try to と try 〜ing

Date: Sat, 11 Apr 1998 From: "Matumoto Yosihito"

佐賀の松本@MCSです。

辞書の用例には、try to には現在時制が、try 〜ing には過去時制が用いてありますが、(try 〜ing は現在時制でも使えることは承知しております)その理由として、

1)to不定詞はその時点で(現在時制ならば現時点で)まだ行われていないニュアンスがあるので、現在時制に用いて「とりあえずやってみる、試しにやってみる」といった用法が多くなる。

2)〜ing はその時点で(現在形ならば現在)行っている、またはその状態にあるニュアンスがあるので、過去時制に用いて「とりあえずやっていた、試しにやっていた」といった用法が多くなる。

と授業で説明しているのですが、おかしな点がありましたら是非ご教授いただきたいと思い、投稿しております。お詳しい先生がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。


[lex] try to と try 〜ing

Date: Mon, 13 Apr 1998 From: kazuo kato

松本先生:
加藤@岩手医大です.

古いことになりますが,「英語教育」の投書欄に昔この問題について投書したことがあります
(「Try to inf と try 〜ing―「定説」と現実の間―」「英語教育」1982年8月号,pp.80-81).

動機は当時米国の大学生に日本語を教えていて「〜てみる」の意味はtry 〜ing だと教えても,かれらが「飲もうとした」という日本語が期待されところに「飲んでみた」と書くことがあることでした.

たまたまそのころ

Haegeman, L. (1980), "TRY and the English catenatives," Linguistics 18: 1095-1097

という論文を読むと,彼女は try 〜ing には attempt to inf の読みが認められることがあるとして

Have you tried finding out from them? Have you written any letters to find out?

というような例をあげておりました.

しかし,try to と try ing は完全に互換可能というわけではなく,次のような例(これは私が見た例ですが)では try to を try ing に置き換えるわけにはいきません.

I tried to kill it but it got away. (Roald Dahl, The Twits)

この問題については今も「try to と try ing の区別を remember to inf と remember -ing や stop to inf と stop -ing と同じように重視するのは考えものである.」「try to と try ing の差は「しようとする」と「してみる」の差ほどには大きくなく,両者の差は begin/start to inf と begin/start -ing との差に近く,この場合 try to と try ing は一応互換可能としておく方が,後になって unlearn する必要がないだけに好ましいのではあるまいか.」と考えております.しかし,この立場には異論があるかもしれません.

(加藤 和男)


[lex] try to と try 〜ing

Date: Tue, 14 Apr 1998 From: "Matumoto Yosihito"

加藤先生、レスありがとうございます。佐賀の松本@MCSです。

私自身は、try を「本格的に取り組む前の試しの行為」として考えてきました。「とりあえず」とか「一応、試しに」と考えていたのです。加藤先生から示していただいた例文で、さほどずれていなかったのかな、と感じています。

>この問題については今も「try to と try ing の区別を remember to
>inf と remember -ing や stop to inf と stop -ing と同じように
>重視するのは考えものである.」「try to と try ing の差は「しよ
>うとする」と「してみる」の差ほどには大きくな(く,)両者の差は
>begin/start to inf と begin/start -ing との差に近く,この場合
>try to と try ing は一応互換可能としておく方が,後になって
>unlearn する必要がないだけに好ましいのではあるまいか.」と考えて
>おります.

つまり、try は try to と try ing の区別、つまり try する行動が行なわれているかいないかよりも、try せざるを得なくなった状況とか、try した後の本格的な取り組みとかの方に考えを馳せている、ということになるのでしょうか。