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1998年11月 (21日〜30日)


From: Kazuhiro Sugimoto <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] 分割不定詞 {02}
Date: Sat, 21 Nov 1998 01:46:08 +0000

近藤先生

埼玉の杉本です。

> (1)今現在、分割不定詞に対しては学問的にはどういう扱いになっているの
> でしょうか。どういう意見が大勢を占めているのでしょうか。

> (2)私の手持ちの文法書には「分割不定詞」について説明したものがないの
> ですが、この問題について説明してある文法書がございましたら書名と出版社
> 名をお教えいただけないでしょうか。

私は分割不定詞を教室で教えた記憶がありません。文法を独立して教えて
いたときの教科書のTeacher's Manual を取り出して(ほこりをはらって)
見てみましたがやはり載っていませんでした。リーダーでもおそらくなかった
のではないかと思いますが、そこまで記憶がはっきりしているわけではあり
ませんので、もしかすると出てきたのかもしれません。でも原文はそうで
あっても教科書では書き換えられた可能性も高いのではないかとも思いま
すが。

その文法書は次の三冊です。
  Unicorn English Grammar. Revised. 文英堂、1985
My English Grammar.            旺文社.、1981
A New Guide to English Grammar.    東京書籍、?

分割不定詞については次の文法・語法書に解説が載っています。

 江川泰一郎『英文法解説』 p. 329 (金子書房、1991 )
 宮川幸久他『ロイヤル英文法』 p. 418 (旺文社、1988 )

 Swan, M.: Practical Engish Usage. p. 260 (Oxford, 1995)
Collins Cobuild English Usage. p. 664 (HarperCollins, 1992)
(これが例文も豊富で一番詳しく書かれています)

もう一書から一部を引用しますと、

Long a major bone of contention among teachers, grammarians, and
commentators on style and usage, the split infinitive in the last two
decades has become a matter of minor concern. Many younger speakers
and writers split or leave intact their infinitives without being aware
that the matter was ever controversial. Probably the most famous split
infinitive in the language is <to boldly go (where no man has gone
before), occurring in the opening voice-over of the US television series
<Star Trek> (1960s), and subsequently often parodied.  
-- McArthur, T. (ed.): The Oxford Companion to the English Language.
p. 897. Abridged Edition. Oxford, 1996
( italics の箇所を< >で囲みました)

上記の書には一例も見られませんが、手元に次のような受け身の例が
ありました。これなども「分割不定詞」に入ると考えてよいのでしょうか。

 For me, the marriage was a contract, not to be lightly broken or
ever broken.
  -- Wallace, I.: The Prize, p. 514
 August Hugo Black had warned her, had he not, that Gates was not
a man to be lightly dismissed.
 -- Leason, B.: Richer than Sin, p. 1
The most important thing is to be spiritually fulfilled.
 -- Mainichi Weekly, June 22, 1996



From: Kazuhiro Sugimoto <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] 分割不定詞 {02}
Date: Sat, 21 Nov 1998 02:32:24 +0000

埼玉の杉本です。

先程布団にもぐりこんでから、とんでもない間違いをしてしまったのに
気がつきました。
最後に「手元に次のような受け身の例がありました。これなども
「分割不定詞」に入ると考えてよいのでしょうか」と書きましたが、
to と原形の間に副詞が入るのが「分割不定詞」なのにそうでない
例を勘違いしてしまいました。

大変失礼しました。お許し下さい。



From: SONODA Katsuhide <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] kwic on AltaVista {06}
Date: Sat, 21 Nov 1998 04:39:12 GMT

園田@北大言語文化部です。

コーパス言語学でプログラムの技能が必要かどうかということについてですが、
佐藤先生が引用された拙文の補足をさせて下さい。

基本的な考え方は、東海林先生や投野先生に賛成です。それぞれの人の興味、
目的、置かれている立場によってプログラムの技能は必要とされたり必要でな
かったりすると思います。

> 「grepあるいは既成のコンコーダンサーが大変高機能であるために,われわ
> れのコンピュータ利用はこれらのソフトウェアに依存しがちである。しかし,
> この傾向は結果的にコーパス言語学の可能性を著しく狭める恐れがある。こ
> のgrepの呪縛から脱するためには,プログラムの学習が有効である。そして
> その入門的材料として語彙頻度表は最適である。」
> 園田勝英(1998)「コーパスに基づく語彙研究」,p. 106,『英語コーパス言
> 語学』,研究社

「grepの呪縛」ということを考えたのは、敬愛する友人の英語学研究者と話し
ているときでした。その友人は大量の英文を自前でコンピュータに蓄積してい
て、それをコーパスにしています。使うソフトは専ら grep ですが、grep だ
けで随分沢山論文を書いています。彼が、「コーパス言語学なんて、所詮
grep じゃないの」と言ったのです。ある意味で真理をついているのですが、
割りきれないものを感じました。

言語データをコンピュータで分析する方法は grep の他にもあって、それらに
よって新しい事実が発見できるはずだ。grep 以外の道具を使って、いろいろ
な有意義な仕事がコンピュータ上で出来るはずだ、と思っていたわけです。上
の引用はその友人の顔を思い浮かべながら書いたものです。

私は15年以上前にアメリカの大学の言語学科で、Snobol というプログラム言
語でテキスト処理を実習するコースを受講して、コーパスに目覚めました。そ
のためか、頭の中でコーパスとテキスト処理というのを切り離せません。
Birmingham や Lancaster ではプログラムの授業が無いと知り大変驚いてしま
いました。そういうのがイギリスの行き方なのですね。

数ギガの容量のディスクを持つ高性能のコンピュータを何台も個人で所有でき
る時代に、一人でコツコツと大量のデータを分析してみようとする人は沢山い
ると思います。そういう人には、プログラムを知るといろいろ可能性が開けま
すよ、と私は言いたいです。

園田勝英 (Sonoda Katsuhide)
北海道大学言語文化部, 〒060-0817 札幌市北区北17条西8丁目
FAX 011-736-2861(園田宛明記)



From: 村田 年 <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] ワークショップ会場への地図 {01}
Date: Sat, 21 Nov 1998 22:56:06 +0900

JACET英語辞書研究会からのご連絡 1998.11.21

ワークショップ:英語の辞書   11月28日(土)11:00--5:20

今回は早稲田大学までの地図を中心にお知らせ致します.

1.キャンパス付近の地図(できれば郵送されたプログラムの地図をだれかに
  見せてもらって下さい.)
 地下鉄の出口を出たら「早稲田大学西早稲田キャンパスはどっちですか」
  と聞いた方が無難です.南門からお入り下さい.

*印:地下鉄出口です.
  大隈会館 大隈庭園
大隈講堂

  正門 | ○バス停
|| ||
|| ||
大隈銅像 || ||
   || ||
6号館 || ||
13 7号館 || ||
号 12   8号館 || ||
館 号 11 南門 | ||
館 号 10 || ||
館 号 9 || ||
  館 号 || ||
館 || ||
|| 早稲田中高校 ||
___ ________||____________* ||_____*_
第3西門 地下鉄早稲田
_____________ _______ _____
交番 | | ||*
神社 | | つ||
| | ぼ||
八||

2.交通のご案内(〒169-8050 東京都新宿区西早稲田 1-6-1 早稲田大学 西早
 稲田キャンパス 11号館4階:地下鉄の方は南門または第3西門から,バスの
 方は正門から入り,大隈銅像の後ろ側へ向かって歩いて下さい.
 1)東京駅より
   a)地下鉄丸の内線「東京駅」乗車 ― 大手町駅下車,東西線「大手町
    駅」乗車 ― 早稲田駅下車.地図に従って約5分歩く.(東京駅より
    待合わせ・歩く時間も入れて30〜40分)
   b)地下鉄「大手町駅」まで標識に従って歩く(10分少々).東西線「大
    手町駅」乗車,以下 a) に同じ.(東京駅より歩く時間も入れて
    30〜40分.これは少し歩きますが単純でわかりがいいのでお勧めです)
   c)JR中央線乗車 ― 新宿駅下車,山手線池袋・上野方面行き乗車 ―
    高田馬場駅下車,スクールバス「早大正門行」乗車終点下車で正門か
    ら(35〜45分),または馬場下町下車で第3西門から(30〜40分)お
    入り下さい.(これが一番歩きません.)(高田馬場駅から歩くこと
    もできます.約 20分.タクシーもこの駅がいいでしょう.)
2)その他の駅より
JR高田馬場駅または地下鉄東西線早稲田駅にお出でになり,1)に従っ
   て下さい.

3.ホテルの紹介:ホテルを紹介してほしいとのメールが入っています.
 JACETでよく使う,交通の便がよく,新しくて,比較的安くて,サービ
 スのいいホテルに次のものがあります.直接電話で予約して下さい.

1)九段会館:地下鉄東西線「九段下」すぐ.03-3261-5521.(一番近い)
2)KKR Hotel Tokyo(旧竹橋会館) 地下鉄東西線「竹橋」すぐ.
  03-3287-2921.
3)東京ガーデンパレス (旧湯島会館) JR・地下鉄丸の内線「お茶の水」
3分.03-3831-6211.

4.懇親会は90人分用意しましたが,予約でいっぱいになりそうです.
早めに予約して下さい.

◎このワークショップについてできるだけ多くの方にお知らせ下さい.

◎連絡はできれば E-mail で,下記までお願いします.
       事務局:村 田  年
FAX:043-290-3747 TEL:0474-23-5475
 〒273-0865 船橋市夏見4ー9ー5



From: "Hiroshi Shoji" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] kwic on AltaVista {07}
Date: Sat, 21 Nov 1998 19:32:33 -0000

東海林@バーミンガムです。

Corporaというメーリングリストで私が加わる前に「言語学者にプログラミング
は必要か?」という論争があったと聞いていたものですから、そのような論争は
lexではしたくないと思っておりました。

園田先生:

> Birmingham や Lancaster ではプログラムの授業が無いと知り大変驚いてし
> まいました。そういうのがイギリスの行き方なのですね。

実は上記の論争で「必要である」との立場に立った一人がバーミンガム大の研究
者なのだそうです(私も何度かお会いしたことがある方です)。
「プログラムの授業が無い」=「言語学者にプログラミングは必要ない」という
わけではないと私は思います。
1つのDepartmentの中にいろいろな個性の研究者がいて、それぞれの持ち味を発
揮しながら投野さんがおっしゃるように「協力」し合うというのが理想的な形な
のではと思います(もちろん、Departmentや大学の枠を超えての協力が更に望ま
しいでしょうね)。

園田先生の「プログラムを知るといろいろ可能性が開けますよ」という御発言は
本当にその通りだと思います。
ただ、可能性を切り開くものが「プログラム」の他にもあるのではないかという
ことを言いたかったために前回のような発言をさせていただいたことを御理解い
ただけましたら幸いです。

どうも失礼致しました。

Hiroshi Shoji
<University of Birmingham, UK>
<Shion Junior College, Japan>



From: (SATO Hiroaki)
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] kwic on AltaVista {08}
Date: Sun, 22 Nov 1998 12:02:14 +0900

At 7:32 PM 98.11.21 +0000, Hiroshi Shoji wrote:
>1つのDepartmentの中にいろいろな個性の研究者がいて、それぞれの持ち味を発
>揮しながら投野さんがおっしゃるように「協力」し合うというのが理想的な形な
>のではと思います(もちろん、Departmentや大学の枠を超えての協力が更に望ま
>しいでしょうね)。
自分の必要な処理をしてくれる30行の簡単なプログラムを他人に書いてもらう。留学
中は恵まれた環境なので,これで仕事ができるでしょう。

でも,日本に戻ってくると,コンピュータの組立,ソフトのインストール,プログラ
ムの作成,データ収集,データの処理,論文にまとめる作業など全てを自分一人でや
らなければならない状況が生まれます。科研費などを申請して「プログラム作成費用」
で,他人にプログラムを書かせることもできますが,科研費が通るのは,うまく行っ
ても1年先のことです。今日やりたい30行のプログラムは,自分で書けた方が,研究
の可能性が広がると思います。

At 5:04 PM 98.11.20 +0000, Hiroshi Shoji wrote:
>世界最大のコーパスを有するバーミンガム大学のMAでは、プログラミングの
>「授業」は開講されておりません(CALLの授業はありますが)。
>先生のおっしゃる「コーパス言語学の大学院」というのは、具体的にはどちらを
>指していらっしゃるのか教えていただけましたら幸いです。
コンピュータ関連の分野は,アメリカのカリフォルニア州のシリコンバレーの周辺の
大学が強いような印象を受けます。スタンフォード,バークレー。(Linuxと並んで
無料のUnixとして有名なFreeBSDのBは,バークレーのことです。)

でも,アメリカでは,コーパス言語学が余り盛んではないようですね。私の読んだコー
パス言語学関連の本で出てくるアメリカの超有名言語学者で,シリコンバレーの周辺
の大学にいるのは,バークレーのFillmore先生でしょうか。

この先生が提唱した格文法は,今でもコンピュータ言語学で機械翻訳の基本理論とし
て使われています。コンピュータとの相性がいい理論なのでしょう。Fillmore先生は,
最近流行の認知言語学分野でも,活躍しています。(古典的)生成文法,コーパス言
語学,コンピュータ言語学,認知言語学などなど,なんでもできるスーパーマンです。

将来,バークレーは,アメリカ版巨大コーパスの発信地となる予感がします。
___________________
(SATO Hiroaki)
http://www.senshu-u.ac.jp/~thc0408/
専修大学・商学部・助教授(英語)
佐藤弘明



From: 村田 年 <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] ワークショップ連絡の訂正(宿泊 {01})
Date: Sun, 22 Nov 1998 17:01:54 +0900

村田 年(千葉大)です.

ワークショップ時の宿泊について訂正します.訂正いただいた古田様に
感謝申し上げます.
以上,お詫び申し上げます.

実は「宿泊施設ご案内」に関することでお知らせしたいことがあります。Jacet
からご案内して頂いている3件の宿泊施設は全て先週の段階で全館満室でした。
以下のホテルは、まだ部屋が若干あるようです。

フェアーモントホテル:地下鉄「九段下」徒歩7−8分
           03-3262-1151
東京YMCAホテル:JR「神田」徒歩10分
        03-3293-1911

なお、案内では東京ガーデンパレスの電話番号が03-3831となっていましたが、
正しくは03-3813-6211です。ご確認下さい。以上、差し出がましいかと思いまし
たが、もしかしたらお役にたつことがあるかもしれないと思い、私が気づきまし
たことをお知らせ致します。
早々

滋賀大学院生
古田美和子



From: 南出 康世 <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] LID と CIDI {01}
Date: Mon, 23 Nov 1998 10:48:49 +0900

Longman Idioms Dictionary (LID) とCambridge International
Dictionary of Idioms (CIDI) が新しく発売されました。すでに東海
林先生からこの2冊について紹介がありましたが、2冊を比較する形で
改めて簡単に紹介します。

(1)コーパス:両者ともコンピュータコーパスを使用しているがそれ
ぞれ、親版のLDOCE3 とCIDEとに基本的に準じる。
(2)収録イディオム数:LIDは「6000以上」(more than 6000)、
CIDIは「およそ7000」(around 7000)といっている。差はそれほど
ないという印象を受ける。

(3)コーパスと用例の関係「用例は未加工か、加工か」;関係する個
所を英語のまま引用すると、LID はthousands of examples from the
Longman Corpus Network and the Internet/ example sentences
based on material taken directly from the corpora と言い、CID
I はthousands of example sentences based on the Cambridge
International Corpus と言っており、両者とも「コーパス準拠」だが、
ざっと見た範囲ではのLIDの方がより忠実にコーパスに準拠しているよう
だ。参考にhave/get one's day in court の例を比較してみよう:

For years, most historians assumed that there was no difference
between Kennedy's and Johnson's Vietnam policies, but now
people like Professor Newman are having their day in court.
[LID]

She was fiercely determined to get her day in court and the TV
interview would give it to her. [CIDI]

(4)見出し語配列方式:両者ともkey word のアルファベット順配列。
ただし両者で key word の解釈が異なるので微妙な差が存在する。LID
では名詞を含むイディオムの場合は機械的に(最初の)名詞がkey word
で、CIDIでは、重要な語(important word)がkey wordである。たとえ
ば、a zero-some game はLID ではgameのもとに、CIDIでは
zero-someのもとに収録されている。また検索方法も異なり、LIDでは本
文から(空見出(クロスレファレンス)あり)、CIDIはCIDEに準じて巻
末のIndex でチェックしてから本文(空見出なし)に入る仕組みになって
いる。実際こんなめんどうな手続を踏んで検索する人はいるのだろうか。
もちろんある程度の空振りを覚悟すれば、いきなり本文から入ることもで
きる。

(5)定義:それぞれ、LDOCE 3とCIDEに準じて制限定義語彙を使用。
これを使った句形式定義(シノニムパラフレーズ)とコウビルドが開発し
た文形式定義(ただし、LIDには文形式定義はそれほど多くない)を併用
する点でも両者同じ。注目すべきは句形式定義の一つとしてLIDが多用し
ている"used" 定義である。"used"定義(用法の規則に基づいた定義なの
で rule-based definition とよばれる)は元来機能語の定義に用いられて
きた(たとえば、at = used to show a point in space where someone
or something is, or where an event is happening [LDOCE 3])。
LIDがこの形式の定義を内容語に初めて適用したというわけでないが、 か
なりの頻度でこれを用いている点が注目される。

before you can say Jack Robinson = used in order to say that
something happens very quickly(用例略)[LID]/(old-fashioned)
If you say that something happens before you can say Jack
Robinson, it happens very suddenly(用例略)[CIDI]

ちなみにLIDの親版LDOCE 3の定義は (old-fashioned) very quickly
or suddenlyで句形式のシノニム定義である。
 現在は、EFL/ESL 辞典は何を制限定義語彙に選定するかより、いかに
制限語彙を使って定義するかを競う時代に入ったといわれる。"used"
定義はその競争の成果の一つであろうか。英和辞典の世界でもこの
"used" 定義の概念は利用できそうである。discourse marker[particle]
の最近の研究は詳細をきわめている。その研究成果を英和辞典の記述に生
かそうとすると、(スペースの問題は別にして)まず関門になるのがどの
ような訳語を与えどのように語義区分するかである。discourse marker
[particle] をいわゆる「語」と同じレベルで記述しょうとするからである。
しかし語彙的意味の希薄なdiscourse marker[particle] を訳語に基づい
て語義区分する事には問題がある。むしろ発話行為の目的に応じた区分が
ふさわしいように思われる。"used" 定義はこの点で参考になりそうである。

(6)アルファベット配列と概念範疇:Longman Activator をバック
に持つLIDはidiom activator というページを随所に設け10個の概念
範疇からイディオムの分類を試みている。はこれに対抗する形で、CIDI
はtheme panels というページを設け17の概念範疇を立てている。ア
ルファベット配列と概念範疇の合体は、東海林先生のご指摘の通り、イデ
ィオム辞典としては初の試みであろう。もっとも概念別イディオム辞典に
詳細なアルファベット索引をつけたものは珍しくない(たとえば、
Gulland & Hinds-Howell (1986))

(7)タイポグラフィー:LIDに見られるように最近注記を囲い記事にし
たり網掛けにすることが流行している。この発端になったのはPWD
(1987)あたりであろうか。いま話題のNODEも語法注記と百科情報欄を網
掛けにしている。その数は1000近くに及ぶ。もう一つは、CIDIに見ら
れるように本文の一部(たとえば、イディオム(の一部))を網掛けにす
る方法である。英和辞典にもこういった工夫が見られるが、これらは、多
すぎると目障りだがほどよく使うと紙面の単調さを救ういい工夫である。

(8)英語のバリエーション:両者を比べるとLIDは英米の差異に詳しい。
イギリス英語寄りのイディオム辞典が多いのでこの点でありがたい。一方
CIDIはオーストラリア英語までカバーしていて有用である。

(9)LID とCIDI の重複度:J項は見出し語約80だが両者が共有してい
るイディオムは約20にすぎないので、この比率が全体にも及ぶとすれば、
LIDE とCIDIあわせて9千〜1万の異なるイディオムをカバーしているこ
とになる。

(10)結論をいえば、両辞典は相補的で2つ合わせて使えばもっとも効
果的ということだろう。

南出康世(大阪女子大)

_____________________________
電話0743-75-7050. FAX 0743-75-7050.
e-mail
_______________________________



From: "Yukihiro Kondoh" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE: [lex] {01}どれにしようかな? {0 {01}1}
Date: Mon, 23 Nov 1998 15:22:57 +0900

井上先生へ

近藤@四国、です。

>Eenie meenie miney mo.
>Catch a tiger by the toe.
>If [When] he hollers,
>Let him go.
>Eenie meenie miney mo.
>
>と言うやつでしょうか?
 
●お礼が遅くなりました。とても役に立ちました。
>Eenie meenie miney mo がヒントになり自分でも調べることができました。
調べた結果を元にネイティブの人に問い合わせることもできました。
 
私が辞書で調べた下記の表現とまったく同じだという人が多かったです。
Eenie, meenie, minie, moe.
Catch a tiger by the toe.
If he hollers let him go.
You are it.

息子がALTの先生から教わったものは、これとは出だし以外は違っていたよう
ですので、variation を尋ねたところかなりあるようです。

その中で後半がずいぶん違うvariationをご紹介しておきます。
Eenin, Meenie, Minie, Moe, catch a tiger by the toe, if he hollers
make
him pay fifty dollars right away. Y-O-U spells "you," and out goes Y -
O - you!
 
★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★♪
Yukihiro Kondoh
      
♪★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★



From: "Yukihiro Kondoh" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE: [lex] 分割不定詞 {02} {01}
Date: Mon, 23 Nov 1998 15:36:25 +0900

杉本先生へ

●お礼が遅くなりましたが、応答ありがとうございました。

>でも原文はそうであっても教科書では書き換えられた可能性も高い
>のではないかとも思いますが。

●その可能性は十分あると思います。教科書に限定するとでてこないのかも知
れませんね。現実には、英字新聞やネイティブの人が書いたメールなどでもよ
く見ますが。

>分割不定詞については次の文法・語法書に解説が載っています。
>
> 江川泰一郎『英文法解説』 p. 329 (金子書房、1991 )

●これは持っています。不注意で見落としていました。

> 宮川幸久他『ロイヤル英文法』 p. 418 (旺文社、1988 )

●書店で確認致しました。
>
> Swan, M.: Practical Engish Usage. p. 260 (Oxford, 1995)

●これの江川先生が翻訳された方を買い求めました。

> Collins Cobuild English Usage. p. 664 (HarperCollins, 1992)
> (これが例文も豊富で一番詳しく書かれています)
 
●これは手に入りませんでした。近いうちに県庁所在地まで出かけて探して見
ます。大阪の書店で見かけたような気がするのですが。

このMLで話に登場する書籍の多くが私の市の書店では、扱っておりません。い
つも確認したくてもすぐに確認できない情況です。
 
ありがとうございました。助かりました。

★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★♪
Yukihiro Kondoh
      
♪★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★



From: kazuo kato <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE: [lex] 分割不定詞 {02} {03}
Date: Mon, 23 Nov 1998 16:14:06 +0900

加藤@岩手医大です.

『研究社英和中辞典』や『ジーニアス』の split infinitive という見出し語
の解説がもっとも短くて要を得ていると思います.また,この語の訳語は「分
離不定詞」が普通ではないでしょうか.
この問題については NODE の紹介でもふれたことがあるような気がします.

> Subject:
> The New Oxford English Dictionary (NOED)
> Date:
> Fri, 21 Aug 1998 17:36:29 +0900
> From:
> kazuo kato <>
> To:
>
>
>
> 加藤@岩手医大です.
>
> 配達されたばかりの The Weekly Telegraph, Issue No 369 (On sale from
> Wed August 19 to Tues August 25 1998) に Tom Utley という人の The New
> Oxford English Dictionary の書評があるのに気づきました.数日前 BBC の
> 短波放送で NOED のことをぼんやり聞いていたときには OED の新版が出たの
> かと思っていたのですが,Weekly Telegraph の写真を見ると一冊本なのです.
> 価格も L29.99 (L はポンド記号のつもりです)で,一週間ほど前に出た
> Chambers Dictionary, new edition が L25 ですから似たようなサイズなので
> すね.OED の新版 の新版かなと思っていたので肩透かしを食ったような気持ち
> です.
> ただ,Weekly Telegraph の書評は保守的で, 'Dictionary to boldly rule
> in
> favour of split infinitives' 'Sorry, Ms Pearsall, but up with this I
> will not put' などという見出しがついています.
> とりあえず,ご報告まで.
>
ただ,NOED は NODE の間違いでした.



From: "Yukihiro Kondoh" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE: [lex] RE: [lex] 分割不定詞 {02} {01}{03}
Date: Mon, 23 Nov 1998 16:44:37 +0900

加藤先生へ

近藤@四国、です。ありがとうございました。

>加藤@岩手医大です.
>
>『研究社英和中辞典』や『ジーニアス』の split infinitive という見出し

>の解説がもっとも短くて要を得ていると思います.また,この語の訳語は
「分
>離不定詞」が普通ではないでしょうか.
 
●確認させていただきました。ありがとうございました。
「分離不定詞」という訳語についてですが、私にはどちらが普通かの判断はつ
きません。諸先生方にお任せ致します。(^_^;) ですが、辞書で確認する限り
は調べなおした結果、持っている辞書のすべてが「分離不定詞」でした。

加藤先生のご意見が説得力がありそうです。
 
●英字新聞などでこの用法が普通に(私には普通に思えます)使われている現
状を考えると辞書の説明(例えば、研究社英和中辞典)は不十分ではないかと
思います。また、保守的な気もします。
 
私の印象では、意味があいまいになる場合よりも、目的語が修飾語や関係詞節
がついて長くなっている場合に、よく見かけるような気がします。私見という
ほどのことは言えませんが、目的語が長くなっている場合にはこの用法を*積
極的に*教えても、あるいは認めても良いのではないかと考えています。不適
切でしょうか。
 
以上です。
 
P.S. 加藤先生が以前に提示された<face [the fact] that S + V ...>の件で
すが、あれ以来ずっと実例を探していますが、出くわしません。検索できるHP
などでは検索も試みますが、ダメです。探そうと思うと見つかりません。やは
り、日頃からメモする癖をつけないとダメですね。いざというときに間に合い
ません。
 
これからもよろしくご教示下さい。

★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★♪
Yukihiro Kondoh
      
♪★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★



From: kazuo kato <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE: [lex] RE: [lex] 分割不定詞 {01}{02} {01}{03}
Date: Mon, 23 Nov 1998 17:45:37 +0900

近藤先生:

加藤@岩手医大です.

この問題に関する解説で一番くわしいのは George O. Curme (1931), Syntax
(D. C. Heath and Co.), pp. 459-467 ではないかと思います.(私が持って
いるのは Maruzen Asian Edition です.)
また,この問題は「見れる,食べれる」などのいわゆる「ら抜きことば」と
似ているところがあります.テレビを視聴していると,「見られる,食べられ
る」より「見れる,食べれる」のほうが圧倒的に多いような印象を受けますが,
これが正統的な用法ではないとする人もかなりいます.
辞書に用法の「鏡」としての役割ではなく「鑑(かがみ)」としての役割を
期待する人の数を考えれば,辞書の記述はある程度保守的にならざるをえない
と思います.(「鏡」と「鑑(かがみ)」という使い方は『三省堂国語辞典』
の編者だった見坊豪紀氏の受け売りです.)



From: 村田 年 <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE: [lex] RE: [lex] 分割不定 {01}詞
Date: Mon, 23 Nov 1998 19:32:25 +0900

村田 年(千葉大)です.

この Split infinitive ですが,私は高校生に教えて,使ってもよいと
した方がいいと思います.

普段は気にしないのですが,近藤先生と杉本先生のやり取りがあって,
頭に残っていたせいかここ2,3日でいくつかの例と辞書で出会いました.
書き留めておかなかったので,今見返して2つほど見つけ,示します.
辞書の中にたくさん出ているようです.

perhaps: Perhaps you'd like to join us. (<spoken> used to
politely ask or suggest something) --COBUILD2

kindly 2: If someone asks you to kindly do something, they are
asking you in a way which shows that they have authority over
you, or that they are angry with you; formal use. COBUILD2

LDOCE3とCOBUILD2は Some people think it is incorrect to use
split infinitives. と書いていますが,むしろ OALD5 にならって
considered by some people to be bad style
と教えて bad style と思わない人もいる,と教えたいですね.



From: (Hideo HIBINO)
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] face that s+v {01}
Date: Mon, 23 Nov 1998 19:51:05 +0900

近藤先生、加藤先生

日比野(金蘭短大)です。

先日話題にされたface that s+v の件ですが、COBUILD(320m)に1つ
見つけました。

But self-love is hard to achieve, Andrew, particularly when the
very core of who you are has been systematically abused. How
did you do it--find the joy of being gay# My quest for self-love
is inseparable from my mystical jourmney. I had to face that
I was, as everyone else is, inherently worthy of love. And that
was a vast and healing revelation that goes on and on. What I
have learned is very simple: Every human being is a Divine Child
....
出典は usbooks/12. Text: B9000001461. となっていますので、そこ
をダウンロードした一覧表で早速調べてみましたが、残念ながら空欄に
なっていました。 Jeremy Clear さんに問い合わせてみても、無理かもし
れません。(100ページを超える一覧表ですが、20箇所ほど空欄があ
ります。単なる入力ミスだと思います)



From: kazuo kato <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] face that s+v {02}
Date: Tue, 24 Nov 1998 09:15:17 +0900

日比野先生:

加藤@岩手医大です.to face that の用例ありがとうございました.



From: 村田 年 <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] ワークショップで論文の交換を! {01}
Date: Tue, 24 Nov 1998 11:02:26 +0900

JACET英語辞書研からのご連絡

   ワークショップに参加される方は論文を持参して下さい

 11月28日(早稲田大)のワークショップでは論文・ハンドアウト
交換用のテーブルを設けました.ぜひまだ残部のある紀要論文を持参し
て交換台に出して下さい.専門の近い人に読んでもらえる可能性が高い
ですから.発表者はもちろん一般の参加者もぜひ持参下さいますよう
お願い致します.

持参するのは重すぎるという方は下記にお送り下さい.送っていただいた
ものは受付横に開封せずに積んでおきますので,自分で開封してテーブルに
出して下さい.「ワークショップ資料」と封筒のおもてに書いて下さい.

送り先:〒169-8050 新宿区西早稲田1ー6ー1早稲田大学商学部
    山田 茂先生

事務局:村 田  年 



From: "Hiroshi Shoji" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] kwic on AltaVista {09}
Date: Tue, 24 Nov 1998 02:48:09 -0000

東海林@バーミンガムです。

実はCOBUILDのJeremy Clear氏がperlのことを話題にしたことがあったので、気
にはなっていたんです。
けれども秋からコースワークが本格的に始まるに及んで、プログラムへの挑戦の
優先順位がどうしても低くなりました。

プログラムが研究の幅を広げてくれることについては、本当にその通りだと思い
ます。
けれどもその学習に費やす時間と言語学・語彙論プロパーに費やす時間を天秤に
かけて私が「現時点」で出した結論に基づき、一連のコメントを書かせていただ
いたわけです。

HTMLにしても、統計(学)にしても、必要性を感じて勉強をしたのは最近になっ
てからであり、これまでのコメントは決して「プログラム拒否宣言」ではありま
せん。
どうぞお手柔らかにお願い致します。

アメリカとイギリスでは確かに手法は多少違うようですね。
良くも悪くもイギリスの手法は「人間臭さ」を感じさせると思います。
(それを「甘さ」と感じる方も確かにいらっしゃるのでしょう。)

どうも脱線し過ぎたようです、失礼致しました。

Hiroshi Shoji
<University of Birmingham, UK>
<Shion Junior College, Japan>



From: Minoru MURATA <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE: [lex] RE: [lex] 分割不 {01}定詞 {01}{02} {01}{03}
Date: Tue, 24 Nov 1998 13:36:40 +0900

村田 年です.

この Split Infinitive は「見れる」「食べれる」とは少し違って,
LDOCE3 や COBUILD2 や OALD5 といった普通の辞書や新聞や雑誌の地の文に
出てくるものです.
これに対する対処は少し変える必要があるのではないでしょうか.

kazuo kato <> さんは書きました:
> 近藤先生:
>
> 加藤@岩手医大です.
>
> この問題に関する解説で一番くわしいのは George O. Curme (1931), Syntax
> (D. C. Heath and Co.), pp. 459-467 ではないかと思います.(私が持って
> いるのは Maruzen Asian Edition です.)
> また,この問題は「見れる,食べれる」などのいわゆる「ら抜きことば」と
> 似ているところがあります.テレビを視聴していると,「見られる,食べられ
> る」より「見れる,食べれる」のほうが圧倒的に多いような印象を受けますが,
> これが正統的な用法ではないとする人もかなりいます.
> 辞書に用法の「鏡」としての役割ではなく「鑑(かがみ)」としての役割を
> 期待する人の数を考えれば,辞書の記述はある程度保守的にならざるをえない
> と思います.(「鏡」と「鑑(かがみ)」という使い方は『三省堂国語辞典』
> の編者だった見坊豪紀氏の受け売りです.)



From: kazuo kato <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE: [lex] RE: [lex] 分割不 {01} {01}定詞 {01}{02} {01}{03}
Date: Tue, 24 Nov 1998 15:59:00 +0900

村田先生:

加藤@岩手医大です.

Minoru MURATA wrote:
>
> 村田 年です.
>
> この Split Infinitive は「見れる」「食べれる」とは少し違って,
> LDOCE3 や COBUILD2 や OALD5 といった普通の辞書や新聞や雑誌の地の文に
> 出てくるものです.
> これに対する対処は少し変える必要があるのではないでしょうか.
>
Split Infinitive が「見れる」「食べれる」とは少し違うかどうかという問題
ですが,私が「見れる」「食べれる」といういわゆる「ら抜きことば」を持ち
出したのは,「日本語の乱れ」というような話題で必ずと言っていいほど引き
合いに出されるのがこの現象だからです.つまり,現実に行われている用法と
「規範」の間にズレがある例としては類似の現象だと言ったまででした.
この種の比較では比較の規準を厳密にして同じ土俵の上で議論しないと,議
論がすれ違いになる可能性があります.ただ,「見れる」「食べれる」が書き
言葉にも見られるという証言はあります.ちょっと古い本ですが,『図説日本
語』(角川書店,1982),p 362 には「このごろは,新聞などの書きことばに
も,少しずつ出てくるようになったが,[『見れる』『来れる』は] まだ『見ら
れる』『来られる』のまちがいだ,とする人も少なくないだろう.」とありま
す.
私としては辞書の文の中に問題の形が登場するかどうかというような細かな
規準までは考えておりませんでした.単に規範に違反すると言われながら世間
で広く行われている形,という規準でなら同じと考えていいのではないかと思
った次第です.
また,Split Infinitive については The New Fowler's Modern English
Usage, ed. by R.W. Burchfield (Oxford, 1996) の解説が最近の傾向について
上手にまとめていると思います.



From: "Yukihiro Kondoh" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE:[lex] 分割不定詞 {03} {01}
Date: Tue, 24 Nov 1998 16:53:02 +0900

加藤先生、村田先生へ

近藤@四国、です。応答ありがとうございました。
 
◆加藤先生 wrote:
>この問題は「見れる,食べれる」などのいわゆる「ら抜きこと
>ば」と似ているところがあります.テレビを視聴していると,
>「見られる,食べられる」より「見れる,食べれる」のほうが
>圧倒的に多いような印象を受けますが,これが正統的な用法
>ではないとする人もかなりいます.

◆村田先生 wrote:
>この Split Infinitive は「見れる」「食べれる」とは少し違って,
>LDOCE3 や COBUILD2 や OALD5 といった普通の辞書や
>新聞や雑誌の地の文に出てくるものです.
>これに対する対処は少し変える必要があるのではないでしょうか.

●加藤先生の「ら抜きことば」と似ている、というご意見には村田先生と同様
に違和感を覚えます。
 
「ら抜きことば」にはそうなる表現上の必然性がないと思いますが。単に言い
方がルーズになっただけと思います。そうなる、心理的必然性のようなものが
あったのかもしれませんが、少なくとも文作成上の必然性はないのではないで
しょうか。

分離不定詞の方は、前回の投稿でも申し上げましたように、目的語が長い場合
に意味の曖昧さを生じさせないようにし且つ動詞と距離を置かずに副詞を置く
としたら<to>と動詞の間に置かざるを得なくなるのではないか、という点で必
然性があると思います。
 
こういう観点から、「ら抜きことば」と一緒には扱いたくないと思うのです。
 
●私のように英語を本格的に勉強し始めた頃に、「<to>と動詞の間に副詞を入
れてはならない。」と教わると、それがいつまでも頭の中にinputされたまま
です。いまだに、目的語が短い場合には抵抗があります。自分では決して使い
ません。しかし、何度も申し上げますが、目的語が長い場合は分離不定詞にす
るのが、一番簡単な解決策ではないかと思います。ですから、そういう場合は
私自身も使います。
 
ですが、どこかでこの用法は本当はあまり褒められたものではないのだ、とい
う意識が働きます。誰かがこの言わば「呪縛」のようなものから解き放してく
れないかな、と願う訳です。ですから、文法書や辞書でもっと積極的に扱って
くれても良いのではないかという印象を持って入るのです。
 
文法学者の方たちの中の見解のようなものが、もう少し肯定的ですと学生に教
える際に躊躇しないで実際に使われて入るこの用法を教えることができます。
「こういう場合には賛成しない人もいるが、こういう場合には問題ないの
だ。」とバランスを保って具体的に説明することができます。

我々は、最初に習ったことをいつまでも引きずる傾向があるので、最初からバ
ランスのとれた教え方をした方が良いと思っています。しかし、現場のものと
しましては、裏づけがないと自分の判断・自由裁量だけでは思い切ったことは
できにくいものです。そして一般的には、そういう裏付けを文法書や辞書に頼
るしかないわけです。
 
そういう背景もあり、分離不定詞に対して学者の方の全体的な見方は昔と同じ
なのだろうかと考え、私の最初の投稿になりました。
 
●私は学者ではありませんので、難しいことは分かりません。私の見解に不適
な点がございましたら、遠慮なくご指摘下さい。
 
以上です。失礼致しました。

ご意見ありがとうございました。今後ともご教示下さい。

★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★♪
Yukihiro Kondoh
      
♪★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★



From: Minoru MURATA <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE: [lex] RE: [lex] 分割不 {01}{01} {01}定詞 {01}{02} {01}{03}
Date: Tue, 24 Nov 1998 16:59:32 +0900

kazuo kato <> さんは書きました:

> この種の比較では比較の規準を厳密にして同じ土俵の上で議論しないと,議
> 論がすれ違いになる可能性があります.ただ,「見れる」「食べれる」が書き
> 言葉にも見られるという証言はあります.ちょっと古い本ですが,『図説日本
> 語』(角川書店,1982),p 362 には「このごろは,新聞などの書きことばに
> も,少しずつ出てくるようになったが,[『見れる』『来れる』は] まだ『見ら
> れる』『来られる』のまちがいだ,とする人も少なくないだろう.」とありま
> す.

村田 年です.
加藤先生のおっしゃる通り,かなり大ざっぱな議論をしているわけでご教授
ありがとうございます.

ただ,Split Infinitive は,文章を書くことを自分の仕事の一部にしている
人が相当意識して書いていると想像される点で,ちょっと違うのでは思った
わけです.

「来れる」はともかく「見れる」や「食べれる」も書き言葉にも現れている
のですね.



From: HAMADA Keita <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE:[lex] {01}分割不定詞 {03} {01}
Date: Tue, 24 Nov 1998 17:36:12 +0900

はまだ@アルクと申します。

素人が口を挟むのもおこがましいのですが……

日本語の「ら抜きことば」と英語の split infinitive とを比べること
の当否は、私ごときには判断できませんが、

On Tue, 24 Nov 1998 16:53:02 +0900
"Yukihiro Kondoh" <> wrote:

> 「ら抜きことば」にはそうなる表現上の必然性がないと思いますが。

「ら抜きことば」には、それなりの必然性はあるのではないでしょうか。

「……られる」には、可能、受け身、尊敬と3通りもの用法があります。
これがいささか紛らわしいので、可能は「……れる」にするという新し
いルールが誕生しつつある、と考えることは十分に可能と思われますが……
受け身、尊敬の意味で「ら抜きことば」が使われている例はないと思い
ます。

昔、哲学の入門書を読んでいたとき、天皇に関連する話が出てきました。
著者が古風な方で、天皇に関して述べるときは必ず尊敬の「られる」を
用いていました。その上、難解な概念を述べているために可能、受け身
の「られる」も頻発し、読むのに往生した経験があります。

素人が横から口を挟みまして、失礼いたしました。

=================================
HAMADA Keita of ALC PRESS INC.

http://www.alc.co.jp/e-kikaku
=================================



From: "NISHIMURA Tadamasa" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE: [lex] RE:[lex] 分割不定詞 {03} { {01}01}
Date: Tue, 24 Nov 1998 22:12:30 +0900

日本人英語教師として、近藤さんの悩みはよくわかります。

>う意識が働きます。誰かがこの言わば「呪縛」のようなものから解き放してく
>れないかな、と願う訳です。ですから、文法書や辞書でもっと積極的に扱って
>くれても良いのではないかという印象を持って入るのです。

他のご回答と重複しますが、いわゆる語法書は "積極的に" 扱っています。

>文法学者の方たちの中の見解のようなものが、もう少し肯定的ですと学生に教
>える際に躊躇しないで実際に使われて入るこの用法を教えることができます。
>「こういう場合には賛成しない人もいるが、こういう場合には問題ないの
>だ。」とバランスを保って具体的に説明することができます。

しかも、ほぼ肯定的です。条件はただ、
副詞がどの動詞を修飾するのかを明確にしたいときに、Split Infinitive になる場

は Split Infinitive を使う、だけでしょう。

>我々は、最初に習ったことをいつまでも引きずる傾向があるので、最初からバ
>ランスのとれた教え方をした方が良いと思っています。しかし、現場のものと
>しましては、裏づけがないと自分の判断・自由裁量だけでは思い切ったことは
>できにくいものです。そして一般的には、そういう裏付けを文法書や辞書に頼
>るしかないわけです。

私も自分に英語の語感がまったくないため、「文法書や辞書」に100% たよりま
す。
OED の編集部が『オックスフォードが答える英語の『?』」(原題 『Questions
of
English』. OUP, 1994)は教室での根拠にしていいでしょう。その pp.78-79 に

「私たちとしては、分離不定詞をあまり意識して心配することはやめなさいと言い
たいところです。英語で言えば、We recommend you to consciously stop worrying
about split infinitives. となりますが、…」

と、この文の副詞 consciously の位置を変えた場合の意味を考えさせて
います。

さらに他を見渡せば、"The split infinitive, as several commentators
remark,
seems never to have been common in the speech of the less educated. Its
use is pretty much confined to users of standard English and to literary
contexts." とは Merriam Webster 社の 『Webster's Dictionary of English
Usage』 の言です

西村 公正(関西外国語大学短期大学部)



From: 村田 年 <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] ら抜きことば {01}
Date: Tue, 24 Nov 1998 22:49:04 +0900

近藤先生,浜田様

村田 年(千葉大)です.

(近藤先生) 
「ら抜きことば」にはそうなる表現上の必然性がないと思いますが。単に言い
方がルーズになっただけと思います。そうなる、心理的必然性のようなものが
あったのかもしれませんが、少なくとも文作成上の必然性はないのではないで
しょうか。

はまだ@アルクと申します。
「ら抜きことば」には、それなりの必然性はあるのではないでしょうか。

「……られる」には、可能、受け身、尊敬と3通りもの用法があります。
これがいささか紛らわしいので、可能は「……れる」にするという新し
いルールが誕生しつつある、と考えることは十分に可能と思われますが……
受け身、尊敬の意味で「ら抜きことば」が使われている例はないと思い
ます。

(村田)「ら抜きことば」には十分必然性があると思います.
   また,大ざっぱなうろ覚えを言うわけですが,大野 晋先生が
   どこかで日本語の歴史で「見られる」を「見れる」といった,
   そのような動詞の活用が定着していたかなり長い時代があるの
   で,「見れる」というのは日本語しては自然な形だ,とおっしゃ
   っていたことを記憶しています.だれかご存知の方,教えて下さい.

浜田説もおもしろいですね.まぎらわしい,が理由かどうかは
   私にはわかりませんが.



From: "NISHIMURA Tadamasa" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE: [lex] ら抜きことば {01} {01}
Date: Wed, 25 Nov 1998 00:03:00 +0900

村田先生

>(村田)「ら抜きことば」には十分必然性があると思います.
>   また,大ざっぱなうろ覚えを言うわけですが,大野 晋先生が
>   どこかで日本語の歴史で「見られる」を「見れる」といった,
>   そのような動詞の活用が定着していたかなり長い時代があるの
>   で,「見れる」というのは日本語しては自然な形だ,とおっしゃ
>   っていたことを記憶しています.

今は朝日文芸文庫にしかありませんが、(朝日新聞社)
『大野普の日本語相談』の 25, 29ページです。大野説に丸谷才一
が異論をとなえたので、『丸谷才一の日本語相談』の p.24 をも
見なければなりません。

この文庫版の元版は『日本語相談』(一)〜(四 ?) だったと
思います。その元は『週刊朝日』の連載で、井上ひさしの3氏が
交代に回答をしていました。

西村 公正



From: "Yukihiro Kondoh" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE: [lex] RE: [lex] RE:[lex] 分 {01}割不定詞 {03} { {01}01}
Date: Wed, 25 Nov 1998 01:01:17 +0900

近藤@四国、です。
 
分離不定詞に関連したみなさまの応答にお礼を申し上げます。
貴重なお時間を割いていただきまして本当に感謝致しております。

●西村先生 wrote:
> OED の編集部が『オックスフォードが答える英語の『?』」
(原題 『Questions of English』. OUP, 1994)は教室での根拠に
していいでしょう。その pp.78-79 に「私たちとしては、分離不定詞を
あまり意識して心配することはやめなさいと言いたいところです。

●ご意見と情報ありがとうございました。今週木曜日に県庁所在地までこのML
ででてきましたいくつかの本を求めて出かけて行く予定です。その折に、上記
語法書(?)も探して参ります。しかし、今までの経験からくる私の予想で
は、ほとんどの書籍は手に入らないと思います。
 
中身を見ないでこちらも買う訳にもいかず、欲しいものが欲しい時に手に入り
ません。それ程田舎に住んでおります。県庁所在地といえども私が欲しい専門
書はほとんどおいていないのが実状です。
 
★みなさま、いろいろとご教示ありがとうございました。分離不定詞に関しま
しては指導の方向性が見えました。大いに助かりました。
 
★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★♪
Yukihiro Kondoh
      
♪★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★



From: SONODA Katsuhide <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] kwic on AltaVista {10}
Date: Tue, 24 Nov 1998 22:45:11 GMT

東海林 先生

園田です。

> アメリカとイギリスでは確かに手法は多少違うようですね。
> 良くも悪くもイギリスの手法は「人間臭さ」を感じさせると思います。

北米の人達が書いた次の本は、言語学畑の人にとって有益なコンピュータ関係
の知識がまとめられています。全8章のうち一章が UNIX に割り当てられてい
てプログラムの解説がされています。われわれのコンピュータの勉強のよい指
針になると思います。

John Lawler and Helen Aristar Dry (eds.) Using Computers in Linguistics:
A Practical Guide. 1998. Routledge. ISBN 0-415-16793-0 (pbk),
0-415-16792-2 (hbk).

それから、corpus 関係で何かしようと思ったら、コンピュータに強い人と手
を組むのがいい、という投野先生の意見ですが、実際に実行できるかどうかは
ともかくよく考えてみる必要がありますね。Brown Corpus を作った Francis
と Kucera のコンビも、そのような組合わせのよい例だと思います。(私個人
の置かれている立場は、コンピュータの設置からすべて自分でしなければなら
ない、という佐藤先生のものと同じですが。)

園田勝英 (Sonoda Katsuhide)
北海道大学言語文化部, 〒060-0817 札幌市北区北17条西8丁目
FAX 011-736-2861(共用)



From: Minoru Moriguchi <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE: [lex] RE: [lex] RE:[lex] {01}分 {01}割不定詞 {03} { {01}01}
Date: Wed, 25 Nov 1998 09:13:07 +0900

シャープ・森口と申します。
久しぶりの書き込みです。

>分離不定詞に関連したみなさまの応答にお礼を申し上げます。
>貴重なお時間を割いていただきまして本当に感謝致しております。

分離不定詞については、ほとんど話が終わりそうですが、昨日
自宅で調べる時間が取れました、せっかくですので、分離不定詞
も場合によっては問題がないとしている書物について御報告
させて頂きます。

まず、私の専門であるテクニカルコミュニケーション(情報を
如何にしてわかりやすく伝えるかについての研究と実践)の
概説書を見ました(Fern Rook "Remembering the Details - Matters
of Grammar and Style" In <Techniques for Technical Communicators>
Ed. by Carol M. Barnum & Saul Carliner. Macmillan 1993)。

Although no rule of grammar states that you cannot split infinitives,
some people object very strenuously. My own observation is that there
is little difficulty in placing adverbs outside intransitive infinitives...
(中略)
When the infinitive is transtive, however, we may sometimes wish to
split it... (p278)

とあり、同じ章の少し後でも例を挙げて、若干具体的に書いています。

if your modifier will not fit at the end of the sentence, you had probably
better split the infinitive.(p288)
(用例省略)

また、米国のライターにとってバイブルともいえる Chicago Manual of
Style 14th (1993)には、以下のようなコメントがあります。

The thirteenth edition of this manual included split infinitives among
the examples of "errors and infelicities" but tempered the inclusion by
adding, in parentheses, that they are "debatable 'error.'" The item
has been dropped from the fourteenth edition because the Press now
regards the intelligent and discriminating use of the construction as
a legitimate form of expression and nothing writers or editors need feel
uneasy about. Indeed, it seems to us that in many cases clarity and
naturalness of expression are best served by a judicious splitting of
infinitives. (p76 footnote)

この13版は1982年に出版されているので、「なるほど最近の傾向なんだな」
と考えました。逆に昔の文法書ではどのように禁止されているのか調べてみよう
と思い、<Descriptive English Grammar> 2nd. Homer C. House and Susan E.
Harman. Prentice-Hall (1950)を見ると、意外なことに以下のような記述が
ありました。

....there may be times when it is better to split the phrase, especially
if obscurity results from not splitting it. Many of our best writers do
split their infinitives, and schooled grammarians justify the construction
when it prevents awkwardness or ambiguity. <I failed to fully understand>
is as graceful and clear as <I failed to understand fully>. (p340)

半世紀に渡って split infinitive は、語法の中で微妙な立場に置かれていたのか、
という感を持った次第です。

--
Minoru Moriguchi
Technical Communicator
Personal Computer Division
SHARP Corporation



From: 南出 康世 <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] The Chambers Dictionary {01}
Date: Wed, 25 Nov 1998 11:05:12 +0900

 The Chambers Dictionary (Chambers Harraps)(以下CD)は、
8月〜9月における英国の「辞書ラッシュ」の一角をになう辞書で
ある。すでにこの欄でも何度か言及されたが、日本でも入手可能に
なったので簡単に紹介したい。

 チェンバーズの伝統であろうか、英語の辞書であるにも関わらず、
表紙標題(cover title)、背標題(back title)、扉標題(title-page title)
のいずれにもEnglishの文字はなく、The Chambers Dictionaryの
みである。
 扉の裏ページから得られる情報によるとCDは長い伝統を誇る The
Chambers Twentieth Century Dictionary (1901) にさかのぼる
(さらには、1872年のChamber's English Dictionaryまでさか
のぼるだろう)。1901年以降この20世紀版は版を重ねたが、
1988年に "Twentieth Century" を冠しない、Chambers English
Dictionary が出た(原題への復帰である)。さらに1993年にThe
Chambers Dictionary が出てこれが今回のCDの直接の前身と考えら
れるので、5年ぶりの改訂ということになる。 黒表紙のChambers
21st Century Dictionary (Larousse plc, 1996)というのもあるが
これは別系列の辞書である。
 チェンバーズ辞書の特徴の一つは語義の区分化よりも、語義のつなが
りを強調することであった。その現れがセミコロンを使った語義並記方
式である(番号を付した定義(numbered definition) と区別して束
ね式定義(clustered definition)とよばれることもある)。もう一つ
の特徴は屈折形、複合語、成句はいうに及ばず派生語など全てをその親
となる見出し語のもとに追い込む「追い込み項目(run-on entry)」を
採用していることである(nested [niche] entryなどとも呼ばれる)。
この方針はもちろん今回のCDに受け継がれている。昨今の「何でも独立
見出し主義」に逆行する方針である。CDがこのような方針をあえて踏襲
したのはやはりチェンバー辞書の伝統の重さであろうか。序文の一部を引
用しておこう。

We are all aware that users of the Chambers Dictionary have
special expectations for which they fail to find satisfactions in
its rivals. We trust that this new edition will continue to serve
these needs into a new millennium.

 チェンバーズ辞書のもう一つの特徴はことばの辞書の方針をかたくな
に守っていることである。CDはもちろんこれを踏襲しているのでほぼ同
時にでたCEDやNODEと一線を画している。たしかに、Shakespearian
があって、Shakespeare がないというのは不便である。しかし人名・
地名がない分ことばの記述が充実しているということだから一長一短と
いうことだろうか(たとえば、英国方言特にスコットランド方言の詳し
さはCEDやNODEはとてもCDに太刀打ちできそうもない)。
 収録語数をいうのにCDはreference方式を取っている。その数は21
万5千である。ちなみにCED4は18万である。3万5千の差は定義様式・
見出し語立項方式の差だろう。しかしこの差はまた(チェンバーズ方式に
慣れない人に取っては)そのままuser-friendly の度合いに跳ね返って
くるだろう。
 CDはシェイクスピア、スペンサー、バイブル、バーンズ、スコットなど
古典作品からの引用を継続して文学辞典的な雰囲気を保持する一方で、
BNCを基盤にしたWordtrack(引用例4万)という新語収集コーパスを
利用して「何千という」新語・新語義を採録し、新旧うまく両立させて、
広範囲なユーザーのニーズに答える態勢を取っている。ちなみにCDはス
クラブル(scrabble)トーナメントで使用される公認辞典である。
 20世紀版がこの1世紀の間にどのように変化してきたか正確に把握し
ていないが、 OEDSの影響であろうか、1983年改訂版では英語の範
囲が広がって英米の英語のみならず、オーストラリア、ニュージランド、
カナダ、南アフリカ、インド、パキスタンなどの英語にまで範囲が及んで
いる。これはもちろんCDでも引き継がれていることはいうまでもない。
 斬新な装幀になった。表紙は1988年版あたりから変化が見られるよ
うになったが、これまで赤地に標題を白抜きにしてきた("red book"とい
う愛称をもつゆえんである)。CDはもちろんこの伝統ある赤を引き継いで
いるがその上に一部濃紺を重ね、この紺を背に標題を白抜きににしている。
 チェンバーズ辞書には根強いファンが多い。特にその歴史からしてスコッ
トランド系の人に熱烈な支持者が多い。Tom McArthur もその一人である
。English Today での記事が楽しみである。

11月25日

南出康世(大阪女子大)

_____________________________
電話0743-75-7050. FAX 0743-75-7050.
e-mail
______________________________



From: (SATO Hiroaki)
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] face that s+v {02}
Date: Wed, 25 Nov 1998 12:29:59 +0900

At 7:51 PM 98.11.23 +0900, Hideo HIBINO wrote:
>先日話題にされたface that s+v の件ですが、COBUILD(320m)に1つ
>見つけました。
Webコーパス(http://163.136.182.112/cgi-bin/koav.pl)で調べるといくつか見つか
ります。(大学のサーバーのトラブルで,しばらくの間,外からのアクセスに問題が
あるかもしれません。)

検索指定文字列:had;to;face;that;I

/
http://www.n2hos.com/digital/ab7nv.html
001: to stand all this doodling RTTY". I now had to face that I had
violated one of the first o
http://www12.pair.com/sysdoc/personal.html
002: f my exam - no student life anymore - I had to face that I eventually
had become a doctor.

puddingsの数値を大きくすると,文脈が分かります。

puddings=100, lineFold=ON

/
http://www.n2hos.com/digital/ab7nv.html
001: o my self "Boy, he must have some good filtering to be able to
stand all this doodling RTTY". I now had to face that I had violated
one of the first operating rules I had learned, "Listen First!". I
had heard a
http://www12.pair.com/sysdoc/personal.html
002: hs later it was a 486/33. This was the year 1993. The year of
my exam - no student life anymore - I had to face that I eventually
had become a doctor. In the same year I got a 486/40 (AMD) and
overclocked for t
___________________
(SATO Hiroaki)
http://www.senshu-u.ac.jp/~thc0408/
専修大学・商学部・助教授(英語)
佐藤弘明



From: 南出 康世 <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] 紀要の交換 {01}
Date: Wed, 25 Nov 1998 13:07:23 +0900

村田年先生

ワークショップでの紀要の交換は非常にいいアイディアだと思います。『英語学
論説資料』というのがあって、ある程度紀要論文を検索できますが、お互い知ら
ないですごしてしまう紀要論文の方が多いと思います。これをきっかけに紀要論
文の流通が少しでも活性化すればすばらしいことです。

11月25日

南出康世(大阪女子大)

_____________________________
電話0743-75-7050. FAX 0743-75-7050.
e-mail
______________________________



From: "浅田 幸善" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] The Professor and the Madman {01}
Date: Wed, 25 Nov 1998 13:25:37 +0900

もうご存じの方もいらっしゃるでしょうが、本の紹介です。
(と言いつつ、私もまだ読んでいなかったりしますが)

The Professor and the Madman
by Simon Winchester

Hardcover - 242 pages (September 1998)
Harpercollins; ISBN: 0060175966
List Price: $22.00 (Amazonで30% offの$15.40)
日本の書店の店頭にも並んでいるようです。
(丸善で見た値段は、\4,620でした)

上のタイトルだけでは何の本かわかりませんが、副題を見ると、このMLとあながち
無関係で
はないことがわかります。

A TALE OF MURDER, INSANITY, AND THE MAKING OF THE OXFORD ENGLISH DICTIONARY

タイトルにあるthe professor とは James A. H. Murray、the madmanとは
OEDの有力な"contributor"(寄稿者+貢献者)の一人であったというW.C. Minorのこ
とで
す。

Amazon.comのreviewの一部を紹介しておきます。

When the editors of the Oxford English Dictionary put out a call during the
late 19th century pleading for "men of letters" to provide help with their
mammoth undertaking, hundreds of responses came forth. Some helpers, like
Dr. W.C. Minor, provided literally thousands of entries to the editors. But
Minor, an American expatriate in England and a Civil War veteran, was
actually a certified lunatic who turned in his dictionary entries from the
Broadmoor Criminal Lunatic Asylum. ...

Winchester also paints a rich portrait of the OED's leading light, Professor
James Murray, who spent more than 40 years of his life on a project he would
not see completed in his lifetime. Winchester traces the origins of the
drive to create a "Big Dictionary" down through Murray and far back into the
past; the result is a fascinating compact history of the English language
(albeit admittedly more interesting to linguistics enthusiasts than
historians or true crime buffs). ...

英国版はタイトルが違っているようです。
"The Surgeon of Crowthorne" (確かではありませんが)

Audio Cassette版もあるらしいのには驚きました。

Audio Cassette (September 1998)
Harper Audio; ISBN: 0694520667 ; Dimensions (in inches): 0.84 x 7.10 x 4.55
List Price: $18.00
Our Price: $12.60
You Save: $5.40 (30%)



From: kazuo kato <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] The Professor and the Madman {02}
Date: Wed, 25 Nov 1998 15:07:02 +0900

浅田先生:

加藤@岩手医大です.

浅田 幸善 wrote:
>
> もうご存じの方もいらっしゃるでしょうが、本の紹介です。
> (と言いつつ、私もまだ読んでいなかったりしますが)
>
> The Professor and the Madman
> by Simon Winchester

> Audio Cassette版もあるらしいのには驚きました。
>
(加藤 和男)
本はまだ読んでいませんが,テープは途中まで聴きました.ただ,ウオークマ
ンが故障して,最後の方は聴いておりません.おもしろいのですが,ただ,書
籍版で読んでみようというほどの食欲は湧きませんでした.



From: kazuo kato <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] face that s+v {03}
Date: Wed, 25 Nov 1998 15:12:07 +0900

佐藤弘明先生:

加藤@岩手医大です.

face that s+v の用例ありがとうございました.手作業しか知らない旧派に
とってはプログラム言語の literacy は驚異です.


From: Minoru MURATA <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE: [lex] ら抜きことば {01}{01}{01}
Date: Wed, 25 Nov 1998 17:40:38 +0900

村田 年です.

西村先生,ありがとうございました.

"NISHIMURA Tadamasa" <> さんは書きました:

>
> 今は朝日文芸文庫にしかありませんが、(朝日新聞社)
> 『大野普の日本語相談』の 25, 29ページです。大野説に丸谷才一
> が異論をとなえたので、『丸谷才一の日本語相談』の p.24 をも
> 見なければなりません。
>
> この文庫版の元版は『日本語相談』(一)〜(四 ?) だったと
> 思います。その元は『週刊朝日』の連載で、井上ひさしの3氏が
> 交代に回答をしていました。
>
> 西村 公正



From: Minoru MURATA <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] The Professor and the Madman {02}
Date: Wed, 25 Nov 1998 17:45:49 +0900

村田 年です.

私も読んでいませんが,この翻訳権獲得競争が熾烈を極めた
(?)久しぶりの好著だと翻訳をやっている友人が言って
いました.

"浅田 幸善" <> さんは書きました:
> もうご存じの方もいらっしゃるでしょうが、本の紹介です。
> (と言いつつ、私もまだ読んでいなかったりしますが)
>
> The Professor and the Madman
> by Simon Winchester
>
> Hardcover - 242 pages (September 1998)
> Harpercollins; ISBN: 0060175966
> List Price: $22.00 (Amazonで30% offの$15.40)
> 日本の書店の店頭にも並んでいるようです。
> (丸善で見た値段は、\4,620でした)



From: "Hiroshi Shoji" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] kwic on AltaVista {11}
Date: Wed, 25 Nov 1998 16:30:49 -0000

東海林@バーミンガムです。

園田先生:

> 北米の人達が書いた次の本は、言語学畑の人にとって有益なコンピュータ関
> 係の知識がまとめられています。全8章のうち一章が UNIX に割り当てられ
> ていてプログラムの解説がされています。われわれのコンピュータの勉強の
> よい指針になると思います。
>
> John Lawler and Helen Aristar Dry (eds.) Using Computers in
> Linguistics:
> A Practical Guide. 1998. Routledge. ISBN 0-415-16793-0 (pbk),
> 0-415-16792-2 (hbk).

実はこの本については6月にこのメーリングリストで私の方からも御紹介させて
いただきました。

> 直接辞書を論じた本ではないのですが、コンピュータによるコーパス処理に
> 関して興味のある方で英文の入門書を探していらっしゃる方には役立つかも
> しれませんので御紹介します。
>
> Lawler, J & Dry, H A (ed.) (1998) Using Computers in Linguistics:
> A Practical Guide, London, Routledge
>
> 8章から成り、'Ordinary Working Linguist'対象と謳っている通り、コン
> ピュータと言語学との関わりの基礎的な部分を様々な角度から説明していま
> す。
> このMLに参加している方々には第4章'Textual databases'が特に参考に
> なると思われます。
> Web上にも本書の情報がありますので興味のある方は御覧下さい:
>
> http://www.routledge.com/routledge/linguistics/using-comp.html

私は第4章に目を通しただけで、UNIXの章は未読でした。
これを機会に目を通してみようと思います。
御指摘ありがとうございました。

Hiroshi Shoji
<University of Birmingham, UK>
<Shion Junior College, Japan>



From: "Hiroshi Shoji" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] 分離不定詞と「ら抜き言葉」 {01}
Date: Wed, 25 Nov 1998 17:50:17 -0000

東海林@バーミンガムです。

ちょっとタイミングを逃してしまった感もありますが、分離不定詞と「ら抜き言
葉」の問題について私見を述べさせていただきたいと思います。

両者がそれぞれの言語で'disputed usage'に属する点は共通しています。
ネイティブスピーカーの中でも「記述的」、あるいはそれに近い立場に立つ人は
容認する傾向がある点も似ていると思います。

問題を「教える」ことに転じると、少々事情が変わってくると思います。
日本人が「食べれる」・「見れる」を使うのを許容する日本人であっても、外国
人が「ら抜き言葉」を使っていると違和感を感じる人は多いのではないでしょう
か?(私もその一人ですが…)
同じように、英語母語話者が使う分離不定詞と、非母語話者が使う分離不定詞と
では、受け取られ方が違うのではないかと予想するわけです。

私としては、日本語学習者に「ら抜き言葉」を「使う」ことを教えるのに反対す
るのと同じ理由で、英語学習者に分離不定詞を「使う」ことを教えるのには反対
します。
分離不定詞は現実に母語話者によって「使われた」実例を「受信」のために必要
な情報として学習者に提示し、それが'disputed usage'であることを教え、外国
人が使うと特に問題とされる可能性があるということを、日本語の「ら抜き言
葉」などを補足説明に使って説明したらいいのではないでしょうか?

分離不定詞を使わなくとも別の手段で同じことが表現できる場合がほとんどでは
ないかと思います。

Hiroshi Shoji
<University of Birmingham, UK>
<Shion Junior College, Japan>



From: kazuo kato <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] 分離不定詞と「ら抜き言葉」 {01}{01}
Date: Thu, 26 Nov 1998 08:02:14 +0900

東海林先生:

加藤@岩手医大です.

Hiroshi Shoji wrote:

> 両者がそれぞれの言語で'disputed usage'に属する点は共通しています。
> ネイティブスピーカーの中でも「記述的」、あるいはそれに近い立場に立つ人は
> 容認する傾向がある点も似ていると思います。
>
> 問題を「教える」ことに転じると、少々事情が変わってくると思います。
> 日本人が「食べれる」・「見れる」を使うのを許容する日本人であっても、外国
> 人が「ら抜き言葉」を使っていると違和感を感じる人は多いのではないでしょう
> か?(私もその一人ですが…)
> 同じように、英語母語話者が使う分離不定詞と、非母語話者が使う分離不定詞と
> では、受け取られ方が違うのではないかと予想するわけです。
>
> 私としては、日本語学習者に「ら抜き言葉」を「使う」ことを教えるのに反対す
> るのと同じ理由で、英語学習者に分離不定詞を「使う」ことを教えるのには反対
> します。
> 分離不定詞は現実に母語話者によって「使われた」実例を「受信」のために必要
> な情報として学習者に提示し、それが'disputed usage'であることを教え、外国
> 人が使うと特に問題とされる可能性があるということを、日本語の「ら抜き言
> 葉」などを補足説明に使って説明したらいいのではないでしょうか?

(加藤和男)
まったく同感です.非常勤で北米の大学生に15年ほど外国語としての日本語を教
えた経験がありますが,授業中にこちらが質問して「わかんない」などという
返事が返ってきてぎょっとしたものでした.訂正すると,ホームステイ先の家
でも使っていたよなどというのが常でした.
そういうこともあって,英語でものを書く時には idioms や slang はできる
だけ隠すように,目立たないように努めています.



From: (Hideo HIBINO)
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] Line of least resistance {01}
Date: Thu, 26 Nov 1998 08:10:02 +0900

日比野(金蘭)です。

『ら抜き言葉』が話題になっています。言語は生きていますので、変化
を免れません。その際、変化は 'line of least resistance' の方へ流
れる傾向が見られる、というのがひろく認められています。『食べられる』
が『食べれる』になっていくのは分かりやすい例です。

英語でこれと同質の現象を探すと 'look forward to 不定詞' があてはま
のでは、と思います。コウビルド(50m)には10例あまり発見できます。

(1) Following his highly acclaimed and influential look back at
the fortunes of the world's empires in The Rise and Fall of the
Great Powers, historian Paul Kennedy now looks forward to
analyse which countries will be the winners and losers in the
nexr century.
Waterstone's Booksellers: promotional leaflet

(2) There is no need to include the & dollar; 55 annual member-
ship fee; we will bill you later. I look forward to welcome you
as a new Cardmember. Sincerely,
American Express: personal letter

(3) ...and my agenda for a renewal asks that we look forward
to open new markets for American products so we create new
jobs for American workers...
National Public Radio: President Bush の演説より。

(4) ...it is and it will be rather difficult for you on occasion
to look forward to seek where you are going when so much of
your time and energy is locked...
Yorkshire: tarot reading recorded

など。日本のら抜きは大きな流れになって進行中ですが、英語のはまだ
始まったばかり(!?)でしょうか。



From: "Hiroshi Shoji" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] LID と CIDI {02}
Date: Wed, 25 Nov 1998 23:45:34 -0000

東海林@バーミンガムです。

南出先生、両イディオム辞典の比較、興味深く読ませていただきました。
(先生の書評を拝見すると、いつも自分の見方が如何に表面的なものかと感じて
しまいます。)

> 注目すべきは句形式定義の一つとしてLIDが多用している"used" 定義である。
> "used"定義(用法の規則に基づいた定義なので rule-based definition と
> よばれる)は元来機能語の定義に用いられてきた(たとえば、at = used to
> show a point in space where someone or something is, or where an
> event is happening [LDOCE 3])。
> LIDがこの形式の定義を内容語に初めて適用したというわけでないが、 か
> なりの頻度でこれを用いている点が注目される。

今年出版のNODEでは、純粋な学習辞典以外ではおそらく初めて'used'定義が採用
されているのに気付き、このMLでもanywayの項を引用しました。

>  現在は、EFL/ESL 辞典は何を制限定義語彙に選定するかより、いかに制限
> 語彙を使って定義するかを競う時代に入ったといわれる。"used"定義はその
> 競争の成果の一つであろうか。英和辞典の世界でもこの"used" 定義の概念
> は利用できそうである。discourse marker[particle]の最近の研究は詳細を
> きわめている。その研究成果を英和辞典の記述に生かそうとすると、(スペ
> ースの問題は別にして)まず関門になるのがどのような訳語を与えどのよう
> に語義区分するかである。discourse marker[particle] をいわゆる「語」
> と同じレベルで記述しょうとするからである。
> しかし語彙的意味の希薄なdiscourse marker[particle] を訳語に基づいて
> 語義区分する事には問題がある。むしろ発話行為の目的に応じた区分がふさ
> わしいように思われる。"used" 定義はこの点で参考になりそうである。

NODEのanyway, however; actually, honestly, presumably; oh, OKの定義(全
語義または一部)はLDOCE3同様'used'定義を採用しており、学習辞典の進化が一
般辞典にも取り入れられている様子がよくわかります。

> (7)タイポグラフィー:LIDに見られるように最近注記を囲い記事にした
> り網掛けにすることが流行している。この発端になったのはPWD(1987)あた
> りであろうか。いま話題のNODEも語法注記と百科情報欄を網掛けにしている。
> その数は1000近くに及ぶ。もう一つは、CIDIに見られるように本文の一
> 部(たとえば、イディオム(の一部))を網掛けにする方法である。英和辞
> 典にもこういった工夫が見られるが、これらは、多すぎると目障りだがほど
> よく使うと紙面の単調さを救ういい工夫である。

CIDIの網掛けは先日私が指摘したように「重要イディオムの差別化」が目的です
ね。
私の知る限り英国製学習辞典で初めて重要語の表示を差別化したのはOxford
Wordpower (1993) ではないかと思いますが、こちらは☆印を用いるものでし
た。
特に高校時代にasterisk表示の英和辞典で英語を学習してきた私にとっては、
Wordpower方式の方が好みです。
網掛けは確かに目立つのですが、個人的には少々読みにくく感じてしまいます。

実は待望のLongman Active Studyの3版を入手したのですが、こちらも3000
ACTIVE WORDSと名付けた重要語を網掛け、というよりは白抜き表示にして差別化
をしています。
あくまでも好みになりますが、やはり私にはこの方式は少々読みにくく感じま
す。
(この辞書に関しては改めて書きます。)

もっとも、これまでWordpowerからCOBUILD2 (1995) やLDOCE3 (1995) の頻度表
示へと続いてきた重要項目差別化の流れが、最近出版の学習辞典に受け継がれて
きた傾向は大歓迎です。(英和辞典の影響でしょうか?)

Hiroshi Shoji
<University of Birmingham, UK>
<Shion Junior College, Japan>



From: "Hiroshi Shoji" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] Longman Active 3 {01}
Date: Thu, 26 Nov 1998 02:25:52 -0000

東海林@バーミンガムです。

待望のLongman Active Study Dictionaryの新版を入手しました。
ISBN 0 582 29893 8 (Paperback edition)

「待望の」と書いたのには訳があります。
Longman Idioms Dictionaryを偶然書店で見つけて購入し、ウェブサイトを確認
したところ、こちらも発売されていることがわかったのですが、長らく書店では
見かけることがなかったのです。
また、過去の英語教育経験から、日本の中級英語学習者にとっては、この規模の
辞書が比較的抵抗感なく使われると思っていました(LDOCE, OALD, COBUILD親版
はかなりの力がないと使いこなせないのではと思います)。
同規模の辞典としては、Oxford Wordpower (1993), COBUILD New Student's
(1997) などがあります。

例によって、裏表紙に書かれている宣伝文句を御紹介し、簡単な説明を付け加え
ます(番号は私が付加したものです)。

1. 45,000 words and phrases, including SPOKEN ENGLISH and NEW WORDS -
from website to eco-warrior

口語はスペースの関係もあってか、LDOCE3ほど目立つ扱いはしていないようで
す。
けれども例に挙がっている新語のwebsiteやeco-warriorは、LDOCE3の時点では見
出し語として採用されておらず(後者はeco-の用例として収録)、規模が全く異
なるNODE (1998) さえも後者は収録していません(前者はweb siteの形で収
録)。
e-mailはハイフンのないemailという形も収録しています(LDOCE3, NODEはハイ
フン形のみ)。
細かい点ですが、コンピュータの周辺機器であるmouseの複数形を'mouses'と記
述している点も注目されます(この点LDOCE3は未配慮で、NODEでは (pl also
mouses) としています)。
現在クラスメートの英国人が「コンピュータのmouseの複数形を'mice'と言うの
には抵抗がある」と言っていたのを覚えていたので、調べてみた次第です。

2. Thousands of examples, based on the British National Corpus and the
Longman American Corpus

コーパス重視は必然的な流れです。

3. 3000 ACTIVE STUDY WORDS tell you which words are the most important,
so you can learn these first

今回の改訂で最も目立つのがこの点ではないでしょうか。
競合辞書のWordpowerの☆表示と類似の特徴を取り入れたわけです。
Active3では黒字に白抜きという形でこの重要語を示しています。
Wordpowerの方式とどちらがいいかは好みの問題だと思いますが、個人的には日
本の英和辞典に近い☆表示の方が見やすく感じます。
重要語の差別化そのものに関しては大歓迎です。

4. 16 colour pages with vocabulary exercises give you practice in using
English

buildingsではお決まりのそれぞれの建物の名称について解説。
classroomは非常に奇妙なイラストで、教師をそっちのけにして鉛筆を削ってい
る生徒やコンピュータに向かっている生徒が描かれています。
clothesやdescribing peopleは、様々な人種の人達が描かれている点が興味深く
感じます。
feelingsは感情を表す形容詞について解説。
environmentは、Global warming, Recyclingなど、6つの絵を使って関連用語を
解説。
foodは2ページに分けて食べ物に関する動詞と食べ物の名称そのものを示してい
ます。
verb of movementも2ページにわたって「手の動き」と「身体の動き」を別々に
示しています。
prepositionsは位置関係を表す前置詞を解説。
soundsでは日本語では擬音語を使って表すような動詞を1ページにまとめていま
す。

カラーイラスト自体は目新しくはありませんが、その前後いずれかのページに練
習問題を付け加えている点が新機軸です。
イラストを有効活用する効果的な手段だと思います。

5. Usage Notes and Study Pages, based on the Longman Learner's Corpus,
help you avoid making mistakes

Usage Notesの方はLDOCE3の記述を短縮したもの、本辞典独自のもの両方があり
ます(後者はこの辞典の想定読者に合わせて書き加えられたようです)。
Study Pagesの方はこの規模の辞典らしく、「加算・不加算名詞」、「他動詞・
自動詞」など、辞書を引きこなす上でも必要な文法事項の解説になっています。

6. FREE built-in workbook for classroom practice or self-study

4番のイラストに関する問題とは別に、辞書を引きながら答える形の練習問題が
15ページにわたって巻頭に組み込まれています。

かなり長文になってしまいましたので、宣伝文句にはないけれどもその他気付い
た点については次回のメールに回したいと思います。

Hiroshi Shoji
<University of Birmingham, UK>
<Shion Junior College, Japan>



From: Hirosada IWASAKI <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] Longman Active 3 {02}
Date: Thu, 26 Nov 1998 12:31:41 +0900

私自身、Webdで宣伝が出てすぐLongman ActiveをイギリスのDillonsに
注文しました。が、旧版を送ってくるという失態で、結局受け取った
ころには、日本でも出回っていました。おまけに、日本では2100円
という戦略的な値付けがなされており、イギリスから注文するより
500円以上安くつきます。

ざっと見たところ、東海林さんが述べられている基本語彙の白抜き見出し
と、BNC/Longman Corpusに基づくと思われる名詞と前置詞の結びつき比較
注記に、新しさが見られます(今、手元に原本がないまま書いています)。

磐崎弘貞
筑波大学



From: "浅田 幸善" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] 「コアな企画」 {01}
Date: Thu, 26 Nov 1998 13:28:59 +0900

次の文中にある「コアな企画」の「コアな」はどんな意味で使われているのでしょう
か。

筋書きのないドラマ"野球"の,ゲームセット直前の最終回・最終打席だけを集め,そ
の中から選りすぐりのものを一挙に放送する。これまでのテレビ番組の発想にはな
かった,そしてとってもコアな企画。
(BSfan1月号 p.173,  CSデジタル放送のSKY sports3 の番組紹介記事より)

このような「コア」の使い方を初めて見ました。何かの間違いではないかとも思いま

たが.....
どなたかご存じの方があれば、ご教示を!

浅田幸善 (ASADA Yukiyoshi)



From: "Matumoto Yosihito" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE: [lex] 「コアな企画」 {01} {01}
Date: Thu, 26 Nov 1998 15:53:45 +0900

浅田先生,佐賀の松本です。

>「コアな企画」の「コアな」はどんな意味で
>使われているのでしょうか。

何度かこの表現に出会ったことがありますが,「どこからかのコピーではなく,オリ
ジナルの発信源である」場合に使われているようです。誰かが「この情報に関しては
ここが中心となって発信しているんだ」という意志表示で使い初めて,支持を得てい
るようです。”辞書学に関しては辞書学メーリングリストが「コアなサイト」”とい
う風な使い方をするようです。

ネット上にはどこからかのコピーばかりで作られたサイトも多いので,流行っている
のかもしれません。考えてみたらテレビの企画も何かのまねが多い分野であるような
気もしますので,この表現を流用したのではないでしょうか。



From:
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] スカイパーフェクTV {01}
Date: Thu, 26 Nov 1998 16:23:26 +0900

西と申します。

私は7月からCSのSkyPerfecTV(スカイパーフェクTV)に加入して
おり、

英語の勉強に役立てています。

その中でもGLCという24時間英会話レッスンを

やっているチャンネルがあります。

そのチャンネルは月額900円ですが、

40chで月3,480円のパックの中に入り、

お得になりました。(英会話の教材に何十万かけるよりいいのでは...)

その他のチャンネルでも、CNN、BBCなど英語のニュースの番組、

英語のドラマ、アニメなど教材に事を欠きません。

また、スポーツ、映画、音楽もBSに比べ、充実しています。

加入料、月額基本料(1年間)が無料になる申込書(今年の12月まで有効)が

ありますので、興味がある方は、私までメール願います。

なお、視聴するには別途、CS用のチューナー、アンテナが必要です。



From: "浅田 幸善" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE: [lex] RE: [lex] 「コアな企画」 { {01}01} {01}
Date: Thu, 26 Nov 1998 17:07:12 +0900

佐賀の松本 様

早速のご回答ありがとうございました。

>
>何度かこの表現に出会ったことがありますが,「どこからかのコピーではなく,オ

>ジナルの発信源である」場合に使われているようです。誰かが「この情報に関して

>ここが中心となって発信しているんだ」という意志表示で使い初めて,支持を得て

>るようです。”辞書学に関しては辞書学メーリングリストが「コアなサイト」”と

>う風な使い方をするようです。
>
>

その「誰か」とはいったい「誰」なんでしょうね。

浅田幸善 (ASADA Yukiyoshi)



From: yasuko Okabe <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] {01}「牛津」と「剣橋」
Date: Thu, 26 Nov 1998 18:09:00 +0900

奈良女子大学の岡部(国語学)でございます。
少し前の話になりますが…

Fri, 11 Sep 1998 11:47:48 +0900,
Terutada Okada様 wrote:
> それにしても誰が最初に「牛津」を使ったのでしょうか.上田敏の「渦巻」
>(明治44年1月、国民新聞)には一度「牛津大学」におくすふおおど」と
> ルビを振って出ていましたが、もっと以前から使われていたと思われます.

明治期に発行されていた総合雑誌『太陽』の第7巻第8号に、それらし
きものが一例見つかりました。「岩崎献書」と題された七言律詩(おふ
ざけではないかと思いますが…)の中に用いられています。

> 富豪寄附笑容眞。豫算難成大學顰。
> 齊以碩儒推馬氏。久將好學冠牛津
                       (下線 岡部)
> 遺書今至三千里。秘藉便資億萬人、
> 如此黄金方活用。三菱會社有精神。

『太陽』第7巻第8号は明治34年7月の発行ですから、岡田様の挙げられた
上田敏の明治44年のものより、さらに10年も早い用例となりますね。
万一(あくまで仮定ですが)、これが「牛津」表記の初出だとすれば、
漢文脈の中ですから外来語の漢字表記としてはそのモチベーションも大変
わかりやすく、パロディ的な作品(一連の律詩は、当時の世相や政情など
を皮肉った内容のようです)の中で独自に創作された用字ということにな
れば、文字の宛て方のひねり方にも納得がいきそうですが…果たして真相
やいかに。明治のごく初期、文明開花期の学問の書(「哲学字彙」などの
たぐい)などを漁れば出てきそうな気もしますが、当面は、上の例が得ら
れる初出例ということになりましょう。

> こうした宛字や翻訳語の最初を調べようとすると日本語の場合全くのお
> 手上げです.「日本国語大辞典」も役に立たずです.
> ご教示を乞う次第です.それにしてもOEDを持つ国はうらやましいですな.

日本国語大辞典は現在、新版の発行に向けて大改訂作業のまっただ中です。
主な改訂点は、「語源」欄の廃止と「語誌」欄の新設、意味記述の補訂と
用例の充足等々と聞いております。わたくしども若僧はごく末端の仕事
(「語誌」欄の執筆)を請け負っただけで、全体の進行などはもっと上の
先生方から間接的にうかがうのみですが、少なくとも語誌欄の作成はラ行
ワ行まで行ってほぼ終了しているようで、もうそろそろ最初の何巻かは
出てもいいのではないかと予想しております。
用例なども、出来るだけ年代の早いものを探し出し、初出は必ず挙げる
ようにするとのことですので、このあたり近代初頭の翻訳語について調
べようとする際のもどかしさも、多少は解消されるやもしれません。

なお、過去ログにも「国立国語研究所のコーパス」という文言が見えま
したので、このMLではすでに知られていることとは存じますが、
現在、国立国語研究所の国語辞典編集室で、「日本の OED」を目指した
大がかりな電算辞書の構築(の一端)が試みられています。
部分的ながら試験的な公開も予定しており、早ければ一両年のうちに、
明治期の総合雑誌『太陽』をベースにした電子コーパスの一部データが
一般の利用に供せられることになります。
ただし残念ながら現在は、同編集室内の研究官・常勤非常勤の研究員な
ど、このコーパスの作成に携わっている関係者のみ利用可のβ版(非公
開)となっています(上の「牛津」の例も、わたくしが通信研究員として
同コーパスの作成に関わる関係でデータを利用し、得られたものです)。

ついでながら、同コーパスでは、「剣橋」のほうはヒットしませんでした。
# 余談ですが、タイヤ会社の「ブリジストン」の社名は、創始者の「石橋」
# さんというお名前に由来すると昔聞いたことがあります。stoneとbridge
# とを入れ替えたところに、わたくしはひとひねりのオシャレ心を感じます♪

長文たいへん失礼いたしました。

===================
岡部 泰子

奈良女子大学 人間文化研究科・助手
(比較文化学専攻 言語文化論講座)

===================



From: yasuko Okabe <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE:RE: {01}「コアな企画」
Date: Thu, 26 Nov 1998 18:25:53 +0900

奈良女子大学の岡部(国語学)でございます。

> その「誰か」とはいったい「誰」なんでしょうね。

この「コアな」という形容は、わたくしの知識(というかイメージ)で
は、元来、特に音楽評論の世界などいわゆる「ギョーカイ」の人が好ん
で用いるものであったように記憶しています。
つまりこの「コアな○○」ということば (遣い)は、本来位相語であった
ものが一般化したものと考えるのが妥当ではないかと思うのですが…
そうであれば、その意味や用法を説明するためには、本来このことば(遣
い)がどのような分野でどのような概念を指していたかを記述する必要が
あるかと思われます。

また長くなりそうなので、以下別便にて(後日?)詳述いたします。

===================
岡部 泰子

奈良女子大学 人間文化研究科・助手
(比較文化学専攻 言語文化論講座)

===================


From: "浅田 幸善" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] 「コンシャスな」 {01}
Date: Thu, 26 Nov 1998 21:11:41 +0900

立て続けに、カタカナ語の話題で申し訳ありません。

次の広告(の一部)をごらんになって、みなさんはどうお感じになりますか?

カラダ・コンシャスな鉄 仕立てます

環境にコンシャスなみなさまにぴったりの鉄,それが新日鉄の薄板です(以下略)

(日経 11/24 新日鉄の広告)

私はこの「環境にコンシャスな」というところで、めまいがしました。
environmentally consciousというのを意識して書いたのでしょうか。

こういう例を見ると、「エステ」をesteと書くくらい、かわいいものだと思えてきま
す。

実は、教材に出てきたconsciousをどういう風に訳そうかと頭を悩ませていた矢先の
ことだったので、よけい気になりました。さすがに、「なんだコンシャスをそのまま
使えばいいのか」とは考えませんでしたが。

その英文は次のようなものです。
Cole Porter was never regarded in his lifetime as socially conscious.
Society-conscious, yes; he was born rich, and married richer, to Linda Lee
Thomas, a wealthy divorcee. Songwriting made him a third fortune. He was
not just rich and famous, he was famous for being rich. Though not a native
New Yorker - he was a backcountry boy from Peru, Indiana - he and his work
came to typify smart Manhattan society. His music was a highly personal
mixture and had huge appeal. Porter, as an admiring contemporary remarked,
made sophistication popular.
この中の、"socially conscious"と"society-conscious"を日本語でどう表現しよう
か、と悩んでいたわけです。
ついでに、お願いしてしまいましょうか。
どなたかうまい日本語を思いついた方、ぜひご一報を。

浅田幸善 (ASADA Yukiyoshi)



From: kazuo kato <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] 「コンシャスな」 {02}
Date: Fri, 27 Nov 1998 09:27:31 +0900

浅田先生:

加藤@岩手医大です.

浅田 幸善 wrote:
>
> カラダ・コンシャスな鉄 仕立てます
>
> 環境にコンシャスなみなさまにぴったりの鉄,それが新日鉄の薄板です(以下略)
>
> (日経 11/24 新日鉄の広告)
>
> 私はこの「環境にコンシャスな」というところで、めまいがしました。
> environmentally consciousというのを意識して書いたのでしょうか。
>
> Cole Porter was never regarded in his lifetime as socially conscious.
> Society-conscious, yes; he was born rich, and married richer, to Linda Lee
> Thomas, a wealthy divorcee. Songwriting made him a third fortune. He was
> not just rich and famous, he was famous for being rich. Though not a native
> New Yorker - he was a backcountry boy from Peru, Indiana - he and his work
> came to typify smart Manhattan society. His music was a highly personal
> mixture and had huge appeal. Porter, as an admiring contemporary remarked,
> made sophistication popular.
> この中の、"socially conscious"と"society-conscious"を日本語でどう表現しよう
> か、と悩んでいたわけです。

(加藤和男)
私なら "socially conscious" は「社会問題に対する意識が高い」,"society
-conscious" は "(high) society-conscious" のことでしょうから,「上流社
会に対する意識が強い」とか「上流社会志向の」と訳したいと思います.
時々試験の問題で単語の意味がわからないと,そのままカタカナにしてしま
う学生がいます.この「コンシャスな」は広告のコピーとしてなら,またカタ
カナで煙に巻こうとしているという受け取り方もあるかもしれませんが,英文
和訳の答えとしてはどうかと思いますね.



From: kazuo kato <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] 分離不定詞と「ら抜き言葉」 {01}{01}{01}
Date: Fri, 27 Nov 1998 10:11:23 +0900

加藤@岩手医大です.

Split Infinitive について次のような文章を見かけました.この間大統領の
弾劾問題を審議する米国下院法務委員会(the House Judiciary Committee)
の証人として証言した,特別検察官 Ken Starr の英語について Mary McGrory
というコラムニストが次のようにコメントしています:

His [Ken Starr's] style is right out of a legal brief, a marvel of
long, looping sentences that came to rest always with all loose ends
tucked in, no dangling participles or split infinitives.
(The Washington Post, Sunday, November 22, 1998; C01)

Ken Starr の英語は,長い,従属文を多用した文でありながら,係り結びがき
ちんとしていることを評価しているわけですが,いわゆる懸垂分詞と分離不定
詞をしまりのない英語の代表として出しているのが面白いと思いました.



From: "浅田 幸善" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE: [lex] 「コンシャスな」 {02} {01}
Date: Fri, 27 Nov 1998 12:43:57 +0900

加藤先生:

早速のお返事ありがとうございました。

「カラダ・コンシャスな」というところで、カラダ=bodyから 「ボディー・コン
シャス」を意識させて、あとの「環境にコンシャスな」の伏線としたのだろうかと、
あとでふと考えましたが、とにかく私としては「このコピーライターは何を考えてい
るのだろう(=こんなコピーはやめてほしい。気味が悪いぞ!)」の思いは、まだ拭
い切れません。

浅田幸善 (ASADA Yukiyoshi)



From: "浅田 幸善" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE: [lex] 「コアな企画」 {03} {01}
Date: Fri, 27 Nov 1998 12:44:34 +0900

(Ms. Yasuko Okabe wrote:)
>この「コアな」という形容は、わたくしの知識(というかイメージ)で
>は、元来、特に音楽評論の世界などいわゆる「ギョーカイ」の人が好ん
>で用いるものであったように記憶しています。
>つまりこの「コアな○○」ということば (遣い)は、本来位相語であった
>ものが一般化したものと考えるのが妥当ではないかと思うのですが…
>そうであれば、その意味や用法を説明するためには、本来このことば(遣
>い)がどのような分野でどのような概念を指していたかを記述する必要が
>あるかと思われます。

いわゆる「業界用語」というわけですね。
英語ではjargonに相当するでしょうか。

少なくとも自分で見聞きして、その意味・用法に納得がいく(あるいはあきらめがつ
く)までは、「一般化した」とは認めたくないという気持ちは強いですね。

実は「位相語」という用語は初めて見たような気がします。

手元の国語辞典を見ると、「位相」は
(物理学の概念を利用して国語学の述語とした菊沢季生の位相論から)
「男女、年齢、職業、階層、地域、あるいは会話と文章、などの違いによって言葉の
違いが現れる現象。」
「位相語」は
「男女、年齢、職業、階層などの違いによって独特に用いられる語彙、女性語、幼児
語、学生語や芸能界、花柳界その他特殊な社会の隠語、中古の和文に現れない漢文訓
読語など。」
(小学館「「国語大辞典」1988年)
とありました。

これを見る限りでは、国語学での用語のようですね。
英語の文体論の本などを見ても「位相」という言葉は出てきません。(単に私が知ら
ないだけかもしれませんが)
もちろんそういう概念がないのではなく、別の用語を使っているのだと思います。

浅田幸善 (ASADA Yukiyoshi)



From: KANOU Hiroki <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] 「コアな企画」{01} {01}
Date: Fri, 27 Nov 1998 22:30:01 +0900

狩野と申します。

> 次の文中にある「コアな企画」の「コアな」はどんな意味で使われているのでしょう
> か。
>
> 筋書きのないドラマ"野球"の,ゲームセット直前の最終回・最終打席だけを集め,そ
> の中から選りすぐりのものを一挙に放送する。これまでのテレビ番組の発想にはな
> かった,そしてとってもコアな企画。
> (BSfan1月号 p.173,  CSデジタル放送のSKY sports3 の番組紹介記事より)

「コアな SF ファン」というような用法はよく見かけますが、「コアな企画」
という表現は初めて見ました。「ある人々のグループの中でもっとも熱心な層」
という程度の意味だと解釈しています。

上の用法では「野球番組のコアな視聴者に受けそうな」という、元の意味から
ずれた派生的用法のように感じられます。もっと普通に見受けられる表現に
置き換えれば、「マニアックな企画」とか「(オタク度が)濃い企画」とでも
なるでしょう。

ところで、「位相語」は英語に翻訳すると `phased word' なのでしょうか、
それとも `topological word' なのでしょうか。
物理専攻なだけに、ついつい気にしてしまいます。

狩野 宏樹



From: "浅田 幸善" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] Cole PorterとCIDE {01}
Date: Sun, 29 Nov 1998 15:00:07 +0900

昨日のワークショップの準備・発表に関わったみなさまご苦労様でした。

先日送ったメールに,(厚かましくも)英語を日本語に訳すのを一緒に考えてほし
い,と書いてしまいました。
ところで,そのときの英文がCole Porterを主題にしていたのを覚えていらっしゃる
でしょうか。
私は,Cole Porterの名前を見ると,どうしてもCIDE (Cambridge International Dic.
of English)を思い浮かべてしまうのです。
そのわけをお話ししますと。
ちょうど2年前のことになります。共同でCIDEの分析を行っていて,私は用例の分析
をする担当になりました。
CIDEの用例の特徴の一つに,通常の用例の後ろに置かれた,"Well-known phrases
from popular songs, television, films, books, plays, and saying by famous
people"(同書p.x)があります。
そこに注目して、そのようなquotationsの出典を全部調べてみました。
その作業をしていて、「おや?}と思ったのが、Cole Porterの歌からの引用が結構
出てくることでした。(タイトルも含む)それで、何となく、この辞書の編者には
Cole Porterのファンがいるに違いない、と思った記憶があります。
もっとも、今、データを調べ直してみると、1400近くあるquotationsのうち、
Cole Porterはわずか7個しかありませんでした。the Beatlesの16個。William
Wordsworthの9個などにも負けており、かろうじてベスト10に入るかな、という程
度だったのですね。全体から見ると多い方ではありますが、7個という数字の割には
強く印象に残ったものです。

ついでに、
いちばん多いのがsayingと分類されるもので、約180個。Shakespeareが貫禄を見
せて、約90個(うちHamletが22個)、それについでBibleが50個ほど。そのあ
たりがダントツのベスト3でした。

(これらの数字はあくまでも概数と思ってください。どうしても見落としがありま
す。全部拾ったつもりでしたが、さきほども、ぱっと開いたCIDEのページに、2年前
に拾い損なったquotationの例が目に入ってきました!!)

浅田幸善 (ASADA Yukiyoshi)



From: yasuko Okabe <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] 「位相語」というターム(元 {01}・Re:コアな企画)
Date: Mon, 30 Nov 1998 12:57:39 +0900

奈良女子大学の岡部(国語学)でございます。

Fri, 27 Nov 1998 22:30:01 +0900,
KANOU Hiroki <> 様 wrote:
> ところで、「位相語」は英語に翻訳すると `phased word' なのでしょうか、
> それとも `topological word' なのでしょうか。

Fri, 27 Nov 1998 12:44:34 +0900 ,
"浅田 幸善" <> 様 wrote:
> 実は「位相語」という用語は初めて見たような気がします。
>
> 手元の国語辞典を見ると、
<勝手ながら中略…>
> これを見る限りでは、国語学での用語のようですね。

お手間をおかけし申し訳ありません。。。
国語学の分野で用いる術語としての「位相語」はまさに引用して下さっ
たとおりのものなのですが、物理で用いられる「位相」という語をいわ
ば喩えとして援用した用語であれば、物理畑の方がご覧になれば当然奇
異に映ったことでしょう。ともあれこの分野でしか通じないという点で
は、そもそもこの術語じたいが「位相語」だったのですね(冷や汗)。
そう言えば、現代日本語を扱ういわゆる「日本語学」では、果たしてこ
の語は用いられるのでしょうか?特に社会言語学的な分野では、性差年
齢差や地域差その他階層や職業など、こういった「位相」に関する問題
は避けて通れないはずですが…どなたかご教示いただければ幸いです。

# 余談ながら、コンピュータの世界で「マック方言」と言われるもの、
# あれも一種の「位相語」ということになりましょうか。

===================
岡部 泰子

奈良女子大学 人間文化研究科・助手
(比較文化学専攻 言語文化論講座)

===================



From: kazuo kato <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] 「位相語」というターム(元 {01}{01} ・ Re: コアな企画)
Date: Mon, 30 Nov 1998 14:30:26 +0900

加藤@岩手医大です.

専攻は一応英語学ということになっていますが,外国語としての日本語教育に
(非常勤で)しばらくかかわったことがあるので,「位相語」というタームは
聞いたことがありました.
『国語学研究事典』(1977,明治書院)や『日本語教育事典』(1982, 大修館書
店)などによると,この用語の初出は昭和 8 年,菊沢季生「国語位相論」にな
っているようです.私はこの論文を読んでおりませんから何とも言えませんが,
欧米の言語学用語の翻訳ではなかったのではないかという気がします.
社会言語学については素人みたいなものですから,見当違いかもしれません
が,「位相語」に近い英語は sociolect(社会の特定集団によって用いられる
言語),idiolect(個人方言),dialect,acrolect((社会)上層方言),
basilect(下層方言),mesolect(中層方言),genderlect(性差方言(?
)),
などの -lect かなと思います.しかし,-lect は語彙を含んだ言語の総体を指
すのに対し,「位相語」はもっぱら問題の集団特有の語彙を指すようですから,
少し違うようです.また,-lect は単独ではあまり用いられませんから,その
点でも「位相語」とは異なります.
また,ある分野に特有な用語法をやや軽蔑的に呼ぶ -ese という語尾もあり
ます.例えば, sociologese(社会科学特有の難解な用語法),educationese,
commercialese, journalese, bureaucratese, governmentese,
dissertationese, officialese などですが,こちらは「学問的な」用語ではあ
りません.computerese という見出し語が辞書にありますから,Applese とか
Microsoftese なども了解可能ではないでしょうか.
以上,気のついたことを書きました.



From: Minoru MURATA <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] 分離不定詞と「ら抜 {01}き言葉」 {01}{01}{01}
Date: Mon, 30 Nov 1998 14:36:10 +0900

村田 年です.

kazuo kato <> さんは書きました:
> 加藤@岩手医大です.


> Ken Starr の英語は,長い,従属文を多用した文でありながら,係り結びがき
> ちんとしていることを評価しているわけですが,いわゆる懸垂分詞と分離不定
> 詞をしまりのない英語の代表として出しているのが面白いと思いました.

分離不定詞がしまりのない英語の代表との指摘のよい実例をいただき,なるほど
と認識を新たにし,勉強になりました.

しかし,LDOCE3,COBUILD2,OALD5などが説明文の中でこれを多用しているのは
どう解釈したらいいのでしょうか.COD など一般の辞典はどうなっているのか,
時間があったら見てみたいですね.



From: kazuo kato <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] 分離不定詞と「ら抜 {01} {01}き言葉」 {01}{01}{01}
Date: Mon, 30 Nov 1998 16:07:23 +0900

村田先生:

英語辞書研究会ワークショップ事務局のお仕事お疲れ様でした.

Minoru MURATA wrote:
>
> 村田 年です.
>
> kazuo kato <> さんは書きました:
> > 加藤@岩手医大です.
>
>
> > Ken Starr の英語は,長い,従属文を多用した文でありながら,係り結びがき
> > ちんとしていることを評価しているわけですが,いわゆる懸垂分詞と分離不定
> > 詞をしまりのない英語の代表として出しているのが面白いと思いました.
>
> 分離不定詞がしまりのない英語の代表との指摘のよい実例をいただき,なるほど
> と認識を新たにし,勉強になりました.
>
> しかし,LDOCE3,COBUILD2,OALD5などが説明文の中でこれを多用しているのは
> どう解釈したらいいのでしょうか.COD など一般の辞典はどうなっているのか,
> 時間があったら見てみたいですね.
>
(加藤和男)
この問題について私個人は NODE の USAGE NOTE の記述が妥当なものと思って
おります.私が前回引用した Mary McGrory のような人たちは, NODE のいう
'some traditionalists [who] hold up the split infinitive as an error'の
範疇に入るのだと思います.
この種の問題は多数決で決めるわけには行かないので,彼女のような
'traditionalists’の声が無視できるほど小さくなるのを待つしかしかたがな
いのではないでしょうか.母国語話者 (Native Speaker) もそう言ったり書い
たりていると抗弁しても,外国人学習者は真似すべきではないと逆に怒られる
こともあるような気がします.
日本語でも同じではないかと思いますが,母語に対する所有者意識には意外
に根深いものがあります.「外国語としての」英語を教えていると自己紹介す
る時,うっかり「外国語としての」の部分を言わなかったりして,「お前が?」
というような表情をされたことが何度かあります.



From: yasuko Okabe <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] 「コアな○○」その1 {01}
Date: Mon, 30 Nov 1998 17:04:30 +0900

奈良女子大学の岡部(国語学)でございます。

Fri, 27Nov 1998 12:44:34 +0900 ,
"浅田 幸善" <> 様 wrote:

> 少なくとも自分で見聞きして、その意味・用法に納得がいく(あるいはあきらめが
> つく)までは、「一般化した」とは認めたくないという気持ちは強いですね。

「一般化した」という表現は不適切であったと反省しております(^^;;
「最近では、音楽評論家やミュージシャンなどといった特定の立場の人
に限らず、職業的に "一般"の人がこの語を用いることが多くなって来て
いる」という含みでつい「一般化」と書いてしまったのでした。しかし
ながら、確かに、結局この語は使用語彙としても理解語彙としても、一
部の(文化的な意味での)若者層に限定されるものであるようですね。こ
の際はっきりと「若者語である」としてよいかもしれません(文化的に若
者圏に属すると言う意味ですので、実年齢での線引きは不可能でしょう)。
そういう点ではやはり「コアな○○」ということば (もしくはことば遣
い)は、あくまでも一種の「位相語」に過ぎないものであって、真に「一
般化」を果たしたと言えるまでにはいまだ至っていない、ということに
なりましょう。

一般に意味用法に納得がいくほど見聞きすることがないことも、この表
現が用いられる場が限られているからに他ならないと思うのですが、わ
たくしは個人的にはたいへんよく見かけます(音楽雑誌の紹介記事やレ
コード評などの文章では、そうとう早くから目にしていたように記憶し
ております)。以下、別便で実例を挙げたいと思いますが、それらの用
例を見る限りでは、「コアな」という表現は、若者の間では(一部とは言
え)すでにある程度なら定着を見ることができると言ってよさそうです。
意味用法は、ほぼ狩野様が解説して下さったとおりで

Fri, 27 Nov 1998 22:30:01 +0900 ,
KANOU Hiroki <> 様 wrote:

> 「コアな SF ファン」というような用法はよく見かけますが、「コアな企画」
> という表現は初めて見ました。「ある人々のグループの中でもっとも熱心な層」
> という程度の意味だと解釈しています。

「(××の)コアなファン」のように、「コアな」という形容を受ける語
がヒトの範疇に含まれる名詞である場合には、まさにそのような意味に
なりましょう。××マニア、××オタク、あるいは××フリークなどと
言う場合に同じです。ただ、マニアックでオタクな、という意味で用い
られた、例の「コアな企画」の用法が

> 上の用法では「野球番組のコアな視聴者に受けそうな」という、元の意味から
> ずれた派生的用法のように感じられます。もっと普通に見受けられる表現に
> 置き換えれば、「マニアックな企画」とか「(オタク度が)濃い企画」とでも
> なるでしょう。

とおっしゃるように「元の意味からずれた派生的」なものであるかどう
かについては、いましばらく断言をさけておいた方が無難かも知れませ
ん。この「コアな企画」というパターンは、あんがい「普通に見受けら
れる表現」でして、必ずしも珍しいものではないからです。具体的には、
「ネタ・話題・内容」といったものに対して「コアな」が用いられたも
のがあります (長くなりますので実例は別便にて…)。

なお、オリジナルの発信源・情報の中心などの意味合いでの「コアな」
という表現は、いまだ目にしたことがありません。あるいはこういった
意味はわたくしが知る「コアな」から、さらに変容・展開した使い方か
と興味をもち、Gooの検索でインターネット上の用例を探して目を通して
みましたが、それらしきものはどうも見あたりませんでした。
そのかわりになかなか面白い「コアな」の例が少なからず見つかりまし
たので、このあと便を改めて、もう少し補足をしたく存じます。
よろしければどうぞおつきあい下さいまし。【その2に続く】

===================
岡部 泰子

奈良女子大学 人間文化研究科・助手
(比較文化学専攻 言語文化論講座)

===================



From: yasuko Okabe <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] 「コアな○○」その2 {01}
Date: Mon, 30 Nov 1998 17:22:19 +0900

奈良女子大学の岡部(国語学)でございます。
その1の続きです。

「コアな」という表現をごく簡単に一言で言い換えれば、「マニアック
な」「こだわりを持った」などという意味合いになるでしょう。以下の
例は全てその意味に解釈して問題ないと思われます(用例はGooの検索で
引っかかってきたものです。出典代わりに URLを示しますので、文脈な
どの確認のためご覧になる際などにご利用下さい)。

まず先のわたくしのポストに対する補足から。。。

> 「(××の)コアなファン」のように、「コアな」という形容を受ける語
> がヒトの範疇に含まれる名詞である場合には、まさにそのような意味に
> なりましょう。××マニア、××オタク、あるいは××フリークなどと
> 言う場合に同じです。

こういった用いられ方をした例が、最近では数の上でもっとも"標準的"
かもしれません。少し例を挙げますと

[例1]
>> あと、国名や地名をつけたバンドは、音楽性も含めダサイのが多いですな。
> シカゴは友達にコアなファンがいますのでケチつけるのやめときます。
(http://www.sega.co.jp/music/bbs/vol35/35_10.html)

[例2]
>> SMAPのBeby−Gって何?
> 昨年の夏コンでしてたおそろのやつでしょ?あれは別に特別仕様のBGで
> はないそうです。コアなファンから聞いたんですけど「96の夏
> X-treamの海外限定なんだよー。」?よくよく聞いてみるとG-LIDEのよう
> です。特別ないわゆるアーチスト物ではないようですよ?
(http://www.answer-net.co.jp/user/ezaki/wwwboard/wesley.answer-net.co.jp/wwwboard/messages/1712.htm)

ともに、来訪者参加型のネット上の掲示板でのやりとりからの用例です。
「シカゴ」も「SMAP」も人気のあるバンド名・グループ名です(念のため)。
「コアな」ファンなら、信奉するバンドの音楽性をダサイと批判されれ
ば当然黙ってはいないでしょう。例2は、衣装かグッズか何かについて
のファン同士での情報交換 (質問とそれに対する答え)のようですが、埒
外の人間にしてみれば「よくそんな細かいことまで」と呆れるようなこ
とを知っているのが「コアなファン」なわけですね。まさにマニア・オ
タクと同義と言ってよさそうです。

ところで、「コアなファン」がマニア・オタクという表現と同義である
ことからすでに自明であると思われますが、「コアな」という形容には、
周囲から多少ケチをつけられようが批判されようが「我が道を行く」式の
あるこだわりを持っていることが要素として含まれるようです。
次の例3は、「ファン」を形容するものではないものの意味的にはそれ
に準ずるもので、ここでは「派閥に別れて」まで己のこだわりを曲げな
い人々の、ある車種に対する愛着・愛好が示されています。

[例3]
>  マツダ・ランティス
> マツダ原理主義の影のフィクサー。実はコアな人気を持つが、やはりそ
> こはコア。セダンとクーペで派閥に別れているらしい?
(http://www.linkclub.or.jp/~denki/kuruma/meisya/link.html)

こういった「コアな」立場は、後に出てくる例4のように「メジャー」
で「ミーハー」な立場と対比させて位置づけられるものです。
「ミーハー」とは、一昔前・一世代前には「みぃちゃんはぁちゃん」と
言われていたものの省略語形ですが、その由来は「婦女子の代表的な名
前である"みよちゃん・はなちゃん"の略」とも「英語のme,her」とも言
われ、いずれにせよ元々は、「誰々さんも持っているから」「何々ちゃ
んも応援しているから」というので、あまり深く考えずに流行りの物を
欲しがったり、流行のアイドルやグループなどのファンになったりする
存在(多くは女性にして若年層)のことを言い、またそういう嗜好のあり
方を言っていたようです(最近はまた少しずつ意味用法が違ってきている
ようですが)。
世の流行りすたりに従って、自分の嗜好とは無関係にはやりものであれ
ばすぐに飛びつき、またあっけなくファンをやめたりするような軽薄さ、
追随、付和雷同…そういった要素を逆に持た*ない*のが「コアな」一派、
ということになりましょう。

こういった構図で位置づけられる「コアな」人々というのは、狩野様の
解説 「ある人々のグループの中でもっとも熱心な層」になお少し補足し
て、同じ熱心な層でも、ミーハー的なはしゃぎ方とは対局の、ある種の
マイナーな"こだわり"(よっぽどのマニアでないと理解しがたいようなこ
だわり)を持った人々のことである、と注記できましょう。

こういったコアな一派が好むような話題、コアな人々にのみ通用するよ
うな内容についても、「コアな○○」の表現はよく用いられています。
先のポストで

> この「コアな企画」というパターンは、あんがい「普通に見受けられる
> 表現」でして、必ずしも珍しいものではない

> 具体的には、「ネタ・話題・内容」といったものに対して「コアな」が
> 用いられたものがあります

と申し上げたものがそれで、例えば

[例4]
> ここに始めてきたけど、結構コアな内容が多いですねぇ。
> メジャーな内容が少ないように思える。(^^)
> 集え!ミーハーリスナー!
(http://www.sega.co.jp/bbs/m/music/2_swsnh_swsnh.shtml)

などの例が見られますが、、、
すでに相当長くなりましたので、いったんここで切ります。【その3に続く】

===================
岡部 泰子

奈良女子大学 人間文化研究科・助手
(比較文化学専攻 言語文化論講座)

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From: yasuko Okabe <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] 「コアな○○」その3 {01}
Date: Mon, 30 Nov 1998 17:35:17 +0900

奈良女子大学の岡部(国語学)でございます。

新参者の部外者がたびたび、しかも毎度長文でたいへん失礼いたします。
また、これまでのすべてのポストにおいて、思うところあって文中での
敬称を「様」で統一させていただいております。
先生方を出版・翻訳関係の方や院生さんなどから区別して呼び分けるほ
ど、皆様のお名前とご所属やお立場などを存じ上げていないためですが、
高名な先生方にはかえって非礼に当たるかもしれません、ご無礼の段ど
うぞご容赦いただきますよう、遅ればせながらお願い申し上げます。

さて、先ほどのその2の続きですが、
「コアな企画」という例に近いと思われる「コアな話題」「コアな内容」
などのたぐいについて…

[例5]
> しかし、学生の時も社会人になっても、FIREの周りでだけかもしれ
> ないが、どうも酒の席で主導権を握るのは女性らしい。今回も早々と主
> 導権を握ると、コアなネタで他のメンバーをはるか彼方の世界へと誘っ
> ていった。私も大体のネタにはついていける仕様になっていたはずなの
> だが、残念ながら今回は全くついていけず、コアなネタについていける
> 連中を「何なんだ?」という目で見ながら、それでも実は淋しい思いを
> していた。(http://www.teleway.ne.jp/~fire/fi016.html)

[例6]
> さて、検査と言えばパンしゃぶ省のパンしゃぶ検査官の勇姿が脳裏を過
> る今日この頃ですが、この項では職安にやってきた会計検査院の検査官
> について書いてみようと思います。
> あ、でも、職安のヒラ職員が目撃した会計検査ですので、そうそうディー
> プでコアな部分(*1)はありませんのであしからず。
> (*1)会計検査院にまつわる諸々の噂話は新聞や週刊誌が詳しいので、
> ここでは割愛します。「え、なになに?」てな人は、とりあえず知人
> にでも聞いてみてください。納税意識が高まること請け合いです。
(http://www.pp.iij4u.or.jp/~era/him56/h06.htm)

例5では "ついていけない"ような話題を、例6では「職安のヒラ職員」
では直接見聞きできないような話を、それぞれ「コアな」と形容してい
ます。例6で「ディープで」の語と並んで用いられているところや筆者
本人による注記の内容(納税意識が高まるような話ってどんな噂でしょう
か ^^;;)などからも、「コアな」ということばが表すマニアックさ、
「知る人ぞ知る」的なマイナーさや詳しさといったようなものが窺えま
しょう。「コアな話題」のまさにこういった点が、先ほどの例4で、広
く知られた話題であることを示す「メジャー」の語や、最大公約数的な
一般性を示す「ミーハー」の語と対比をなしていたものと考えられます
が、こういった場合の「コアな○○」という表現は、「メジャーでない
ことの美徳」や「手に入りにくい情報のもつ希少価値」などという、い
わば「プラスの評価や評価性」を帯びた形容であると言えるでしょう。
自ら「コアな○○」と名乗る次の例7には、ちょっと他とはちがうんだ
ぞ、という自負さえ感じられます。

[例7]
> ちょっとコアな電脳雑誌 C3MAGAZINE 第弐号
(http://www.c3.club.kyutech.ac.jp/c3mag/02mag/)

この一連のスレッドのきっかけとなったTV番組の「とってもコアな企
画」の例も、よっぽどの野球マニアではない一般の視聴者にこの企画が
果たして受け入れられるのか?!といった驚愕と疑問・不安を呈しつつも、
やはり上と同様の意味で、一種の褒めことば的なニュアンスで用いられ
たと取ってよいのではないでしょうか。

この「コアな」という形容が、音楽評論などの分野で特に好んで用いら
れるものではなかったかとは、すでに述べたところですが(と書き来たっ
て気づいたのですが、音楽と申しましても、クラシックなどの高尚なそ
れではございませぬ…ロックやヒップホップなどといった、若者向けの
ものです)、そのような特定の分野・場面で用いられていた一種の位相語
的なものであったこの表現が、それ以外の場でも用いられるようになっ
た背景には、「コアな」という形容の持つ、ある独特の価値(若者文化に
おける「コアな」ものの価値付け)が、彼ら「コアな」の使用層から好ま
れたことが大きく影響しているのではないか…わたくしはそんなふうに
考えております。

以上は、入手できた「コアな」の用例から、この表現の意味用法を帰納
的に記述する立場に立って書き進めてきたのですが、ここからは、「コ
アな」という形容が、どういう経緯でこれら用例に見られるような用い
られ方を生じたのか、いわば通時的な観点からの考察ということになり
ましょう。先日のわたくしのポストで

> その意味や用法を説明するためには、本来このことば(遣い)が
> どのような分野でどのような概念を指していたかを記述する必要が
> あるかと思われます。

と述べたのは、まさにそのあたりのことを言わんとしていたのですが、、、
またまた長くなりましたので、本日はこれにて…
また後日、続きをポストしたいと思います。【その4に続く】

長文たいへん失礼いたしました。

===================
岡部 泰子

奈良女子大学 人間文化研究科・助手
(比較文化学専攻 言語文化論講座)

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From: "K.Katsu" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] RE: [lex] 「位相語」というターム {01}(元 {01}{01} ・ Re: コアな企画)
Date: Mon, 30 Nov 1998 23:55:30 +0900

ご指摘の通り「国語位相論」は、日本語研究に自然科学で用いられていた術語
(phase)の概念を導入して、書かれたものです。ボクも10年ほど前、講義
で聞いたもので、読んだことはありません。確か、菊沢氏が主張したのは、
「位相論」は「様相論」と「様式論」からなり、「様相論」は言語社会を背景
としてその位相の違いを考えるべきもの(狭義の位相論)、「様式論」は音声
言語、文字言語など表現形式の違いを背景とする位相の違いを考えるべきも
の、ということだったと思います。これによって社会的な差や文体の差などか
ら日本語のバリエーションを考察することを提唱したのではなかったのでしょ
うか。

位相差を用いて文献と言語地理との不一致を説明している論文もいくつかあっ
たと思います。小林隆氏の「<顔>の語史」(『国語学』132)によると例
えば「顔」は、語史ではカオからツラの順で現れていますが、言語地図の分布
からはツラからカオのという変化が推測されます。この順序の不一致を、「位
相」という考えを用いて、貴族層がカオを、庶民がツラを使っていたとし、中
世になって、説話などが登場するようになって庶民語が文献に現れるように
なったことが文献の歴史にあらわれ、一方、ツラが卑語になるにつれ貴族層の
カオを庶民が使うようになったことを言語地図が反映しているとしています。
不一致は文献と方言の資料の性格によるもの、という指摘があったと思いま
す。

Katsu Keiichi 勝 啓一



From: "Hiroshi Shoji" <>
To: "lex List Member" <>
Subject: [lex] Longman Active 3 {03}
Date: Mon, 30 Nov 1998 20:40:23 -0000

東海林@バーミンガムです。

初めに[lex] Longman Active 3 {01}の訂正

> Active3では黒字に白抜きという形でこの重要語を示しています。

(誤)黒字→(正)黒地

磐崎先生:

> 私自身、Webdで宣伝が出てすぐLongman ActiveをイギリスのDillonsに注文
> しました。が、旧版を送ってくるという失態で、結局受け取ったころには、
> 日本でも出回っていました。おまけに、日本では2100円という戦略的な
> 値付けがなされており、イギリスから注文するより500円以上安くつきま
> す。

もう日本でも出回っていたのですね。
Active3のこちらでの価格は£8.50となっています。
2100円という価格はこの夏の為替レート最悪時とほぼ同等ですが、£1=2
00円前後の昨今でも、十分に妥当と言えるのではないでしょうか。
磐崎先生のおっしゃる通り「戦略的な値付け」だと思います。
今回も桐原書店さんが輸入元になっているのでしょうか?

> ざっと見たところ、東海林さんが述べられている基本語彙の白抜き見出しと、
> BNC/Longman Corpusに基づくと思われる名詞と前置詞の結びつき比較注記に、
> 新しさが見られます(今、手元に原本がないまま書いています)。

ACTIVE WORDSは3000語とのことで、これがLongman Defining Vocabularyの約
2000語を完全に包括しているのか、ズレがあるのか、興味深いところです(未調
査)。

さて、今回はActive3の定義スタイルについて少々書いてみたいと思います。
先に南出先生が、Longman Idiom DictionaryでCOBUILD開発の文定義が用いられ
ていることを指摘されていましたが、Active3においても文定義は所々に見られ
ます。
(丁寧に調べていないのですが、形容詞のみに用いられている可能性大です。)

(例1)civilized
1 a civilized society is well organized and has highly developed laws
and customs

(例2)cultivated
1 someone who is cultivated is intelligent and knows a lot about art,
literature etc

(例3)cultured
someone who is cultured is well educated and knows a lot about art,
literature, music etc

上記いずれもLDOCE3では句定義になっています。

やはり南出先生が指摘しておられた'used'定義もActive3では用いられています
が、これはほぼLDOCE3を引き継いだものと言えそうです。

さて、Active3で用いられているもう一つの定義スタイルとして、名詞の定義に
時々使われている'when'定義を指摘したいと思います。
(Active1&2が手元にないのでわかりませんが、この版で初めて採用されたスタ
イルではないでしょうか?間違っておりましたら訂正をお願い致します。)

(例4)discrimination
1 when one group of people is unfairly treated differently from another

(例5)improvement
when something becomes better than it was

(例6)operation
1 when doctors cut into someone's body to repair or remove a part that
is damaged
2 when people work together in a planned way in order to try and do
something

上記いずれもLDOCE3ではwhenを用いることなく定義されています。

このようにActive3では同一辞書内に様々な定義スタイルが用いられているわけ
ですが、それぞれがどのように使い分けられているのか興味深いところです。
また、学習者の側から見た場合、その違いが語義の理解にどのように影響するの
かも調べてみる価値がありそうです。

Hiroshi Shoji
<University of Birmingham, UK>
<Shion Junior College, Japan>


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