分割不定詞{01}
Date: Fri, 20 Nov 1998 11:31:20 +0900
近藤@癒しの島:四国、です。
Oxford は今まで、不定詞の<to>と動詞との間に副詞が入る「分割不定詞<split infinitive>」を認めていなかったけれども、Oxford American Desk Dictionary(9月改訂)で初めて認めた、という情報が入ってきました。
私自身もイギリス留学中(20年以上前の話)に、「文を前置詞で終わってはいけない」「新しい段落をbutなどで始めてはいけない」など、いくつかのdon'tsとともに『分割不定詞をつかってはいけない』と、<Advanced English Practice>の著者であるGraver氏あるいはそのスタッフから教わった経験があります。しかし、少なくとも現在ではアメリカの新聞、日本の英字新聞では、普通に目にする用法だと思います。私自身はどうしても積極的に使えないのですが、目的語が長い場合などには必要不可欠な用法ではないかと考えています。私自身は高校生に説明するときには、私が教わった学問的な意見と実際の用法の両方を教えています。
(1)今現在、分割不定詞に対しては学問的にはどういう扱いになっているのでしょうか。どういう意見が大勢を占めているのでしょうか。
(2)私の手持ちの文法書には「分割不定詞」について説明したものがないのですが、この問題について説明してある文法書がございましたら書名と出版社名をお教えいただけないでしょうか。
よろしくお願い致します。
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Yukihiro Kondoh
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Subject: [lex] 分割不定詞 {02}
Date: Sat, 21 Nov 1998 01:46:08 +0000
近藤先生
埼玉の杉本です。
>
(1)今現在、分割不定詞に対しては学問的にはどういう扱いになっているの
>
でしょうか。どういう意見が大勢を占めているのでしょうか。
>
(2)私の手持ちの文法書には「分割不定詞」について説明したものがないの
>
ですが、この問題について説明してある文法書がございましたら書名と出版社
> 名をお教えいただけないでしょうか。
私は分割不定詞を教室で教えた記憶がありません。文法を独立して教えていたときの教科書のTeacher's
Manual
を取り出して(ほこりをはらって)見てみましたがやはり載っていませんでした。リーダーでもおそらくなかったのではないかと思いますが、そこまで記憶がはっきりしているわけではありませんので、もしかすると出てきたのかもしれません。でも原文はそうであっても教科書では書き換えられた可能性も高いのではないかとも思いますが。
その文法書は次の三冊です。
Unicorn English Grammar. Revised. 文英堂、1985
My English Grammar. 旺文社.、1981
A New Guide to English Grammar. 東京書籍、?
分割不定詞については次の文法・語法書に解説が載っています。
江川泰一郎『英文法解説』 p. 329 (金子書房、1991 )
宮川幸久他『ロイヤル英文法』 p. 418 (旺文社、1988 )
Swan, M.: Practical Engish Usage. p. 260 (Oxford, 1995)
Collins Cobuild English Usage. p. 664 (HarperCollins, 1992)(これが例文も豊富で一番詳しく書かれています)
もう一書から一部を引用しますと、
Long a major bone of contention among teachers, grammarians, and commentators on style and usage, the split infinitive in the last two decades has become a matter of minor concern. Many younger speakers and writers split or leave intact their infinitives without being aware that the matter was ever controversial. Probably the most famous split infinitive in the language is <to boldly go (where no man has gone before), occurring in the opening voice-over of the US television series <Star Trek> (1960s), and subsequently often parodied.
-- McArthur, T. (ed.): The Oxford Companion to the English Language. p. 897. Abridged Edition. Oxford, 1996( italics の箇所を< >で囲みました)
上記の書には一例も見られませんが、手元に次のような受け身の例がありました。これなども「分割不定詞」に入ると考えてよいのでしょうか。
For me, the marriage was a contract, not to be lightly
broken or ever broken.
-- Wallace, I.: The Prize, p. 514
August Hugo Black had warned her, had he not, that Gates
was not a man to be lightly dismissed.
-- Leason, B.: Richer than Sin, p. 1
The most important thing is to be spiritually fulfilled.
-- Mainichi Weekly, June 22, 1996
Subject: [lex] 分割不定詞 {02}
Date: Sat, 21 Nov 1998 02:32:24 +0000
埼玉の杉本です。
先程布団にもぐりこんでから、とんでもない間違いをしてしまったのに気がつきました。
最後に「手元に次のような受け身の例がありました。これなども「分割不定詞」に入ると考えてよいのでしょうか」と書きましたが、to
と原形の間に副詞が入るのが「分割不定詞」なのにそうでない例を勘違いしてしまいました。
大変失礼しました。お許し下さい。
Subject: [lex] RE: [lex] 分割不定詞 {02} {01}
Date: Mon, 23 Nov 1998 15:36:25 +0900
杉本先生へ
●お礼が遅くなりましたが、応答ありがとうございました。
>でも原文はそうであっても教科書では書き換えられた可能性も高い
>のではないかとも思いますが。
●その可能性は十分あると思います。教科書に限定するとでてこないのかも知れませんね。現実には、英字新聞やネイティブの人が書いたメールなどでもよく見ますが。
>分割不定詞については次の文法・語法書に解説が載っています。
> 江川泰一郎『英文法解説』 p. 329 (金子書房、1991
)
●これは持っています。不注意で見落としていました。
> 宮川幸久他『ロイヤル英文法』 p. 418 (旺文社、1988 )
●書店で確認致しました。
> Swan, M.: Practical Engish Usage. p. 260 (Oxford, 1995)
●これの江川先生が翻訳された方を買い求めました。
> Collins Cobuild English Usage. p. 664 (HarperCollins,
1992)
>
(これが例文も豊富で一番詳しく書かれています)
●これは手に入りませんでした。近いうちに県庁所在地まで出かけて探して見ます。大阪の書店で見かけたような気がするのですが。このMLで話に登場する書籍の多くが私の市の書店では、扱っておりません。いつも確認したくてもすぐに確認できない情況です。
ありがとうございました。助かりました。
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Yukihiro Kondoh
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Subject: [lex] RE: [lex] 分割不定詞 {02} {03}
Date: Mon, 23 Nov 1998 16:14:06 +0900
加藤@岩手医大です.
『研究社英和中辞典』や『ジーニアス』の split infinitive という見出し語の解説がもっとも短くて要を得ていると思います.また,この語の訳語は「分離不定詞」が普通ではないでしょうか.
この問題については NODE の紹介でもふれたことがあるような気がします.
> Subject: The New Oxford English Dictionary (NOED)
> Date: Fri, 21 Aug 1998 17:36:29 +0900
>
> 加藤@岩手医大です.
>
> 配達されたばかりの The Weekly Telegraph, Issue No
369 (On sale from
> Wed August 19 to Tues August 25 1998) に Tom Utley
という人の The New
> Oxford English Dictionary
の書評があるのに気づきました.数日前 BBC の
> 短波放送で NOED
のことをぼんやり聞いていたときには OED
の新版が出たの
> かと思っていたのですが,Weekly Telegraph
の写真を見ると一冊本なのです.
> 価格も L29.99 (L
はポンド記号のつもりです)で,一週間ほど前に出た
> Chambers Dictionary, new edition が L25
ですから似たようなサイズなので
> すね.OED の新版
の新版かなと思っていたので肩透かしを食ったような気持ち
> です.
> ただ,Weekly Telegraph の書評は保守的で,
'Dictionary to boldly rule
> in favour of split infinitives' 'Sorry, Ms Pearsall, but up
with this I
> will not put'
などという見出しがついています.
> とりあえず,ご報告まで.
ただ,NOED は NODE の間違いでした.
Subject: [lex] RE: [lex] RE: [lex] 分割不定詞 {02} {01}{03}
Date: Mon, 23 Nov 1998 16:44:37 +0900
加藤先生へ
近藤@四国、です。ありがとうございました。
●確認させていただきました。ありがとうございました。
「分離不定詞」という訳語についてですが、私にはどちらが普通かの判断はつきません。諸先生方にお任せ致します。(^_^;) ですが、辞書で確認する限りは調べなおした結果、持っている辞書のすべてが「分離不定詞」でした。加藤先生のご意見が説得力がありそうです。
●英字新聞などでこの用法が普通に(私には普通に思えます)使われている現状を考えると辞書の説明(例えば、研究社英和中辞典)は不十分ではないかと思います。また、保守的な気もします。
私の印象では、意味があいまいになる場合よりも、目的語が修飾語や関係詞節がついて長くなっている場合に、よく見かけるような気がします。私見というほどのことは言えませんが、目的語が長くなっている場合にはこの用法を*積極的に*教えても、あるいは認めても良いのではないかと考えています。不適切でしょうか。
以上です。
P.S. 加藤先生が以前に提示された<face [the fact] that S + V ...>の件ですが、あれ以来ずっと実例を探していますが、出くわしません。検索できるHPなどでは検索も試みますが、ダメです。探そうと思うと見つかりません。やはり、日頃からメモする癖をつけないとダメですね。いざというときに間に合いません。
これからもよろしくご教示下さい。
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Yukihiro Kondoh
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Subject: [lex] RE: [lex] RE: [lex] 分割不定詞 {01}{02} {01}{03}
Date: Mon, 23 Nov 1998 17:45:37 +0900
近藤先生:
加藤@岩手医大です.
この問題に関する解説で一番くわしいのは George O. Curme (1931), Syntax (D. C. Heath and Co.), pp. 459-467 ではないかと思います.(私が持っているのは Maruzen Asian Edition です.)また,この問題は「見れる,食べれる」などのいわゆる「ら抜きことば」と似ているところがあります.テレビを視聴していると,「見られる,食べられる」より「見れる,食べれる」のほうが圧倒的に多いような印象を受けますが,これが正統的な用法ではないとする人もかなりいます.
辞書に用法の「鏡」としての役割ではなく「鑑(かがみ)」としての役割を期待する人の数を考えれば,辞書の記述はある程度保守的にならざるをえないと思います.(「鏡」と「鑑(かがみ)」という使い方は『三省堂国語辞典』の編者だった見坊豪紀氏の受け売りです.)
Subject: [lex] RE: [lex] RE: [lex] 分割不 {01}定詞 {01}{02} {01}{03}
Date: Tue, 24 Nov 1998 13:36:40 +0900
村田 年です.
この Split Infinitive は「見れる」「食べれる」とは少し違って,LDOCE3 や COBUILD2 や OALD5 といった普通の辞書や新聞や雑誌の地の文に出てくるものです.これに対する対処は少し変える必要があるのではないでしょうか.
Subject: [lex] RE: [lex] RE: [lex] 分割不 {01} {01}定詞 {01}{02} {01}{03}
Date: Tue, 24 Nov 1998 15:59:00 +0900
村田先生:
加藤@岩手医大です.
Split Infinitive が「見れる」「食べれる」とは少し違うかどうかという問題ですが,私が「見れる」「食べれる」といういわゆる「ら抜きことば」を持ち出したのは,「日本語の乱れ」というような話題で必ずと言っていいほど引き合いに出されるのがこの現象だからです.つまり,現実に行われている用法と「規範」の間にズレがある例としては類似の現象だと言ったまででした.この種の比較では比較の規準を厳密にして同じ土俵の上で議論しないと,議論がすれ違いになる可能性があります.ただ,「見れる」「食べれる」が書き言葉にも見られるという証言はあります.ちょっと古い本ですが,『図説日本語』(角川書店,1982),p 362 には「このごろは,新聞などの書きことばにも,少しずつ出てくるようになったが,[『見れる』『来れる』は] まだ『見られる』『来られる』のまちがいだ,とする人も少なくないだろう.」とあります.
私としては辞書の文の中に問題の形が登場するかどうかというような細かな規準までは考えておりませんでした.単に規範に違反すると言われながら世間で広く行われている形,という規準でなら同じと考えていいのではないかと思った次第です.
また,Split Infinitive については The New Fowler's Modern English Usage, ed. by R.W. Burchfield (Oxford, 1996) の解説が最近の傾向について上手にまとめていると思います.
Subject: [lex] RE: [lex] RE: [lex] 分割不 {01}{01} {01}定詞 {01}{02} {01}{03}
Date: Tue, 24 Nov 1998 16:59:32 +0900
村田 年です.
加藤先生のおっしゃる通り,かなり大ざっぱな議論をしているわけでご教授ありがとうございます.ただ,Split Infinitive は,文章を書くことを自分の仕事の一部にしている人が相当意識して書いていると想像される点で,ちょっと違うのでは思ったわけです.
「来れる」はともかく「見れる」や「食べれる」も書き言葉にも現れているのですね.
Subject: [lex] RE: [lex] RE: [lex] 分割不定 {01}詞
Date: Mon, 23 Nov 1998 19:32:25 +0900
村田 年(千葉大)です.
この Split infinitive ですが,私は高校生に教えて,使ってもよいとした方がいいと思います.
普段は気にしないのですが,近藤先生と杉本先生のやり取りがあって,頭に残っていたせいかここ2,3日でいくつかの例と辞書で出会いました.書き留めておかなかったので,今見返して2つほど見つけ,示します.辞書の中にたくさん出ているようです.
perhaps: Perhaps you'd like to join us. (<spoken> used to politely ask or suggest something) --COBUILD2
kindly 2: If someone asks you to kindly do something, they are asking you in a way which shows that they have authority over you, or that they are angry with you; formal use. COBUILD2
LDOCE3とCOBUILD2は Some people think it is incorrect to use split infinitives. と書いていますが,むしろ OALD5 にならって considered by some people to be bad style と教えて bad style と思わない人もいる,と教えたいですね.
Subject: [lex] RE:[lex] 分割不定詞 {03} {01}
Date: Tue, 24 Nov 1998 16:53:02 +0900
加藤先生、村田先生へ
近藤@四国、です。応答ありがとうございました。
◆加藤先生 wrote:
>この問題は「見れる,食べれる」などのいわゆる「ら抜きこと
>ば」と似ているところがあります.テレビを視聴していると,
>「見られる,食べられる」より「見れる,食べれる」のほうが
>圧倒的に多いような印象を受けますが,これが正統的な用法
>ではないとする人もかなりいます.
◆村田先生 wrote:
>この Split Infinitive
は「見れる」「食べれる」とは少し違って,
>LDOCE3 や COBUILD2 や OALD5 といった普通の辞書や
>新聞や雑誌の地の文に出てくるものです.
>これに対する対処は少し変える必要があるのではないでしょうか.
●加藤先生の「ら抜きことば」と似ている、というご意見には村田先生と同様に違和感を覚えます。
「ら抜きことば」にはそうなる表現上の必然性がないと思いますが。単に言い方がルーズになっただけと思います。そうなる、心理的必然性のようなものがあったのかもしれませんが、少なくとも文作成上の必然性はないのではないでしょうか。分離不定詞の方は、前回の投稿でも申し上げましたように、目的語が長い場合に意味の曖昧さを生じさせないようにし且つ動詞と距離を置かずに副詞を置くとしたら<to>と動詞の間に置かざるを得なくなるのではないか、という点で必然性があると思います。
こういう観点から、「ら抜きことば」と一緒には扱いたくないと思うのです。
●私のように英語を本格的に勉強し始めた頃に、「<to>と動詞の間に副詞を入れてはならない。」と教わると、それがいつまでも頭の中にinputされたままです。いまだに、目的語が短い場合には抵抗があります。自分では決して使いません。しかし、何度も申し上げますが、目的語が長い場合は分離不定詞にするのが、一番簡単な解決策ではないかと思います。ですから、そういう場合は私自身も使います。
ですが、どこかでこの用法は本当はあまり褒められたものではないのだ、という意識が働きます。誰かがこの言わば「呪縛」のようなものから解き放してくれないかな、と願う訳です。ですから、文法書や辞書でもっと積極的に扱ってくれても良いのではないかという印象を持って入るのです。
文法学者の方たちの中の見解のようなものが、もう少し肯定的ですと学生に教える際に躊躇しないで実際に使われて入るこの用法を教えることができます。「こういう場合には賛成しない人もいるが、こういう場合には問題ないのだ。」とバランスを保って具体的に説明することができます。
我々は、最初に習ったことをいつまでも引きずる傾向があるので、最初からバランスのとれた教え方をした方が良いと思っています。しかし、現場のものとしましては、裏づけがないと自分の判断・自由裁量だけでは思い切ったことはできにくいものです。そして一般的には、そういう裏付けを文法書や辞書に頼るしかないわけです。
そういう背景もあり、分離不定詞に対して学者の方の全体的な見方は昔と同じなのだろうかと考え、私の最初の投稿になりました。
●私は学者ではありませんので、難しいことは分かりません。私の見解に不適な点がございましたら、遠慮なくご指摘下さい。
以上です。失礼致しました。ご意見ありがとうございました。今後ともご教示下さい。
★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★♪
Yukihiro Kondoh
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Subject: [lex] RE:[lex] {01}分割不定詞 {03} {01}
Date: Tue, 24 Nov 1998 17:36:12 +0900
はまだ@アルクと申します。
素人が口を挟むのもおこがましいのですが……
日本語の「ら抜きことば」と英語の split infinitive とを比べることの当否は、私ごときには判断できませんが、「ら抜きことば」には、それなりの必然性はあるのではないでしょうか。「……られる」には、可能、受け身、尊敬と3通りもの用法があります。これがいささか紛らわしいので、可能は「……れる」にするという新しいルールが誕生しつつある、と考えることは十分に可能と思われますが……受け身、尊敬の意味で「ら抜きことば」が使われている例はないと思います。
昔、哲学の入門書を読んでいたとき、天皇に関連する話が出てきました。著者が古風な方で、天皇に関して述べるときは必ず尊敬の「られる」を用いていました。その上、難解な概念を述べているために可能、受け身の「られる」も頻発し、読むのに往生した経験があります。
素人が横から口を挟みまして、失礼いたしました。
=================================
HAMADA Keita of ALC PRESS INC.
http://www.alc.co.jp/e-kikaku
=================================
Subject: [lex] RE: [lex] RE:[lex] 分割不定詞 {03} { {01}01}
Date: Tue, 24 Nov 1998 22:12:30 +0900
日本人英語教師として、近藤さんの悩みはよくわかります。
>誰かがこの言わば「呪縛」のようなものから解き放してくれないかな、
>と願う訳です。ですから、文法書や辞書でもっと積極的に扱ってくれて
>も良いのではないかという印象を持っているのです。
>文法学者の方たちの中の見解のようなものが、もう少し肯定的ですと学生に教
>える際に躊躇しないで実際に使われて入るこの用法を教えることができます。
>「こういう場合には賛成しない人もいるが、こういう場合には問題ないの
>だ。」とバランスを保って具体的に説明することができます。
他のご回答と重複しますが、いわゆる語法書は "積極的に" 扱っています。しかも、ほぼ肯定的です。条件はただ、副詞がどの動詞を修飾するのかを明確にしたいときに、Split Infinitive になる場合は Split Infinitive を使う、だけでしょう。
>我々は、最初に習ったことをいつまでも引きずる傾向があるので、最初からバ
>ランスのとれた教え方をした方が良いと思っています。しかし、現場のものと
>しましては、裏づけがないと自分の判断・自由裁量だけでは思い切ったことは
>できにくいものです。そして一般的には、そういう裏付けを文法書や辞書に頼
>るしかないわけです。
私も自分に英語の語感がまったくないため、「文法書や辞書」に100% たよります。
OED の編集部が『オックスフォードが答える英語の『?』」(原題 『Questions of English』. OUP, 1994)は教室での根拠にしていいでしょう。その pp.78-79 に「私たちとしては、分離不定詞をあまり意識して心配することはやめなさいと言いたいところです。英語で言えば、We recommend you to consciously stop worrying about split infinitives. となりますが、…」と、この文の副詞 consciously の位置を変えた場合の意味を考えさせています。
さらに他を見渡せば、"The split infinitive, as several commentators remark, seems never to have been common in the speech of the less educated. Its use is pretty much confined to users of standard English and to literary contexts." とは Merriam Webster 社の 『Webster's Dictionary of English Usage』 の言です
西村 公正(関西外国語大学短期大学部)
Subject: [lex] ら抜きことば {01}
Date: Tue, 24 Nov 1998 22:49:04 +0900
近藤先生,浜田様
村田 年(千葉大)です.
(近藤先生)
「ら抜きことば」にはそうなる表現上の必然性がないと思いますが。単に言い方がルーズになっただけと思います。そうなる、心理的必然性のようなものがあったのかもしれませんが、少なくとも文作成上の必然性はないのではないでしょうか。
はまだ@アルクと申します。
「ら抜きことば」には、それなりの必然性はあるのではないでしょうか。「……られる」には、可能、受け身、尊敬と3通りもの用法があります。これがいささか紛らわしいので、可能は「……れる」にするという新しいルールが誕生しつつある、と考えることは十分に可能と思われますが……受け身、尊敬の意味で「ら抜きことば」が使われている例はないと思います。
(村田)「ら抜きことば」には十分必然性があると思います.
また,大ざっぱなうろ覚えを言うわけですが,大野 晋先生が
どこかで日本語の歴史で「見られる」を「見れる」といった,
そのような動詞の活用が定着していたかなり長い時代があるの
で,「見れる」というのは日本語しては自然な形だ,とおっしゃ
っていたことを記憶しています.だれかご存知の方,教えて下さい.
浜田説もおもしろいですね.まぎらわしい,が理由かどうかは
私にはわかりませんが.
Subject: [lex] RE: [lex] ら抜きことば {01} {01}
Date: Wed, 25 Nov 1998 00:03:00 +0900
村田先生
今は朝日文芸文庫にしかありませんが、(朝日新聞社)『大野普の日本語相談』の
25, 29ページです。大野説に丸谷才一が異論をとなえたので、『丸谷才一の日本語相談』の
p.24 をも見なければなりません。
この文庫版の元版は『日本語相談』(一)〜(四
?) だったと思います。その元は『週刊朝日』の連載で、井上ひさしの3氏が交代に回答をしていました。
西村 公正
Subject: [lex] RE: [lex] ら抜きことば {01}{01}{01}
Date: Wed, 25 Nov 1998 17:40:38 +0900
村田 年です.
西村先生,ありがとうございました.
Subject: [lex] RE: [lex] RE: [lex] RE:[lex] 分 {01}割不定詞 {03} { {01}01}
Date: Wed, 25 Nov 1998 01:01:17 +0900
近藤@四国、です。
分離不定詞に関連したみなさまの応答にお礼を申し上げます。貴重なお時間を割いていただきまして本当に感謝致しております。
●西村先生 wrote:
> OED
の編集部が『オックスフォードが答える英語の『?』」(原題
『Questions of English』. OUP, 1994)は教室での根拠にしていいでしょう。その
pp.78-79 に「私たちとしては、分離不定詞をあまり意識して心配することはやめなさいと言いたいところです。
●ご意見と情報ありがとうございました。今週木曜日に県庁所在地までこのMLででてきましたいくつかの本を求めて出かけて行く予定です。その折に、上記語法書(?)も探して参ります。しかし、今までの経験からくる私の予想では、ほとんどの書籍は手に入らないと思います。
中身を見ないでこちらも買う訳にもいかず、欲しいものが欲しい時に手に入りません。それ程田舎に住んでおります。県庁所在地といえども私が欲しい専門書はほとんどおいていないのが実状です。
★みなさま、いろいろとご教示ありがとうございました。分離不定詞に関しましては指導の方向性が見えました。大いに助かりました。
★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★♪
Yukihiro Kondoh
♪★*☆*★*☆*★*☆*★*☆*★
Subject: [lex] RE: [lex] RE: [lex] RE:[lex] {01}分 {01}割不定詞 {03} { {01}01}
Date: Wed, 25 Nov 1998 09:13:07 +0900
シャープ・森口と申します。
久しぶりの書き込みです。
>分離不定詞に関連したみなさまの応答にお礼を申し上げます。
>貴重なお時間を割いていただきまして本当に感謝致しております。
分離不定詞については、ほとんど話が終わりそうですが、昨日自宅で調べる時間が取れました、せっかくですので、分離不定詞も場合によっては問題がないとしている書物について御報告させて頂きます。
まず、私の専門であるテクニカルコミュニケーション(情報を如何にしてわかりやすく伝えるかについての研究と実践)の概説書を見ました(Fern Rook "Remembering the Details - Matters of Grammar and Style" In <Techniques for Technical Communicators> Ed. by Carol M. Barnum & Saul Carliner. Macmillan 1993)。
Although no rule of grammar states that you cannot split infinitives, some people object very strenuously. My own observation is that there is little difficulty in placing adverbs outside intransitive infinitives...
(中略)
When the infinitive is transtive, however, we may sometimes wish to split it... (p278)
とあり、同じ章の少し後でも例を挙げて、若干具体的に書いています。
if your modifier will not fit at the end of the sentence, you had probably better split the infinitive.(p288)(用例省略)
また、米国のライターにとってバイブルともいえる Chicago Manual of Style 14th (1993)には、以下のようなコメントがあります。
The thirteenth edition of this manual included split infinitives among the examples of "errors and infelicities" but tempered the inclusion by adding, in parentheses, that they are "debatable 'error.'" The item has been dropped from the fourteenth edition because the Press now regards the intelligent and discriminating use of the construction as a legitimate form of expression and nothing writers or editors need feel uneasy about. Indeed, it seems to us that in many cases clarity and naturalness of expression are best served by a judicious splitting of infinitives. (p76 footnote)
この13版は1982年に出版されているので、「なるほど最近の傾向なんだな」と考えました。逆に昔の文法書ではどのように禁止されているのか調べてみようと思い、<Descriptive English Grammar> 2nd. Homer C. House and Susan E. Harman. Prentice-Hall (1950)を見ると、意外なことに以下のような記述がありました。
....there may be times when it is better to split the phrase, especially if obscurity results from not splitting it. Many of our best writers do split their infinitives, and schooled grammarians justify the construction when it prevents awkwardness or ambiguity. <I failed to fully understand> is as graceful and clear as <I failed to understand fully>. (p340)
半世紀に渡って split infinitive は、語法の中で微妙な立場に置かれていたのか、という感を持った次第です。
--
Minoru Moriguchi
Technical Communicator
Personal Computer Division
SHARP Corporation
Subject: [lex] 分離不定詞と「ら抜き言葉」 {01}
Date: Wed, 25 Nov 1998 17:50:17 -0000
東海林@バーミンガムです。
ちょっとタイミングを逃してしまった感もありますが、分離不定詞と「ら抜き言葉」の問題について私見を述べさせていただきたいと思います。
両者がそれぞれの言語で'disputed usage'に属する点は共通しています。ネイティブスピーカーの中でも「記述的」、あるいはそれに近い立場に立つ人は容認する傾向がある点も似ていると思います。問題を「教える」ことに転じると、少々事情が変わってくると思います。
日本人が「食べれる」・「見れる」を使うのを許容する日本人であっても、外国人が「ら抜き言葉」を使っていると違和感を感じる人は多いのではないでしょうか?(私もその一人ですが…)同じように、英語母語話者が使う分離不定詞と、非母語話者が使う分離不定詞とでは、受け取られ方が違うのではないかと予想するわけです。私としては、日本語学習者に「ら抜き言葉」を「使う」ことを教えるのに反対するのと同じ理由で、英語学習者に分離不定詞を「使う」ことを教えるのには反対します。
分離不定詞は現実に母語話者によって「使われた」実例を「受信」のために必要な情報として学習者に提示し、それが'disputed usage'であることを教え、外国人が使うと特に問題とされる可能性があるということを、日本語の「ら抜き言葉」などを補足説明に使って説明したらいいのではないでしょうか?
分離不定詞を使わなくとも別の手段で同じことが表現できる場合がほとんどではないかと思います。
Hiroshi Shoji
<University of Birmingham, UK>
<Shion Junior College, Japan>
Subject: [lex] 分離不定詞と「ら抜き言葉」 {01}{01}
Date: Thu, 26 Nov 1998 08:02:14 +0900
東海林先生:
加藤@岩手医大です.
まったく同感です.非常勤で北米の大学生に15年ほど外国語としての日本語を教えた経験がありますが,授業中にこちらが質問して「わかんない」などという返事が返ってきてぎょっとしたものでした.訂正すると,ホームステイ先の家でも使っていたよなどというのが常でした.
そういうこともあって,英語でものを書く時には idioms や slang はできるだけ隠すように,目立たないように努めています.
Subject: [lex] 分離不定詞と「ら抜き言葉」 {01}{01}{01}
Date: Fri, 27 Nov 1998 10:11:23 +0900
加藤@岩手医大です.
Split Infinitive について次のような文章を見かけました.この間大統領の弾劾問題を審議する米国下院法務委員会(the House Judiciary Committee)の証人として証言した,特別検察官 Ken Starr の英語について Mary McGrory というコラムニストが次のようにコメントしています:
His [Ken Starr's] style is right out of a legal brief, a marvel of long, looping sentences that came to rest always with all loose ends tucked in, no dangling participles or split infinitives.
(The Washington Post, Sunday, November 22, 1998; C01)
Ken Starr の英語は,長い,従属文を多用した文でありながら,係り結びがきちんとしていることを評価しているわけですが,いわゆる懸垂分詞と分離不定詞をしまりのない英語の代表として出しているのが面白いと思いました.
Subject: [lex] 分離不定詞と「ら抜 {01}き言葉」 {01}{01}{01}
Date: Mon, 30 Nov 1998 14:36:10 +0900
村田 年です.
分離不定詞がしまりのない英語の代表との指摘のよい実例をいただき,なるほどと認識を新たにし,勉強になりました.
しかし,LDOCE3,COBUILD2,OALD5などが説明文の中でこれを多用しているのはどう解釈したらいいのでしょうか.COD など一般の辞典はどうなっているのか,時間があったら見てみたいですね.
Subject: [lex] 分離不定詞と「ら抜 {01} {01}き言葉」 {01}{01}{01}
Date: Mon, 30 Nov 1998 16:07:23 +0900
村田先生:
英語辞書研究会ワークショップ事務局のお仕事お疲れ様でした.
この問題について私個人は NODE の USAGE NOTE の記述が妥当なものと思っております.私が前回引用した Mary McGrory のような人たちは, NODE のいう'some traditionalists [who] hold up the split infinitive as an error'の範疇に入るのだと思います.この種の問題は多数決で決めるわけには行かないので,彼女のような 'traditionalists’の声が無視できるほど小さくなるのを待つしかしかたがないのではないでしょうか.母国語話者 (Native Speaker) もそう言ったり書いたりていると抗弁しても,外国人学習者は真似すべきではないと逆に怒られることもあるような気がします.
日本語でも同じではないかと思いますが,母語に対する所有者意識には意外に根深いものがあります.「外国語としての」英語を教えていると自己紹介する時,うっかり「外国語としての」の部分を言わなかったりして,「お前が?」というような表情をされたことが何度かあります.
Subject: [lex] 分割不定詞 {01}
Date: Tue, 15 Dec 1998 23:19:54 +0000
埼玉の杉本です。
小西友七著『英語への旅路ー文法・語法から辞書へ』(大修館書店、1997年)を拾い読みしていましたら、分離不定詞について書かれている箇所があるのに気がつきました (pp. 263-266)。
最初の部分を引用しますと、
文法的な是非について split infinitive ほど長い論争の歴史をもっている語法はない (cf. <The Oxford Companion to the English Language>(1992: 1077-78)。いまだにナイフでエンドウ(豆)を食べるようだと毛嫌いする人が後を絶たないようだ。 'Listening to the 8 o'clock news on the wireless this morning, I was appalled to hear that two infinitives had been split within three minutes of each other.' とBBC に投書があったそうである。しかし、これは、これまで述べられてきたように、意味を明確にするためだけではない。コーパスで見ても自然な必然的な現象である。これを証明したのが the Bank of Englishで、<Wordwatch>ではようなことが明らかにされている。(この調査をした人も生徒の時に教室ではsplit infinitiveは誤りだと教え込まれたと述懐している)。まず、このsplit infinitiveの13,000以上の用例で(この数の多さにも驚く)一番多く用いられた副詞を10位までつぎのようにあげている。
1) really 2) just 3) actually 4) not 5) further
6) fully 7) ever 8) finally 9) completely 10) ever
これらの副詞を見ると、すべて動詞を強調している語である。
そして「副詞と動詞が緊密な連語関係を構成しているから split infinitive 構文を取る必然性」を、また近藤先生が書かれていた「他動詞の目的語が長い場合」も例をあげて説明されています。更に、swearword が使われる場合等へも及び、
split infinitiveについては, CGEL (pp. 496-98)の解説を一応これまでの標準的なものとするならば、この the Bank of English の corpus を背景としたこの<Wordwatch>の解説の方が、事例に基づいた、simple ではあるがはるかに説得力のあるものと思われる。
と書かれています。(引用の部分で、イタリックの箇所を< >で囲みました)
分離不定詞が「長い論争の歴史をもっている」とも、appall という強い言葉を使って嫌悪感を示す人がいるなどとは勿論知りませんでした。このMLでも賛否両論がありましたが、これを読むと外国語として使ったり教えるのも許されるのではないか、副詞や目的語の長さによっては必要でさえないか、という気がしました。
Subject: [lex] 分割不定詞 {02}
Date: Wed, 16 Dec 1998 00:32:47 +0900
了解です。
Kazuhiro Sugimoto wrote:
> 埼玉の杉本です。
>
>
小西友七著『英語への旅路ー文法・語法から辞書へ』(大修館書店、
>
1997年)を拾い読みしていましたら、分離不定詞について書かれて
> いる箇所があるのに気がつきました (pp.
263-266)。
Subject: [lex] RE: [lex] 分割不定詞 {01} {01}
Date: Wed, 16 Dec 1998 01:36:43 +0900
杉本先生
近藤@四国、です。下記情報提供ありがとうございました。
杉本先生 wrote:
> 小西友七著『英語への旅路ー文法・語法から辞書へ』(大修館書店、
>1997年)を拾い読みしていましたら、分離不定詞について書かれて
>いる箇所があるのに気がつきました (pp.
263-266)。
***** 中略 **************
> まず、このsplit infinitiveの13,000以上の用例で(この数の多さにも
>
驚く)一番多く用いられた副詞を10位までつぎのようにあげている。
>
> 1) really 2) just 3) actually 4) not 5) further
> 6) fully 7) ever 8) finally 9) completely 10)
ever
●個人的な経験で申しますと、この中では<completely><really><fully>が記憶に残っています。
> そして「副詞と動詞が緊密な連語関係を構成しているから
split infinitive
>構文を取る必然性」を、また近藤先生が書かれていた「他動詞の目的語が
>長い場合」も例をあげて説明されています。
●大変参考になりました。ぜひ読んで見たい本です。ご紹介ありがとうございました。この件に関しては、機会があるごとに環境の違うネイティブの人に意見を求めたいと思っています。その一部の報告です。
◆このMLでのこの質問に私なりに区切りをつけた後、The New York Times の関係者とあることでメールのやり取りをしていました。その相手は記者ではないのですが、用件が片付いたときについでに<split infinitive>について意見を求めて見ました。後日、社内の友人の記者に聞いて見たその結果を教えてもらいました。その人物の詳しい背景は分かりません。あくまでも話のついでに尋ねたものですから。
その記者の意見では、「新聞の記事では多用される傾向にある。その理由は意味の誤解を避けるためだ。」という内容でした。短い内容でしたので、詳しいことは分かりませんが、外国人が<split infinitive>を使って<essay>を書いたら抵抗を感じるかという私の質問に、「そういう意味で抵抗を感じるアメリカ人は少ないのではないか」と簡単に書かれていました。
この後、日本の英字新聞記者が書いた本の中に<split infinitive>について触れているのを見つけました。上記と同じような意見でした。このことは、<split infinitive>が目につくようになったのが私がインターネットの世界に入ってからのことだという気がしていますので、それと符合するように思います。<essay>と比較すると、時事英語の方で多く使われているかも知れません。
◆つい、数日前に出会った分離(割)不定詞の例です。
We must teach our children how to better protect the global environment.
この英文を見て感じたのは、これが<how to protect the global environment better>だと、なんだか間が抜けた感じがするということです。私には、<better protect>がまるで一つの動詞のように感じられました。語感、音の響きという点においてです。目的語が特別長いわけでもないのですが、<better protect>の方が力強く感じられ、自然な感じがします。ネイティブの人たちは、これに対してどういう印象を持つのでしょうか。
長くなりました。失礼致しました。
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Yukihiro Kondoh
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Subject: [lex] RE: [lex] 分割不定詞 {01} {01} {01}
Date: Tue, 15 Dec 98 13:04:49 -0800
近藤先生はじめまして。
>◆つい、数日前に出会った分離(割)不定詞の例です。
>We must teach our children how to better protect the global
environment.
確かに語感的に、'better protect'がまるで一つの動詞のように感じられるということはあると思いますが、'how to protect the global environment better'と、'better'を後置しない最大の理由は、語感というよりは、むしろ正に「意味上の誤解を避けるため」だと思われます。後置をすると、'teach... better'なのか、'protect... better'なのか曖昧になるからです。実際'how to protect the global environment better'としても「間が抜けた感じがする」ということはないはずです。文の最終ポジションというのは副詞にとってはかなり「居心地」がいい場所なわけで、事実'better'という語で文が終わるのは、よくあるパターンで、そのこと自体に何ら問題はないのです。
Subject: [lex] RE: [lex] RE: [lex] 分割不定詞 { {01}01} {01} {01}
Date: Wed, 16 Dec 1998 09:36:13 +0900
Lexicon 様
>近藤先生はじめまして。
●近藤です。はじめまして、よろしくお願い致します。
Lexicon-san wrote:
>better'と、'better'を後置しない最大の理由は、語感というよりは、むしろ
>正に「意味上の誤解を避けるため」だと思われます。後置をすると、'teach...
>better'なのか、'protect... better'なのか曖昧になるからです。実際'how
to
>protect the global environment better'としても「間が抜けた感じがす
>る」ということはないはずです。文の最終ポジションというのは副詞にとっ
>てはかなり「居心地」がいい場所なわけで、事実'better'という語で文が終
>わるのは、よくあるパターンで、そのこと自体に何ら問題はないのです。
●最初にこの問題を投稿したときは、語感的なことは問題にせず「理屈」の部分で分(割)離不定詞を使う必然性があるのではないかと申し上げました。
今回、上記例を投稿しましたのは、もしかしたら「理屈」だけの理由ではなく「音」の要素もあるのかもしれないと思いついたからです。今までは、Lexicon様の主張のように理屈だけでしか考えたことがありませんでした。語感的な違いがあるのかないのか、そのことがふと気になりご紹介させて頂いた次第です。
私には、ネイティブのような語感はありませんが、もし上記の英文をスピーチで使用するなら、私なら<how to better protect ....>を選びます。
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Yukihiro Kondoh
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Subject: [lex] 分割不定詞 {02}
Date: Wed, 16 Dec 1998 12:08:23 +0900
分離不定詞について
村田 年(千葉大)です.
今回杉本先生からの書き込みと皆さんのご意見を読み,ちょっと前の加藤先生から教えていただいたことと合わせ,母語というのはやっかいなものだと思いました.少し英語を勉強しているだけの私などは何のしがらみもなく,意味がわかりやすい方がいいじゃないと思ってしまいます.身についてない証拠ですね.
ちなみに私は「出現頻度数信奉派」です.
Subject: [lex] RE: [lex] RE: [lex] 分割不定詞 { {01}01} {01} {01} {01}
Date: Tue, 15 Dec 98 19:15:03 -0800
近藤先生:
>もし上記の英文をスピーチで使用するなら、
>私なら<how to better protect ....>を選びます。
おっしゃる通りですね。この位置から'better'を少しでも動かしてしまうと、文章としての意味が変ってしまいますから。ただ、スピーチで使うということであれば、分(割)離不定詞を回避する方法が無いわけではありません。
We must teach our children how........... to protect the global environment better.
のように、'how'と'to'の間に1〜2秒のポーズを置けばよろしいのです。尤も、ここまで執拗に 分(割)離不定詞を避ける人はまずいませんけど。(活字になる時のことも想定しなければなりませんし。)
Subject: [lex] 分離不定詞と「ら抜き言葉」 {01}{01}{01}{01}
Date: Thu, 24 Dec 1998 14:57:43 +0900
加藤@岩手医大です.
11月27日に「分離不定詞」と「懸垂分詞」をタブー視する,次の文章をこの欄に紹介しました:
> Split Infinitive
について次のような文章を見かけました.この間大統領の
> 弾劾問題を審議する米国下院法務委員会(the
House Judiciary Committee)
> の証人として証言した,特別検察官 Ken Starr
の英語について Mary McGrory
>
というコラムニストが次のようにコメントしています:
>
> His [Ken Starr's] style is right out of a legal brief, a
marvel of
> long, looping sentences that came to rest always with all
loose ends
> tucked in, no dangling participles or split infinitives.
> (The Washington Post, Sunday, November 22, 1998; C01)
>
> Ken Starr
の英語は,長い,従属文を多用した文でありながら,係り結びがき
>
ちんとしていることを評価しているわけですが,いわゆる懸垂分詞と分離不定
>
詞をしまりのない英語の代表として出しているのが面白いと思いました.
昨日,次のような文章を見かけて,ひょっとするとこれは cliche の一種かもしれないと思った次第です.これは60年代のオーストラリアの話です:
He particularly admired the writing of Ross Cambell, a columnist who never split an infinitive or dangled a participle.
----Geraldine Brooks, Foreign Correspondence: A Pen Pal's Journey from Down Under to All Over (Anchor Books, Doubleday, 1998) [ISBN 0-385-48269-8], p. 32
文中 "He" というのは作者の父親です.作者自身は分離不定詞を使っています.
Subject: [lex] 分離不定詞と「ら抜 {01}き言葉」 {01}{01}{01}{01}
Date: Sat, 26 Dec 1998 12:04:04 +0900
村田 年(千葉大)です.たいへん興味深く,英語のおもしろさと難しさを思います.先生の読書量には驚いております.
ありがとうございました.