said Parsse. (p.413)
Philip had the feeling that to make a pass at one of them [girl students]
might provoke a diplomatic incident. (p.444)
さっそく手元の英和辞書に当たったところ以下のようになっていました.辞書は順不同
.新英和中辞典5:[女] に言い寄る、モーションをかける
グローバル英和辞典:1.(剣で)突きをする 2. [話]ちょっかいを出す(at...[女性])

プログレッシブ英和中辞典2、3:1.(フェシング)突く 2. に攻撃をかける、な
ぐろうとする、を試みる 3.(略式)(女に)言い寄る
EJ英和中辞典 (講談社):(女に)言い寄るーー5,6参照
ジーニアス2(大修館):1.(フェシング)突く 2. に攻撃をかける、を試みる
3.(やや略式)(女性に)言い寄る、(人に)しっつこくつきまとう
リーダーズ英和辞典:(口)女にモーションをかける[ちょっかいを出す]
英和中辞典(旺文社):(俗)女を口説く
ヴィスタ英和辞典:くどく
大英和(研究社):独立項目なし.passの項にそれぞれ:(口語)(異性に)いやら
しく(なれなれしく)近寄ること、色目を使うこと;[フェシング] 突き. そして
それぞれmake a pass at とある.
*すぐ気が付くことは、1.全部、男が行動をおこすことになっていること.まあ、
フェシング用語が元であれば解らないこともありませんが. 2.中英和、EJ (講
談社)、ヴィスタになんの表示もないこと.3.プログレ英和中とジーニアスが「を
試みる」をあげていてことも含めて、 酷似.4.大英和と他の辞典のはっきりした
違いは、「(女に)」と「(異性に)」.最初の引用文からすると少し大英和の方が
正確?  (感想):5.[ちょっかいを出す]は完全に間違い.6.「モーションを
かける」なんて、今の若い人使いますか.さらに英語を英語で言い換えるなんてのも
いただけない.7.講談社だけが passes と複数形をあげている。
序でだから英英辞典に当たると
OALD3(1974): make a pass at ( a woman) -(_sl_)make (possibly unwelcome)
amorous advances
OALD5(1996): to try to attract sb sexually
COD8(1990): _colloq_. make amorous or sexual advances
CIDE : pass [SEXUAL ACTION] an attempt to speak to or touch someone in a
way that shows you are sexually attracted to them
COBuild: to try to begin a romantic or sexual relationship with you
LCDE(1995): _informal_ to try to kiss or touch another person with the
intention of starting a sexual relationship with them
LDLC: _sl_ (esp. of a man) to invite or attempt sexual activity, either
with words or by trying to touch( a member of the opposite sex)
NTC's AELD:_idiom_ to attempt to flirt with someone; to make unwanted
sexual invitaion to someone
ここで気が付いたこと:1.[(女に)]とある英和辞書はどれが発信地か解らないが
未だにOALD3の記述をそのまま使っているらしい事
2.大英和(研究社)の「(異性に)」ももはや古い事.と言うのはCIDEの例文は明
らかにホモの場合のものであるから.例文参照されたし.「いやらしく」と言うのは
客観性をもたせようとした編者の勇み足?むしろ「(なれなれしく)」のカッコはい
らないだろう.3.もっと直接的な言葉を使えばはっきりするのに辞書ではそうも出
来ないから残念だろうが、「近寄ること」「モーションをかける」は間違いではない
にしても十全に意味を伝えていないと思われる.「誘いをかける」では少々上品?む
しろ「せまる/せまられる」ではないか?.4.英語のsl, colloq. informalも区
別が難しいがもうスラングではないのでは?そしてunwelcome, unwantedの場合もあ
るだろうがromanticではないのではないだろうか?5.英語では、もはやフェシング
用語からのある連想は意識されずに、普通はセックスの意味でしかつかわれないよう
だ.6.それにしても英和辞典制作は大変だろうとお察しする.たとえば、受験生の
決定版とか高校生に最適と言う以上こんな熟語も載せなければならないのですから.
ところで、スラング、口語、略式、あるいは無印のものという区別はなにを根拠に決
めるのでしょうか、ご教示乞う次第.



From:
Subject: [lex] make a pass at {2}
Date: Wed, 19 Aug 1998 17:05:44 +0900

岡田先生:

加藤@岩手医大です. make a pass at についてのご報告拝読しました.

> ところで、スラング、口語、略式、あるいは無印のものという区別はなにを根拠に決
> めるのでしょうか、ご教示乞う次第.

これらの用語(特に slang)の定義とその問題点については The Oxford Com-
panion to the English Language (1992) に要を得た解説があります.

また,Connie C. Eble (1985), "Slang: Variations in dictionary labeling
practices," The Eleventh LACUS Forum 1984 (Hornbeam Press, South
Carolina), pp. 294-302 は当時の米国の辞書の labeling の実態調査です.

Eble には Connie C. Eble (1994), "Slang and usage," in Centennial Usage
Studies ed. by Greta D. Little and Michael Montgomery (Publication of
the American dialect Society, Number 78), pp. 15-18 という短い論文があ
ります.その論文の一部を引用します.原文のイタリックは大文字に変えまし
た:

Dictionaries, the ordinary repositories of information about words,
are ill-equipped to record slang. For the most part, slang is slip-
pery in meaning, short-lived, restricted to marginalized groups, and
oral--all characteristics that militate against slang's showing up
frequently and consistently in the files on which dictionaries are
based. Nevertheless, SLANG is a label in almost all contemporary
American dictionaries of English, although just what the label means
and its relationship to other usage labels can vary widely. (p. 17)

The labeling of specific lexical items as SLANG varies from dic-
tionary to dictionary, as shown in a check of fifty items in five
desk dictionaries published 1975-83 (Eble 1985). Only BREAD 'money'
and SCHMO 'oaf' bear the label SLANG in all five dictionaries and
also in the more recent RANDOM HOUSE of 1987. (p 17)

The greatest range of variation is shown by the labels attached to
BOOZE 'alcohol'--which carries no label in one, is marked COLLOQUIAL
in one, SLANG in one, and INFORMAL in two. (p. 18)

以上のような状況が現実ではないかと思います.



From:
Subject: [lex] Here you go/Here you are {1}
Date: Thu, 20 Aug 1998 00:04:29 +0900

西川様

Here you are./ Here you go. のレポート興味深く拝見しました。バーミンガム
から発された疑問がフロリダで検証されるというのは、まさに電子メディア
時代の語法研究といえます。
これからも投稿を続けてこのメーリングリストを盛り上げて下さい。
___________________________________________________

 ウ630-0267 生駒市仲之町3番46-401
  南出康世  
 エ0743-75-7050. FAX 0743-75-7050. NIFTY VYB07031
___________________________________________________



From:
Subject: [lex] Here you go/Here we go {1}
Date: Thu, 20 Aug 1998 06:21:17 +0900

久しぶり投稿の東海林@バーミンガムです。
(パソコンの不調によりしばらく投稿できずにいました。)

西川さん、フロリダでの体験話をありがとうございました。
私も最近の自分の経験から、Here you goの頻度の方が圧倒的に高いと確信する
に至っています。

> 'Here we go.'のようにも聞こえますが、やはり「さあ、いくぞ」と言うよ
> うなときに使われるだけではないでしょうか。例えば、信号が青に変わって
> わたろうというときや、車に全員が乗り込んで出発するときなどに、耳にし
> ました。現地のアメリカ人の友達にも確認しましたが、'Here we go.' は、
> ものを手渡すときには使わないということです。しかし表現は、場所や人に
> よって異なるかもしれませんので、確実なことはわかりません。
> 'Here we go.' 'Here you go.' は、発音がとてもよく似ているので聞き分
> けにくいのは事実です。

実はHere we goには(少なくとも英国では)物を手渡すときに使う用法もあるの
ではないかと最近では思っています。
これは自分がそう聞こえた場面が何回かあったためで、まだ英国人に確かめたり
はしていません。

南出先生:

> Here you are./ Here you go. のレポート興味深く拝見しました。バーミン
> ガムから発された疑問がフロリダで検証されるというのは、まさに電子メデ
> ィア時代の語法研究といえます。

おっしゃるとおりですね。
辞書作りの場面でも、このような情報網が効率的に活用されるようになることを
期待したいところです。

Hiroshi Shoji
<University of Birmingham, UK>
<Shion Junior College, Japan>



From:
Subject: [lex] シンポジウムのアブストラクトを {1}
Date: Thu, 20 Aug 1998 23:23:28 +0900

JACET英語辞書研究会よりご連絡

9月11日のシンポジウムの詳しい内容が司会の赤須 薫氏より届きましたので
次に掲載致します.多くの方々のご出席を期待しております.(村田 年)

------------------------------------------------------------------
既にご承知の方も多いことと存じますが、来月(9月)11日から3日間にわたり
まして、JACETの全国大会が開かれます。
会場は、岡山市の就実女子大学になります。
初日の11日(金)に、英語辞書研究会企画による英語辞書に関するシンポジウ
ムが行われます。
どうぞ奮ってご参加くださいますようお願い申し上げます。

以下の文章は、当方でまとめて運営委員会の方へ最終的に提出したシンポジウ
ムの概要です。
その後時間の経過がありますので、提案者の発表の内容に若干変更がありえま
すが、大方はここに記してある内容になります。
1時間半という極めて制限された時間ではありますが、当日ご意見等をたくさ
んいただいて、良いシンポジウムにしたいと考えております。

                            (文責 赤須)
                    

             学習辞書と用例
    Illustrative Quotations in Learners' Dictionaries

   司 会   赤須 薫(東洋大学)
提案者   土家裕樹(京都外国語短期大学)
提案者   土肥一夫(東横学園女子短期大学)
提案者   山田 茂(早稲田大学)

 辞書において「語義記述」が心臓部と言えるかもしれない。しかしながら、
それに優るとも劣らず重要な部分として「用例」がある。用例は、語義記述ほ
どには注目を浴びない存在かもしれないが、意味的な情報のみならず、統語
的・語用論的・文化的など種々の情報を具現化し、それを支える極めて重要な
要素である。
 本シンポジウムにおいては、提案者各自に自らが得意とする分野を担当して
もらい、それぞれの視点から学習辞書の用例を論じてもらうことにする。それ
によって、学習辞書の質的向上に寄与することを目的とする。
 これまでのところ、用例を前面に出して討論を行ったシンポジウムは比較的
少なかったのではないかと思われる。今回のシンポジウムは用例に関する貴重
な討論会となるであろうし、またそうなることを切に願っている。会場からも
意見を多く出してもらい、本シンポジウムをぜひ有意義なものとしたい。

 各提案者の発表の概要は以下の通りである:
@ 語法研究から見た辞書の用例と解説 --法助動詞に焦点を当てて--
                           土家 裕樹
 Swan & Smith (1987)が 'There are very few bad Japanese-English/
English-Japanese dictionaries in Japan, and there are many
excellent ones.' と言うように、近年、日本で優れた英和/和英辞典が出版
されている。また、1995年にはCOBUILD2を初め、多くのEFL/ESL関係の辞書
がこの世に出た(an unparalleled year in ELT dictionary
publishing--EFL Gazette)。語法は時代の移り変わりと共に変化していく。
辞書は、規範主義、記述主義、折衷主義のいずれに基づくものであれ、言語事
実を正しく反映していることが要求されるのは当然のことである。しかし、辞
書の作成は年月を要し、出版するころには語法が変化していることも稀なこと
ではない。また、記述に誤りが見られたり、重要な新事実が記述されていな
かったりもする。この発表で、そうしたことに対して網羅的に言及することは
不可能であるため、法助動詞に焦点を当てBolingerの、One meaning, one
form.(1977)という原理を応用し、論究してみる。

A 学習者対象の英語辞典における用例・例文
                 土肥一夫
英語を外国語として学習する人々の要求に答えるという目的が英語の学習辞典
にはある。日本人の学習者を対象とした英和辞典の流れをたどるうえで、英英
辞典の存在、役割、影響は無視できない。今回はこの約半世紀を振り返り、英
英辞典ではどのように例文・用例を位置付けてきたかを簡潔にたどってみた
い。もし時間が許せば、英和辞典にも触れたい。
(1) 学習者対象の英語辞典(1930年代のWest, Palmer以降の辞典)
(2) ほぼ半世紀の展開(ISED・OALD〜LDCE〜COBUILDへの流れ)
(3) 用例・例文を重視した編者、辞典
(4) 辞典における用例・例文の位置付けとその役割
(5) 今後のあり方
A. コーパスの構築とその詳細な研究
(ネイティブコーパスと学習者コーパス)
B. ユーザーの研究
C. 用例・例文の役割
D. 用例・例文中心の辞典
(教師、研究者、専門家 vs. 一般学習者、利用者)
  E. その他  ア. 形態と価格
         イ. 出版社と編者

B 辞書と用例:辞書使用の観点から
             山田 茂
EFL辞書の用例に纏わる問題を辞書使用、特に1学習者と2教師の辞書使用と
いう観点から論ずる。
1 学習者が解釈のために学習英英辞典をうまく引くことができない理由の一
つは(英和辞典から学習英英辞典への移行がスムーズに行かないのは)、英和
辞典検索の段階で(訳語を文脈に当てはめていく)意味的な検索が多用される
余り、用例、それに付随する文型表示等が有効に活用されていないためであ
る。
2 英語教師もEFL辞書使用者であるが、授業の予習のため、特に教室の場で
板書等を通じ学生に用例等を提示するために辞書を用いる、という点で一般使
用者とは異なる。教師は一般に上級学習者に属し、EFL辞書の大きな購買層で
あり、上記のような目的がその辞書使用に占めるウェイトは小さくない。リ
サーチにより教師のこのような辞書使用の側面、傾向(教材として提示するた
めどのような用例が好まれるか等)が明かになれば、今後のEFL辞書の形に一
つの方向性を示すことができるはずである。

                                以上


→ログメニューへ